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    ru_za18

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    ワンドロ作品
    五月雨と女の子のお話

    最初暗め、捏造設定あり
    色々と最初ひどいので注意
    刀剣男士最後の方にしか出てこない…

    見える世界が違った女の子のお話 私には、幼い頃から見えているものがあった。黒い影に足のない人。手を振る顔の見えない子供や、家の壺や櫛の近くにいる小さな何か。幼い頃の親に報告する“今日あった出来事”は、ほとんどこれだったと言っても過言ではない。
    「そんな嘘ばっかり……。いい加減にして」
     『嘘など付いていない』と何度言っても両親に怒られる日々。それはそうだ。私と両親の視界は、全くの別物だったのだから。理解しようもなかっただろう。
    『そんな子供は放っておけば良い』
     そう思ってくれれば良かったのに、願ってもない方向へ物事は進んだ。
    「何か悪いものでも取り憑かれているんじゃないか?」
    「物の怪か?」
    「そんな……なんておぞましい……」
     私が住んでいたのは、古びた村だった。今の時代からは置き去りにされたような、だ。当然、今からすれば『どうしてそんな発想になる』と思うようなことが次々と話題に上がった。そして、終いに出した両親や村の人の結論は――。
    「そんな子、早く始末してしまいましょう」
     何も知らずに過ごした幼い頃の幾年か。私が何か悪いことをしただろうか?いや、ただ他の者と見える景色が違っただけだ。
     とはいえ、私の視界を理解出来ない大人達は、幼子の私を座敷牢へと入れた。始末する方法を確定させるまで、逃げられないようにする為だった。
     どう始末するかを日々大人達で話す間、私は座敷牢で一人過ごしていた。退屈はしなかった。話し相手は無くとも、何かしらいるのが見えていたから。
    「だれかこないかな……」
    「私でもよろしければ」
     何気なくぽつりと呟いた言葉だった。誰に向かって言ったでもない。けれど、返事が返ってきた。きょろきょろと辺りを見渡しても誰もいない。
     ――きのせい……?
     そう思っていれば、また何処からか声がした。
    「よろしければ、話し相手になりましょう」
    「どこにいるの?」
    「今は姿が現せないのです」
    「ふぅん」
     見えないけれど話が出来る人は初めてで、何処か新鮮だった。少し、わくわくしたのを覚えている。
    「あなたのおなまえは?」
    「そうですね……今は、雨と」
    「あめ?おそらからふる?」
    「はい」
    「おそらといっしょなんて、すごいね」
     “雨”と言ったその人と話すのが楽しくて、ついつい夢中になって話し込んだ。幸いにも、不気味がって私のいる座敷牢へは人が来なかったこともあり、気の済むまで話が出来た。
    「たのしかった!ありがとう、あめ」
    「いえ。頭が望むのであれば」
    「かしら?」
    「えぇ、あなたのことですよ」
    「わたしのなまえはちがうよ?」
    「そうだとしても、私にとってのあなたは頭ですから」
     姿は見えないけれど、何処かでにこりと笑ってくれているような気がした。楽しい時を過ごせたことが嬉しくて仕方なかったけれど、幼いながらに自分の立場はわかっていた。
    「さいごにはなしてくれてありがとう。あめははやくどこかににげて」
     このままここにいたら、きっと良いことはない。私だって、ここからいなくなってしまう。そう思ったからこその言葉だった。
    「……そういうわけには行きません。私は、あなたを助ける為にここにいるのですから」
    「たすける?」
    「はい。明日の雨の日、必ず参ります」
    「あめ?あめ……?」
     その言葉を最後に、雨に呼びかけても反応は無くなってしまった。『助ける』と言ってもらったのは初めてで、胸に炎が入ったかのように熱くなった気がした。

     そして次の日のこと。雨が言ったように、朝から雨がしとしとと降ってきていた。雨の音に消されて、外を通る足音も聞こえない。
     ――ほんとうに、あめはきてくれるのかな?
     ドキドキと高鳴る気持ちと、不安が少し。けれど、昨日話してくれた雨の声からは、確固たるものを感じた。嘘ではないと信じたい。そう思う内に、座敷牢の部屋の扉が開かれた。
    「ようやく、この日が来たぞ」
    「早く出ろ」
     期待に膨らんだ胸に鉛が落とされる。部屋に入ってきたのは、村の大人達だったからだ。
    「や……」
    「我が儘を言うな」
    「早く出ろ」
     座敷牢の鍵が開き、力強い手が私の腕を掴んだ。恐怖にひくつく喉を何度も何度も動かし、涙混じりにようやく出せた言葉は――。
    「あ、め……あめぇ……」
    「お呼びですか、頭」
     “雨”だった。音もなく目の前に下り立った人影は深緑を纏い、黒のストールを靡かせながらこちらを向いた。気付けば、掴まれていた腕は離されていて、安心感からだろうか。ダムが決壊したように涙が溢れ出した。
    「怖かったですね、頭。もう大丈夫です。私が付いていますから」
     私を優しく抱き上げた雨は、ぽんぽんと背中を叩いてあやしてくれた。そのまま泣き疲れてしまって、その後どうなったのかは覚えていない。
    「頭?何を思い耽っているのです?」
    「んー?雨……五月雨に助けてもらった時のことをちょっとね」
     けれど、雨こと五月雨に連れられ村を出たのは事実だ。更に言えば、村を出たあとは“神域”というところにいたということを、大きくなってから知った。これが所謂、“神隠し”というものか。
    「私はずっと、季語と共に育つ主の成長を見守っていたというのに、あの村は……」
    「もう良いんだよ。五月雨が見守ってくれてたおかげで、今私はこうして生きてるんだから」
    「……はい」
     たまたま寄った現世で、私は“政府”というところに見つかったらしく、今度“審神者”という仕事にも就くことになった。五月雨と二人、また新しいスタートを切るらしい。
    「頑張らないとね、五月雨」
    「えぇ。これからもお供します」
     見えるものが違った私の、そんなお話。
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