Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    nmhm_genboku

    @nmhm_genboku

    ほぼほぼ現実逃避を出す場所

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 51

    nmhm_genboku

    ☆quiet follow

    審神者日記2日目。

    ##審神者日記

    九条夏樹の審神者日記 2日目九条夏樹は怒っていた。それはそれはもう怒っていた。先ほどメールで前世の自分の記憶をフル活用して文句と嫌味をオブラートと求肥で包んだメールを政府の担当に向けて送信。そのあと海に行きたくないとごねるこんのすけを〆て、現在本丸探索である。よくよく調べるとこの本丸広すぎない...?

    「もしかして、この本丸を使ってた前の人ってやべぇ人?」
    「いや。これは審神者の霊力で大きくなるから、【深海】の霊力が多いだけだな」
    「出たよ霊力。あの管理官の話を聞いててもわかんなかったんだよなぁ」

    後で教えて。そう言って外に出る夏樹の腰に抱き着きながら、包丁は嬉しそうにいっぱい教えるから九条の事も教えて欲しいといった。それにいいよ、と応える彼の後ろ姿を山姥切はぼんやりと見る。
    きっと彼はここで自分がついていかなくとも何も思わないだろう。楽し気な声と足音を耳に入れながら、山姥切は頭からかぶっている布で視界を狭めるように引っ張った。視界をチカチカと波打つように照らしてくる陽の光が抑えられ、足音も会話も聞こえない。それがなんとも寂しくもあり、心地よくもあった。もういっそ消えてしまおうが何しようが彼にとってはどうでもいいだろう。そんな考えが心を侵食しようとしたとき、山姥切の狭い視野の中に九条は潜りこみ、「ひろくん」と彼の名前を呼んだ。

    「ッ!?」
    「疲れたか?」

    そういやさっき出陣したばっかだったな、なんて言って俺の頭を撫でてくる。呑気に包丁と話していた自身の主は、こんな卑屈な思考を持っている俺にもその無償の愛をくれるのか。そんな山姥切の心境など知らぬけれど、ぱちり。瞬いたその青緑色の瞳を見ながら、夏樹はゆるりと蒼を滲ませた自身の瞳を細ませた。

    「確認が終わったら飯にしよう」

    ただ作れるのは凡人以下だからおにぎりにしようなァ。なんて呑気に言いながら山姥切を外へと連れ出す。そんな男の姿を見ながら、包丁は思う。彼は“人も、物も、簡単に生かすことができ、簡単に殺すことが出来る人間だ”と。数多の時代を生きてきたからこそこの瞬間理解した。特異性は、常日頃よりそこら中に転がっているという事。そしてかの深海が、“かつての主人”のような存在であるということ。ついでに言えば、彼が人として生きる可能性が五分ほど減ったという事ぐらいか。しかしまぁ、それがどうした、とでも彼は言うだろう。そう考えただけで、包丁はこれから主さん大変そうだよなぁ、なんて思いながら笑う。もとより自分は懐刀として名高い短刀なのだ。そんな未来を望んでいないと言うのは、嘘だと言う話。
    だからこそ。ここもまた、分岐点。

    「なぁ…深海はなんで、俺を選んだんだ
    ?」
    「金髪だから……って言いたかったんだけどね。俺もわかんない。君の刀を見たとき、“俺のだ”って思っちゃったし」
    「は…」
    「事前情報で全員の容姿とか性能とか、性格とか書いてあったけど、関係ないと思うよ。神様に嘘つくのもどうかなって思うし、俺だってなんて言ったらいいかわかんないけど、あの時を言葉にするなら多分…」

    俺がお前を選んだんじゃなくて、お前が俺を選んだんだよ。そう言って笑った夏樹の言葉に、山姥切はギクリと身を震わせた。

    ☆☆☆

    あれから小規模ながらの畑や鍛錬場、馬はまだいないが厩舎もある。生活には十分だろう。離れには審神者用の執務室があるし、近侍の部屋もあるけれど、人数がある程度揃うまでは一緒に雑魚寝しよ―ぜってことで落ち着いた。

