拳で殴ればどんな事でものりきれる今回の主人公(ざっくり)
九条夏樹(♂)
(くじょうなつき)
呼び方(夢主⇔相手)
花垣武道:タケ⇔なつ
橘日向:ひなちゃん⇔なつくん
千堂敦:アツ⇔夏樹
山岸一司:カズ⇔夏樹
鈴木マコト:マコ⇔夏樹
山本タクヤ:たっくん⇔なっつん
東リべをこよなく愛したトリッパー。
タケミチが地獄の中を突っ走る度に泣き、ひなちゃんが死ぬ度に血涙を流した男。
重度の東リべオタクで転生したと知った瞬間、タケミチの幸せのために体力育成していたら、逆行してきたタケミチとばったり会い意気投合。小学、中学と喧嘩にあけくれながら力をつけていく。中学1年時では既に知らない者はいないくらいその界隈では有名になっており、いつも青と黒の色が入った服を着ていること、沸点が高いこと、無表情で喧嘩することから、着いたあだ名が「深海の弾丸」
毎度この2つ名聞く度にだせぇなって思ってるけど、言わないし言えない。だって2つ名ってあったらカッケーじゃん!っていう心がある。
☆☆☆
この本を買った時、地獄だと思った。
自分の好いた女が抗争に巻き込まれ死ぬ。そしてそれを止めようと奮闘するも、それを嘲笑うかのように彼女は死んでしまう。泣いた。昨日目の前で肉まん売り切れた時に、この世の全てが地獄だと甘っちょろいことを言った自分を殴りたい。
しかも女も男を好いていた。別れても、ずっと。俺がお前ら以上の地獄を体験する日が来るのだろうか。なんて滅多に感情移入しない自分がここまで心を乱したのにはわけがある。
目つきが悪いせいでいつも喧嘩を売られ、買っての繰り返し。いつも親に怒られながらも生活していた自分が、少し肌寒さも出てきた秋の終わりごろに、食べたかった肉まんを目の前で買われ、泣きながらレジ横に積まれた本を買ったのが原因だ。
家に帰ってから直ぐに不貞腐れ、肉まんを思って枕を濡らした次の日の朝、そういえば買った本読んでねぇなって思って読んだのが運の尽き。あの時レジ横に置いてあったのが1巻だったから続きでてねぇのかなって思ったらまさかのアニメ化もしているし映画化もしていた。ふざけんな学校サボって映画行くわ!!!なんて行って映画行って泣いて売り切れてしまった最新刊以外の全巻を購入して泣いた。
全員幸せになれないなんて地獄だ。
とりあえず最新刊買ってこよ。なんて心身ともに疲れた状態でも続きを読みたくて外に出て本屋に向かった俺を、猛スピードで突っ込んで跳ね飛ばしたプ○ウス、テメーは一生許さねぇ。
こうして俺の人生は終わった。
………なんて思うじゃん?そしたらさ、なんとちげーんだよなぁ!!!何故か転生した。しかも不良溢れる世界に!!これは俺勝ちましたわァ!絶対あの二人を幸せにして、ついでに彼らも幸せにする!!待ってろ!花垣武道!!橘日向!!
「あうあ〜!!!」
そう意気込んだ赤ん坊(俺)の拳はめちゃくちゃ頼りなかった。ドちくしょうが!!!
☆☆☆
まぁ、ね、俺の幼少期の話をしてもつまらんので一気に時間を飛ばそう。そう!この物語の主人公!花垣武道となんと通学路が一緒という奇跡のような体験をしている!!しかも同級生!やっば…。ど、どうしよ、小学生の癖にめちゃくちゃかっけぇんだけど。えっ、何主人公オーラ??やば。全世界の不良ども、その耳かっぽじってよく聞け。この世は花垣武道のためにあります。お疲れ様でしたァ!!!!!
「…なぁ」
「ウェイ!!」
脳内カーニバル起こしてたら声かけられた!推しに!!声!!かけられた!!!えっ、まって死ぬ…死んじゃう…。認知が1番のファンサ…しぬ…
「俺、花垣武道」
「(知ってます!推しです!)…九条夏樹」
「なぁ、俺が未来を知ってるって言ったら、どうする?」
「えっ、逆行????」
「え!?」
この会話の後、実はこの武道がひなちゃんと一緒に車に乗っていて死んだ未来の武道だと聞いて俺は泣いた。干からびるぐらい泣いた。
「この世はァ…地獄ですゥ…!!!」
「すげぇダミ声」
うるせぇッ!!!なんて泣きながら反発。漫画ではそれを回避していたけれど、それもそうだ。あれはひとつの世界の話で、もしかしたらの世界だ。分岐なんていくらでもある。と、言うことはだ。この世界で武道が不良の頂点に君臨していてもおかしくないってことじゃん。なんだよ、簡単じゃねぇか!
