嵐に踊る 嵐が来る。嵐が来る。
朝から畑の保護に駆け回り、まだ太陽の照りつけている昼には雨戸を用意し本丸中の窓を外側から塞いだ。夕方には早い夕餉を済ませ、風の強まる中を槍と薙刀を中心に回廊と縁側に用意した雨戸を立てた。
短刀たちは停電に備えて灯りを各自の部屋と動線へ配置し、厨当番は夕餉の片付けを終え炊き出しの最中だ。山盛りになるだろう握り飯は、何の不具合もなく朝を迎えたならそのまま朝餉となるはずだ。
「大事になっちまったなあ」
太刀以上の大きさの刀種にはそれぞれ短刀が侍るという話だったが近くの部屋には三条の今剣がいるからと断り、まだばたばたと忙しい中一足先に風呂を済ませた鶴丸はやれやれと胡座を掻いた。空調は利いているため雨戸を閉め切った部屋でも暑いということはないが、停電となれば酷い熱帯夜となるだろう。部屋の障子は開け放しているが、いつもなら庭を望める回廊は今は愛想のない木の板で覆われている。
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