    「深海さん、深海さん!」
    「ん?」
    「さっきこんのすけが海に引き摺り込むのはやめてくださいって言ってたじゃないですか。アレどういう意味なんですか?」
    「比喩だよ」

    あっさりと。それはもうあっさりと答えを返され、包丁はキョトリと目を瞬かせた。そんな彼を見ながら、九条は「人は海から産まれ海に還る生き物だからね」なんて言って目を細めて笑う彼の言葉に同意するかのように、鼓膜の奥でさざ波の音が響いた気がした。

    「…深海」
    「ん?」
    「かえりたいのか?」
    「君たちがいるのに?」

    可笑しなことを聞くもんだ。そう言ってユラリと身体を揺らして歩き始める九条に、包丁は即座にそれじゃァ!と声をあげながら歩み寄る。

    「それじゃぁ、ずっと一緒にいてくれる!?」
    「ずっとは無理だよ。俺はいずれ死ぬからね。でも出来るだけ長生きできるように頑張るよ」

    取り合えずメシ作れる人呼ばなきゃな。なんて言いながらも厨に入って土鍋を取り出したのと同時に、政府から戻ってきたこんのすけはご飯は炊けるんですね、と声を出した。

    「土鍋って少人数の特権ってやつじゃんね?つかお前メシは?」
    「こんのすけは刀剣男子様と同様に、食べても食べなくても問題ありません」
    「おまえら霞食って生きてんの!?」

    飯食って、適度な運動して、経験積んでいかないと、強くなれないよ?なんて言えば、深海さん経験あるの?なんて聞かれたのでにっこりと笑っておいた。

    「お、冷蔵庫の中それなりに入ってんじゃん」
    「一か月ほどは忙しくてご飯の事を忘れる審神者様が多いですので」
    「へぇ?」

    まぁ他の人は興味ないや。
    だと思いましたよ
    そう言う軽口をたたきながら、九条は5合分のお米をボウルに入れ、米を研いだ。一度目は手早く混ぜて濁った水を捨て、二度目、三度目はそれなりに。水がある程度綺麗になったら20~30分程水につけておかないといけないけれど、知ったこっちゃねぇのでそのまま水をぶち込んでコンロの火にかける。釜土でメシ作んなきゃダメかと思った。ちゃんと現代の技術が仕事してる。

    「あ、おにぎりの具材はなんにする?俺は好き嫌い激しいからツナマヨと辛子明太子と焼きおにぎりにする予定」
    「か、海底さんと同じのが良いな!」
    「俺も。あんたと同じのを食べてみたい」

    別に違うのでも、と思ったが、人間1日目にして好き嫌いが分かるわけないか、と判断して頷き、どうせ食い物の好みは後で分かれてくるか、と他人事のように理解して、九条は了解、と声を上げた。

    「コンは?」
    「わたくしですか?」
    「お前も俺の仲間だろ」
    「…では、同じので」

    りょーかい。そう言ってブクブクと音を立てる土鍋を無視して冷蔵庫の中にあるちょっとお高めの箱から昆布締めされた明太子を2本取り出せば、こんのすけが贅沢な!という歓喜の声で刀剣の二人は首を傾げた。後々になって上物と呼ばれるもので、一本1000円以上する高級品と知って卒倒しそうになったのは、もう少し先の未来だが、それでも楽しそうに「贅沢しよっか」と顔を綻ばせながら言うものだから、思わず全員コクリと頷いてしまった。

    「出来上がるまで一時間ぐらいはかかるからね。何か俺に聞きたいことがあったんじゃないの?」

    真名以外なら答えるけど。そう尋ねた九条に山姥切が「どこから来たんだ」と尋ねられたので、九条はすんなりと「200年ほど前の日本から」と答えた。

    「200年…」
    「そ、200年。俺はその中でも不良と呼ばれるもので、わかりやすく言うと、親不孝者とか、はぐれ者とか…まぁそう言った類いの人間だったの」
    「仲間、とかは…」
    「居るよ~。と言うより、居た、に近いのか?俺含めて六人。“虎”、“魚”、“狼”、“羆”、“鷲”、“鷹”。俺たちは不良界隈を取り締まる秩序であり、法律であり、王である。一人一人に裁きを下す権利があり、一人一人に実力がある。そんな俺らだからこそ。“六人の王”という意味と、日本の象徴であれという意味で“桜”の漢字を当てはめて“六桜”。俺の他人から呼ばれる審神者名にこの名前にしたのは、俺が彼らを忘れないためでもあるんだわ」

