何に使おうか忘れた文章 性分と言ってしまえばそれまでだ。
しかし、八木山にとって安眠をおびやかすその性分というやつは、もはや呪縛と言っても過言ではなかった。
己の心配性を恨めしいと思ったことなど、数え出したらきりがない。
気になって仕方がない。
気になって眠れない。
自分を取り巻く愛すべきものたちが、望まぬ結末を迎えてしまうのではないかと、恐ろしくてたまらない。
──だから、彼は立ち上がったのだ。
だから彼は共に歩み、並び立ったのだ。
己が存在で以て、少しでも忍び寄る不安要素を遠ざける一助となるために。
あるいは、事実を現実のものとして見届けるために。
性分、と言ってしまえばそれまでだろう。
しかしもはや呪縛と言っても、過言ではない──
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