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    途中まで書いたの消しちゃって闇!!
    いつか続き書きたい

    図書館燃えてない藤秋ちゃん僕たちが通う高校の裏には図書館があった。
    図書館と言ってもとっくの昔に閉鎖され、大袈裟な門の柱に書かれた「帝国図書館」という文字だけがそれが図書館であった事をしてしている、大きなレンガ造りの建物である。
    その廃図書館に幽霊が出るという噂を、ある日友人である花袋から聞いたのだ。
    「それは興味深いね……」
    「だろ?」
    「うん。どんな人なんだろう?」
    「うーん、黒髪で白い和服姿らしいけど……きっと美少女に違いない!」
    「美少女かぁ……」
    僕は目を細めて花袋を見た。そう言うことを平気で言うところが彼の良さでもあり悪さでもあるんだけど……。彼は僕の目線を特に気にする様子もなく話し続ける。
    幽霊の見た目はともかく廃墟に現れる幽霊自体には興味がある。だって僕らはまだ見たことがないんだから。もし美少女ならば見てみたいと思うし、そうでないにしてもそんな人がなぜ廃墟に現れたのか知りたいものだよね。それにしても……。
    花袋と別れたあと、一人帰り道を歩きながら僕は考える。どうして廃墟に現れたりするんだろうか?あの場所はもう何年も前に閉鎖されていて立ち入り禁止の場所なんだから、そこに現れる意味なんて無いはずなのに。まあでも幽霊だから理屈なんて関係ないのかもしれない。
    ふっと顔を上げて、夕焼けに染まる空を見上げた時。ちょうど雲間から太陽が顔を覗かせた。まるで何かのお誘いのように見えたそれを見て僕は思いつき、急いで帰路に着いたのだった。

    ****

    次の日。放課後になったら真っ直ぐ家に帰るふりをして裏山へ向かった。図書館へ行くためだ。
    学校の裏手にあるこの小さな山のさらに上、丘の上に大きな屋敷があってそこには古い西洋風の大きな図書館があった。壁のレンガには蔦が生い茂り、少し崩れているように見える門には看板代わりに木札がぶら下がっている。「帝国図書館」と。
    門には「立ち入り禁止」と所々掠れた文字のプレートが掛かっていたけれど無視した。扉に手をかけると意外にもすんなり開いて、そのまま敷地内へと入っていく。
    「おじゃまします……」
    誰もいない館内に向けて小さく挨拶をしたけれど、案の定何も返ってこない。寂しい気分になりながらも館の入口のドアノブを回す。するとガチャリという音がして扉が開いた。よかった……鍵はかかってなかったようだ。建物の外観と同じく、中は外装同様に古くて立派な作りをしているように感じた。埃っぽくカビ臭かったけれどそれも趣があり良いと思った。しばらく歩くと突き当たりに大きな階段が見える。ここだ、この上に噂の元になっている場所が……。
    一段また一歩を踏み出して登る度にギシギシと音が鳴る。その先に見えてきた扉の前で深呼吸をして意を決して押し開けた。途端、視界に広がる景色に思わず息を呑む。目の前一面本棚に囲まれていて窓が無いせいか外よりも薄暗くひんやりとしていた。
    その部屋の中央に置かれた机に一人の男性が座っている。黒い髪、白の着物に紺の袴。美"少女"では無かったけれどきっと噂の人物だ。その人は僕を見ると驚いたような表情を浮かべた。
    「君は……」
    「僕は島崎藤村。ここに幽霊が出るって聞いてやってきたんだけど……貴方が幽霊?どうしてここに?詳しく話を聞かせて欲しいな……」
    彼は一瞬戸惑った後、「僕は徳田秋声だよ。よろしくね」と言って微笑んでくれた。それから色々教えてくれたよ。彼のこと、この場所のこと。そして自分が何故此処にいるのかも……。
    「ねぇ、秋声は一体いつから此処にいたの?」
    「えぇと、それは……」
    「ずっと前から?」
    「そうだね……」
    彼は困ったように眉を下げながら曖昧に笑っていた。言いたくないのかな……。これ以上聞くのはやめておいた方がいいかもしれないね。僕は彼に別れを告げて部屋を出た。「ごめん、もう行かないと」「そうかい?」
    「うん。ありがとう秋声」
    「どういたしまして」
    僕は彼に手を振ってその場を後にした。
    次の日から僕は毎日のように図書館へ通うようになった。秋声はいつも優しく出迎えてくれて色々なことを話してくれた。僕はそんな彼を慕うようになっていた。もっと彼と話がしたいと思って、学校が終わるとすぐに図書館へ向かう日々が続いた。

    ****

    「秋声はずっとここで過ごしているの?」
    「……あぁ、うん。久しくここから出ていないね」
    「じゃあ今度街に出ようよ。僕が案内してあげる」
    「……ありがとう。いつかお願いするよ」
    いつものように図書館に入り込み、秋声を見つけては話しかける。なんでも彼はずっとこの図書館の中だけで生活しているらしい。噂の上では幽霊なのだから出られないのかもしれないけれど……。僕がいつも見ている景色を彼が見たらどんな風に思うのか、知りたいと思った。だからつい街を案内するなんて言ったのだった。しかし秋声の反応はなんだか歯切れが悪く、もしかしてここから出たくないのかな……?と考えてしまう。

    でも、僕はどうしても彼を連れて行きたかったから、どうにか説得できないものだろうかと考えた。
    「……秋声はどうして外に出ないの?ここには本が沢山あるし退屈しないと思うけど……」
    「僕は、ここにいなくちゃいけないんだ。君だって自分の家があるだろう?それと一緒さ」
    それに僕には守らないといけないものがあるからね。
    ポツリと聞こえた気がしたセリフは小さいもので、秋声が言ったのか僕の空耳なのか分からないものだった。それでも、その時の彼の顔はとても悲しげに見えた。