    俺は人より記憶を忘れやすいからね。そう言って楽しそうに昔の話をする主を見ながら、2人は少しだけ面白くないな、とも思った。そんな2人をちらりと横目に見たこんのすけが、九条に向かって「戦場に興味はおありですか?」と尋ねた。

    「過去に行けるのは刀剣だけって聞いたけど…?」
    「一般的には、ですね。普通の方がそんな簡単に戦える訳ないからこそ、安心させるために言っているにすぎませんよ」

    そう言ってふわふわな尻尾を揺らめかせ、審神者様が行きたいのであれば、止めませんよ。そう言ってくありと欠伸をするこんのすけに、それもそうか、と九条は納得した。いきなりうら若い少年、少女が戦場に行けと言われても理不尽だと怒鳴り散らかすだろうし、安全な場は必要だ。けれど、そうか。

    「可哀想にな」
    「そう言えるのはあなた様だけですよ」

    それもそうか。そう呟いてコンロの火を十秒ほどだけ強くしてから消し、土鍋をタオルで包みながら、一緒に戦場に行くかい?と尋ねてみれば嬉しそうに頷かれたので、刀が多くなったらその時はその時で考えよう。そう自身の脳を納得させて彼らに握り飯を握ってやった。焼きおにぎりは今から作るとしても腹減りはあかんので。

    そうして飯も食べ終わって散策も終われば、ようやっと歩くことにも慣れた2人と文字通り戦場へと行き、新たな刀剣を回収。それを数十回繰り返して、一日目がようやっと終わった。この間に刀装とやらを作ったり、新たな刀を呼ぶための鍛刀をしたりとそれなりに忙しくしながら、三人と一匹で雑魚寝した翌日。何故か短刀の群れが俺の身体に乗っかっていた。

    「こーん。包丁~!ひろくーん!!助けてー!!!」

    返事がない。ただの屍のよう…?いやまさか!
    ガバっ!と勢いよく起き上がれば、きゃぁ!とか、うお!?とか聞こえた。ごめんね!あとで名前教えてね!なんて気持ちで急ぎ厨に向かえば知らん奴がメシ作ってて頭痛くなった。ちょっと待って俺の初期刀たちどこ行ったか教えてほしい。

    「お目覚めですか、深海様」
    「こォん…お前俺に何を秘密にしてやがった」
    「おや、ご自分が見つけた刀ではないと?鍛刀した刀ではない、と?そうおっしゃるのですか?」
    「アイツらは俺の刀だってのは分かってんだよ。俺が言ってんのはそこじゃない。お前、審神者の霊力が無いと顕現出来ないって言っていたあの管理官の話は嘘か?」
    「いえ。正確に言えば、顕現する場所はどこでもいいのです。昨日はあなた様の近くに刀剣を置いて全員で雑魚寝したじゃないですか」
    「せやな。てかひろくんと包丁は?」
    「山に食材を取りに。昨日の晩御飯抜きという行動が燭台切光忠様の御心に火をつけたらしく、朝から栄養のあるものを作ると張り切った結果が、こちらとなります」
    「なるほど。みつー。その辺にして御飯にしよ。俺お腹空いた!」
    「あ、主!?え、短刀君たちに足止めお願いしたのになんでここに!?」

    短刀?俺の腹の上で寝てたよ。そう言って首を傾げていれば泥だらけの2人が帰ってきたので一緒に風呂に入ることになった。髪の毛を包丁に遊ばれ、俺はひろくんの背中を流し、ひろくんはこんの身体を洗っている中、こんから話を聞いて居れば、明け方にはもうあの様子だったらしく、俺の枕と徹していたこんは俺を起こさないように身代わりの座布団を枕として献上し、ひろくんと包丁の2人を拉致。みつくんに今日の食材(魚ときのこ)の採取にたたき起こされながらも駆り出された、というわけらしい。