「俺、九条夏樹。なぁ、タケって呼んでいい?」
「んじゃ、俺はなつって呼ぶ」
「俺と、お前で不良の頂点にたとう。お前はひなちゃんと幸せになってくれたら俺はいいからッ!!」
「俺さ、誘いたいヤツらがいるんだ」
そう言って放課後。他所の小学校からも連れてきた計6人で、俺らは決意する。
不良の頂点になることを。
「にしてもよく見つけたね」
「んー、まぁ中学から知り合ったらどこの小学校から来たかとか話すじゃん」
記憶力いいな、なんて思いながら、マコトも一緒に帰路に着く。毎日放課後、門限ギリギリまで体力育成をする事だったり、地元の不良どもに喧嘩を売ったり。そんな日々を過ごしていれば、まぁ俺らのことは直ぐに広まり、不良狩りから始まったこのチームも、最近では個人個人に対する喧嘩を売っていくやつもいる。最近じゃぁ俺やタケに対して喧嘩は売らないけど、アツやカズ達に対して俺らのチームの座を掛けて勝負してくるやつが増えてきた。
チームを大きくするつもりはない。
6人で構成された、不良。
トップはこのチームを作った俺と、タケで、タク達に序列はない。
小学6年の頃全員でピアスを開けた時、象徴として桜の形のピアスをお揃いで付けてひなちゃんが羨ましがっていたのを、タケは見逃さず、恥ずかしそうにしながらもお揃いの桜の花びらが描かれた指輪を送っていた。俺らはそれを見ながら野次を飛ばしたけど、嬉しそうに笑うひなちゃんと恥ずかしそうに、でも幸せそうに笑うタケを見て、俺は推しによる供給過多で死にそうになった。
「チーム名は六桜(ろくおう)。ひなはこのチームに入れられないけれど、ひなの思いは俺が全部背負う。俺、マコト、アツシ、カズ、タクヤ、そして、なつ。この桜に恥じないように、俺らは全員がこのチームの王だ。異論は?」
「ねぇよ」
「ない!」
「ねぇな」
「ねぇよ」
4人が我先にと同意したのを聞いて、チラ、とこちらをみるタケに、俺はヒラッと手を振って問題ないと言葉を発した。
「ひなちゃん、チームに入れられなくてごめん。でも、ひなちゃんはタケの唯一だから、危ない目に合わせたくねぇって言うのが俺らの総意。けどさ、タケの心臓は、ひなちゃんが持ってて」
左手の薬指に回された桜が描かれた指輪をさしながら、タケのネックレスの先にある指輪をみる。
「俺の心臓は、ひなに預けるから、だから、喧嘩しても、死にそうになって帰ってきても、ひなは笑って俺におかえりって言って欲しい」
真っ赤な顔で小学生が言いそうにもないそんな告白を送るタケに、ひなちゃんも真っ赤になりながらも、ちゃんと帰ってきて、なんて。あぁ〜!!!健気〜!!!