    ****

    『帝国図書館解体工事のお知らせ』
    学校近くの町内掲示板にそんなタイトルのチラシが貼ってあるのを見つける。取り壊し……ということはあの廃図書館は無くなるということだ。……秋声ともお別れになるのかな……? 僕は急いで駆け出した。もう二度と秋声に会えないかもしれない、そう感じたから。
    ここ数ヶ月ですっかり通り慣れた小道を登り、図書館へと急ぐ。肺が冷えて痛くなったけれど僕の足は止まらなかった。
    外れかけた「立ち入り禁止」のプレートが引っかかった門扉を勢いよく開け、そのまま図書館の入口まで走る。ドアの先はいつもと同じ。静かで埃っぽい。昨日までと変わらない様子に少しだけ安心した。でもここが無くなれば秋声と会うのは難しくなるだろう。だからいっぱい話をしよう、そう思っていつも彼がいる部屋へと向かった。
    階段を登りそこにある扉を開こうとした時、ガシャンと大きな音が中から聞こえた。何かが落ちるような音だ。もしかして秋声が……?部屋には高い位置まで本があるから、それを取ろうとしたのかもしれない。とにかく心配になって慌ててドアノブを捻る。
    「島崎……!?」
    ドアを開くと驚いた顔の秋声と目が合った。秋声は部屋の右奥、ちょうど扉に隠れた方向に弓を構えている。
    「え……」
    更に扉を開き、さっきまで見えていなかった部分に目を向ける。そこには黒くて丸い羊のような"侵蝕者"が何匹も現れていた。侵蝕者……?自然と頭の中に浮かんだ単語に違和感を覚える。だってそんなもの聞いた事ないし今まで見た事だって無い。本当に……?何か忘れているような気がして胸がざわつくし頭はガンガンと痛む。
    「島崎!早く逃げるんだっ!」
    秋声の声が聞こえるけれど体が言うことを聞かない。いつの間にかへたりと座り込んでしまった僕にひとつの影が落ちる。丸い、侵蝕者の影。もうだめかもしれない。ぎゅっと目を瞑る。耳元で何かが風を切る音が聞こえ、身体中熱いのか冷たいのかよく分からないけれどとにかく痛い。僕の名前を呼ぶ秋声の声が聞こえるけれど1度瞑った瞼をあげることも出来ず僕の意識は薄れていった。

    ****

    「ご迷惑をお掛けしました……」
    「ったく、看板の文字も読めねぇのか!?」
    「……ごめんなさい」
    現場服を着たおじさんに怒鳴られながら数日前の出来事を思い出していた。
    現実離れした出来事があったあの後、僕は気を失っているところを朝になって解体作業にやってきたおじさん達に発見されたそうだ。
    なんでも二階の書架、秋声といつも会っていたあの部屋に入口に大きな穴が空いていてその下に僕が倒れていたらしい。身体中打ち身や擦り傷でいっぱいだった僕は大慌てで病院に運ばれ、目を覚ますなり家族から友人からたくさん怒られた。そして今は改めて謝罪に来た先でまた怒られている。それにしても秋声はどうなったんだろう……。無事でいてくれたらいいな。僕が見つかった時はいなかったそうだから無事に逃げられたんだろうか。秋声の事を考えている間におじさんはすっかり話し終えたらしい。「もう馬鹿なマネすんじゃないぞ!」そう言って館の奥に消えていった。

    ****

    時期外れの転校生がやってくるらしい。
    クラス全体がそわそわとした空気に包まれている。そんな期待の中ぴしゃんと教室の入口のドアが開き、担任ともう1人、噂の転校生が入ってくる。「秋声……」その転校生の顔を見てぽつりと声が漏れてしまう。恥ずかしくなってちらりと周りを見たけれどあちこちざわついているおかげで僕の声は誰にも拾われなかったようだ。
    「徳田秋声です。よろしくお願いします」
    素っ気ない挨拶をして先生に言われた席、僕の隣の席へとやってくる秋声。図書館の彼ととてもよく似ている……。隣に座る横顔をじっと眺めているとちらりとこちらを向いた彼と視線がぶつかる。
    「なんだい、さっきから」
    居心地が悪そうに僕に話しかける。
    「……君はあの図書館にいた秋声と何か関係があるの……?」
    もしかしたらという期待を込めて僕は秋声に質問する。そんな僕に秋声は目をぱちぱちとさせ言った。
    「ええっとごめん、図書館とかなんの事かよく分からないんだけれど……」
    「……そう」
    望んでいた答えとは違うそれについ気持ちが萎んでしまう。落ち込んでいるのが伝わったのか秋声が「あ、あのさ……」と気まずそうに声を掛けてくる。
    「良かったら街、案内してくれないかい。……君と仲良くもなりたいし」
    その言葉にあの日の秋声との約束を思い出し胸がぎゅっとなる。目の前の秋声はきっと彼だ。なんの確証も無いけれどそう思った。
    「勿論だよ……!」
    自分でも滅多に出ない大きな声が教室に響き、皆の視線が僕たちに向く。僕もちょっと恥ずかしくなってしまったけど嬉しいんだからしょうがない。ほわほわとした気持ちでいると先生がコホンと大きく咳払いをする。これ以上はいけないな。前を向き先生に目で合図する。はぁ、とため息をついた先生はまた授業を再開させる。あぁ放課後が待ち遠しいな……。もう一度ちらりと秋声の横顔を盗み見てどこから案内しようかと考えをめぐらせた。
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