【真夜中のおやつ】 真夜中のおやつにご用心。カロリーも虫歯リスクもなにひとつあなたの為にならないよ。と。先人たちよ、もっと厳しく言い聞かせてくれてたらよかったのに。
「帰っちゃうんだ」
「ええ。坊っちゃまの朝ごはんの下ごしらえを今夜のうちに済ませなければなりませんので」
にこやかに衣服を整える。その姿はビシッとパリッと隙ひとつない、いかにも執事というていで。くわえてこちらの留学生も、長袖長ズボンの綿パジャマ(お花柄)、ボタンは上まできっちり閉められなんなら裾もズボンの中で。執事殿の手でキッチリと整えられている。なにが『お腹を冷やしてはいけませんからね』だ。
今まさに魔界一彼が大事にしているマスターの元に戻らんとするその表情からは先程の熱のかけらも感じられない。が、不満は言わない。それに文句を言っていてはこの執事の恋人は務まらない。大人だ。大人の女になると決めたのだ。健気である、と留学生は自分に言い聞かせる。が。
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