蜘蛛の糸「愉快とはこのような事を言うのだろうな。笑っていいぞ、エンフィールド」
そうに違いない、と猫のように目を細めたスナイダーは自身の本体となるスナイダー銃に取り付けた負い紐──スリングを右肩にかけ背負っている。普段は取り落とす訳もない本体だが、高い樹上へと登るためには両手を塞ぐわけにもいかない。
そこまでしてスナイダーが登った枝に片膝を立てて腰を下ろし観察するのは、同じ木に下がる網だ。大物を抱えて膨れながらも丈夫な良い物で、こと港町であるフィルクレヴァートにおいては網漁で大量に使われるため容易く手に入れることができた。
「いい加減にしてくれ! 早く下ろすんだスナイダー!」
「騒々しいぞ」
「なっ、どうして君はいつもそうやって……っ」
3038