無名あるスラム街の、それはいつもに比べて闇の密度が濃い夜。死霊たちが好みそうな雰囲気が漂う墓地。
そんな場所で急ぐように小刻みに足を運ぶ髪の長い顔の幼い紫の瞳の女がいた。
その場に似つかわしくない白い魔女帽子に、白いフード付きのマントをなびかせ、高貴な金の刺繍が施されている白いカソック、白いレースアップブーツを履き、手に持つは火をつけてしばらくたったのだろう消えかかっている蝋燭。幸いにも強く風が吹くことは無く火の灯りは保たれており、弱々しくも彼女をハッキリと照らしていた。
「私だけじゃあこの街を救えない。本当はしちゃダメなのだけれど…これはみんなのため…私利私欲ではない…私のためじゃないわ。」
ある廃墟にようやくたどり着いた彼女は腰を下ろし懐から持参したある本とチョークを取り出し、これからすることに罪悪感を覚える彼女は自身を落ち着かせるように言い聞かせ地面にチョークで魔法陣を描き始めた。
1948