そうして危なげなく小学校を卒業し、中学1年を適当に過ごし、とうとう原作が開始された中学2年が始まる。
稀咲鉄太との出会いはあるものの、小学生からずっとタケがそばにいたこと、ヤツと話し合った(逆行特有の地頭の良さを発揮しながら)こと、更には中学生からも恐れられるようになったタケの存在は、ヤツにとっては憧れに湧く何かがあったようで。
チームには入れられないけど、仲のいい兄弟のような友人に収まっていた。
中学に上がる前、稀咲は敵対する可能性もあるからと、これから会えないこと、自分も不良として、人生を走ってみたいと言うことを言われ、俺と、タケは人様に迷惑をかけない存在であれ、と彼に言った。あいつが大きな分岐点だったのは確かで、タケが何度もタイムリープする度に障壁として立ち塞がっていた男でもある。それを阻止できたのは、大きな1歩とも言える。
☆☆☆
「そういえばマサル君だっけ?あいつどうなったの?」
「あ、そういえばすっかり忘れてた」
中学二年になった瞬間思い出したマサルくん。タケのいとこで、確か見栄で渋谷三中のアタマ張ってるって言ってたっけ。
「マサル君、元気かな…」
「喧嘩賭博の商品にされてそうだよな」
「何の話?」
「卍會の三番隊主催で喧嘩賭博やってんだよ」
「うっわ今どきそんなのやってんだ。でもタケミチのイトコだろ?つえーの?」
「いや、たぶん弱い」
「多分って言うか、あの人確か下っ端の下っ端デショ」
見に行く価値あんの?なんてアツが聞いてくる。それを聞いて、タケと一緒に横目で視線を合わせ、見る価値はないけど喧嘩賭博はもう時代が違うって言う話。
「わっかんねぇぜ?もしかしたら下剋上案件かもしんねぇじゃん?」
「じゃぁ俺は時代錯誤の喧嘩賭博」
「俺も」
「ンだよトップ二人は夢がねぇなァ」
俺は下剋上だと思うね!なんて言ったマコに賛同するように他の三人も下剋上案件に美味い棒をかける。
「ンじゃぁ、俺はコレかけるわ」
「お前まだやめてなかったのかよ…」
「やめるきっかけがねぇんだわコレが」
ここで負けたら没収されるしやめるきっかけになるんじゃねぇかなってことで。そう言って明らかに値段は違うけれど、俺は胸ポケットからマイセンを出す。タケの前しか吸ってないのと、開けたばかりなのでそこそこ残っているそれを、アツとカズが確認した後、タケミチは?何かける?なんて言われて俺のライターをかけたのは一生許さないと決めた。ソレ!!俺のお気に入りのジッポ!!!!
☆☆☆
「おっらてめぇらのうまい棒寄越せや!!!」
「ぎゃー!カツアゲ!!」
チッ、と舌打ちをすれば、たばこも返ってきたのでまぁ良しとする。イラつきながらも、肺を汚しながら喧嘩賭博の会場を見れば、まぁタイミングは最悪。まさかのマサル君が今回の主役だった。逃げろよお前。ぼんやりとニコチンを吐き出しながら、見ていれば、カズたちはマサル君に向かってヤジを飛ばしていた。おめぇら自分らがあまり表に出てないからといって目立っていいとは限んねぇからな???
「た、タケミチ…」
「うわ、溝中のタケミチだ…」
「九条も、いんぞ」
「つーか六桜全員揃ってるじゃねぇかッ!!」
ぎゃぁぎゃぁがぁがぁうっせぇなぁ、なんて思いながら、ちら、とマサル君の方を見れば、人間って情報の整理が追い付かない場合、あんな呆けた顔になるんだなって思ったけれど。こちらを見上げる三番隊の彼らを見下ろしながら、ちらりとマサル君を見て、そのあとキヨマサを見ればビクッと身体を揺らしてくる。ふーん。
「どうする?」
「面倒事に巻き込まれる間に帰る」
ボソッとそう呟いたタケの言葉にカズたちが反応し、こっちに戻ってくる。全員戻ってきたのを確認してポケット灰皿の中にたばこを入れ、お疲れちゃーん。なんて言えばキヨマサがっざっけんじゃねぇ!!!なんて叫びながらこっちにバットもって振り回して来たから全員ばらけながら避ける。
「あれ、俺となつには誰も来ねぇの?」
「ラッキー。お前らー!!ここで負けたら三日間俺の雑用なァ!」
「「「ざッけんな!!!」」」
「お前雑用って言っておきながらほぼほぼ奴隷だからな!?」
うっせぇなぁ、なんて思いながら、どっか加勢出来るところあるかなぁ、なんて思いながら観察していれば、お前らぁ。何やってんのー。って嫌に落ち着き払った声が響く。あー、しまったなぁ。なんてちょっと後悔しながらも、ちらりと横目で彼を捉えた瞬間、俺の視界から“きえた”いや、消えたというよりかは、何かで遮られた、と言ったところか。
「う、ぉ!?」
「ンだよ、避けんな、よ!!」
「っざけんな!!」
バチ!!!と目の前の男の拳を払い落として距離を取る。あぁぁぁぁあああ!!!まってぇ!!!無理無理無理!ドラケン君じゃないですかぁ!力勝負じゃ一生勝てません!バッカじゃねぇの!?ホント、バッカじゃねぇの!?