    「みつくん強すぎワロエナイ」
    「あんた、昨日好き嫌いが激しいって言っていたから一応アイツには伝えたが、どう転ぶか分からん」
    「まぁ、食べれないのは無理して食べないから気にしないでいいよ」

    そう言って肩まで浸かって温まった身体を湯船から勢いよく出て、広間に向かえば、ジッと御膳を前に待っていた彼らに頭を抱えた。

    「次から俺が風呂入ってても勝手に食べてていいからね…?」

    そんな出会いがあった二日目の朝。ご飯が食べ終わり、彼らの自己紹介を聞いて居たら、こんが政府からの手紙をもって帰ってきた。なんだろとか思っていたら、演練だのなんだのと言って来たので取り敢えず短刀達と引率でひろくんも加えて行ったら怖がられたので心から盛大に泣いた。

    「俺なんかしたぁ?」
    「むしろその恰好が原因じゃないのか?」
    「俺のトレードマークに恐怖を抱いてんじゃねぇよ」

    めんどくせぇな、なんて眉間に皺を寄せながら蒼のバンカラマントを翻す。あの時代に作ってもらった。たった一つの自分を、九条夏樹という深海魚を指し示すトレードマーク。それを恐怖の対象として見られるとは。時代の変化と言うやつか、なんて。思わず面倒くさくて舌打ちをすれば、「僕はかっこいいと思ったんだけどな」と我が家で俺の食生活改善を旗に掲げたみつくんでは無い別のみつくんがやってきたので虚無を見た。

    「光に当たると僅かに浮き出る波紋とか、魚とか、すごい技術だと思うんだよね。歌仙くんもそう思うでしょ?」
    「確かに。雅のわかる人間にしかこれは作れないね」
    「ちょ、ちょっ!お前らステイ!!相手誰だかわかってる!?六桜!!約200年前の不良チーム伝説の副総長の海神!!折られたら泣くぞ!俺が!!!」
    「へえ!君が…」
    「随分と幼い顔立ちだな。神と冠する名前を持っているのなら強いのか?」
    「すげぇ。なんかいっぱい来た」
    「六桜殿!!こっち!!すみません!こっち来てください!!」

    ワラワラと群がってくる別の本丸の付喪神に好き勝手されながらぼんやりしていたら、後ろで泣きそうなあの管理官が呼んでいるので、とりあえずずっと腰に引っ付いている包丁を担いでその声の主の方へと動く。他の刀剣達はひろくんか回収しているのか、それとも管理官を呼んでくるついでに離れたのか、居なかったので、帰ったら盛大にいじけてやろうと思った。

    「守ってくれてもよくない?」
    「昨日あれだけ人より動いていたくせに何を言う」
    「それもそう」

    そう言って煩わしいものを全て払い落とす様に大きく広がるバンカラマントをバサッ、と音を立てて翻し、とりあえず行く場所あるんでしょ?と聞けば、平身低頭で案内する彼の背中をバチンッ!と音は強めに、けれどそれほど痛くもない叱咤を送り、はよしろ、と声を出す。後ろでジッと見てくる大勢の視線から逃げたいのもあって、急かすようにすれば、わかってくれたのか、さっさか歩き始める管理官に、息を吐いた。

    「ちょっと泳いだだけじゃん」
    「するするって全員の間を縫った移動だった!人妻と逃避行する時参考にするね!」
    「お褒めのお言葉どうも。逃避行する前にお相手見つけないとな」

    まぁ、冗談だって事は分かるので、ポケットに入れた飴を彼に渡し、薬研くん達にも配る。ひろくんは飴玉を拒否して来たのでポケットの中に大量に入れて、管理官の後へとついて行けば、VIPみたいな部屋に連れてこられたのでまた虚無を背負う羽目になった。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖🇴💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖🇱🇴🇻🇪💖💖💖💘💘💘💘💘💘💘💘💖💖💖💖💖💖🇱🇴🇻🇪💴💴💴💴
    Let's send reactions!
    Replies from the creator