「なつ!!!う、わ!!?」
「タケ!!」
あーもー!階段降りておけば良かったー!!!なんて脳内で愚痴りながら、僅か12段程の段差をタケと一緒に飛び降り、お互い横並びで彼らを見やる。
「ドラケン君とは相性最悪なんだよねぇ、俺タフじゃねぇし」
「俺はいつお前が骨折しないか心配になるよ」
さっせん。今日も元気に夏バテだわ、なんて言いながら、下に降りてくる彼らを見る。俺もタケも彼らもポッケに手を入れているのは拳を極力使わないという意思表示。まぁさっきドラケン君俺に向かって拳振り上げたけど。一生許さない。
「適材適所。タケはマイキー君苦手だもんな」
「逆になつはドラケン君相手は難しいんじゃねぇの?」
二人して視線をお互いに向けそんな会話をした後。にぃっとお互い肩を軽くぶつけて笑う。さぁて。どうしようか
「君らの仲間伸しちゃったのは悪いと思うけどさぁ、先に攻撃してきたのはアイツらなんだよねぇ。なのにこの仕打ちは無いんじゃない?」
「え?そうなの!?ごっめーん。てっきりそっちが最初かと思ってた!!」
「流石にそんな面倒なことしねぇわ」
「まぁ確かになー。喧嘩売る相手じゃねぇって言うか…」
そんなに喧嘩したいわけじゃねぇし、なんて困ったような声でそういえば、彼らは一様にキョトンとした顔で、俺とタケを見る。
「なんで?」
「ん?」
「そんなに力あるなら、組織でかくした方がいいじゃん」
「俺らはお前らと違って一人の女とバカな男の未来を幸せにしたいだけなんよ。だからデカい組織は要らねぇの」
むしろ邪魔かな、なんて言いながらくあっっと欠伸を漏らせば、へんなの、なんて言われた。別に変じゃないと思うんだけどなァ。
「ま、それとこれとは実は関係ないんだよね」
「マジかよ」
「俺からしてみたら雑魚が東卍の名を汚すなよって感じだけどさ、あんたら出てきたなら話は別。俺とケンチン、あんたたちで2対2のタイマン張ろうよ」
「えー…(ダルい)面倒」
「…本音も建前も変わらんな??」
「正直者だからなァ」
と、言ってもそれで納得するような性格じゃねぇし。コキッ、と首を鳴らして、ポケットに手を戻す。なめられたら終わりのこの席だし。つーかよくよく考えたらなんでコイツここに居るんだろ。まぁいいか
「ほら、来いよ。俺らから手を出させたら真面目に相手してやる」
「お…お前何言ってんの!?」
「制限時間は1分な~。それより過ぎたら俺らにもう喧嘩売らねぇって約束してもらうわ」
相手にすんの面倒くせぇ。そう言った俺を見て、タケは諦めたような ため息を吐いて同じくズボンのポケットに手を入れ戻す。東卍の奴らは伸してしまったので、アツ達が審判に回った。
「ちょっとでもポケットから手が出たらお前俺らからケツバットな!」
「タケミチはひなちゃんとのデート2週間禁止な!」
「いけー!東卍ー!!なつとタケミチぶっ倒せー!!!」
「なつー、タケミチー。負けてもアイス奢ってやるからなー」
「「お前ら俺らの味方だよね!?」」
この後ガチの鬼ごっこになった。きゃー!マイキー君なんで俺の方に来るの!!タケの所に行ってよ!!アイツ逃げるの下手なんだからさァ!!!
「1分!!1分立ちました!!俺らの勝ち!!はい!!帰る!!!!」
「待てよ九条夏樹ィ!!物足んねぇだろ!!こんなとこで終わられてもさぁ!」
「なつ!」
目の前にマイキー、後ろにドラケン。なるほど、コレが前門の虎後門の狼ってことね?なんて呑気に考え、彼らの腕を弾き、がら空きの胴体に蹴りを入れる。くっそ~。やぁぱドラケンは吹っ飛んでくれなかったかァ。
まぁマイキーもそこまで飛んだというよりかはよろけたって感じだから、こいつらホント体幹良いな。
「ハッ、さっきまで俺らの攻撃避けたり大声で叫んだりしてたのにさぁ、ちょっと俺らが本気になった瞬間そうするんだ?へぇ…」
「タケ~、俺もう帰りたぁい」
「ねぇ!なっち!タケミっち!!俺らと友達になろうよ!」
「タッチみたいなイントネーションで人にあだ名付けといて何恐ろしい提案してんの!?」
「いいじゃねぇか。俺ら友達だろ?」
そう言って俺の肩に腕を回したドラケンに向けて俺は心の底から叫んだ。俺はお前らと友達になった覚えないからぁっ!!!!