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    コミネコヒツジスキー

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    バルバトス×MC。🔞ではないですけどそういう関係だよって話なので中学を卒業している方だけ読んでください!色っぽくはならなかった!!

    【真夜中のおやつ】 真夜中のおやつにご用心。カロリーも虫歯リスクもなにひとつあなたの為にならないよ。と。先人たちよ、もっと厳しく言い聞かせてくれてたらよかったのに。



     「帰っちゃうんだ」
     「ええ。坊っちゃまの朝ごはんの下ごしらえを今夜のうちに済ませなければなりませんので」

     にこやかに衣服を整える。その姿はビシッとパリッと隙ひとつない、いかにも執事というていで。くわえてこちらの留学生も、長袖長ズボンの綿パジャマ(お花柄)、ボタンは上まできっちり閉められなんなら裾もズボンの中で。執事殿の手でキッチリと整えられている。なにが『お腹を冷やしてはいけませんからね』だ。
     今まさに魔界一彼が大事にしているマスターの元に戻らんとするその表情からは先程の熱のかけらも感じられない。が、不満は言わない。それに文句を言っていてはこの執事の恋人は務まらない。大人だ。大人の女になると決めたのだ。健気である、と留学生は自分に言い聞かせる。が。

     「そんな顔をしないでください。明日になればまたRADで会えますよ」

     どうも自分は不貞腐れた顔を全面に出してしまっているらしい。
     明日まで会えないってことなのにな。夢に出てきてくれる保証もないし。なんて思ってしまったのを見透かしたようにバルバトスが留学生の髪を撫でる。

     「私も名残惜しいのですよ」
     「どうだか」
     「信じていただけないと?」

     心外ですね、と楽しそうに言うのがまた信じられない。もはや膨れっつらを隠さない留学生に、ではこれを、とバルバトスが手品のように何かを掌の上に出した。え?どこから出した?と不思議がる留学生をまた楽しそうに見ている。

     「…マカロン」
     「ええ。あなたのための」

     口元に掲げられて反射的に口を開ける。真っ白な雪のような色のないマカロン。魔法で出てきたとはいえあのバルバトスのお手製だ、もちろん美味。何味なのか聞く前に放り込まれてしまった。ミルク?バニラ?甘いのは確かだ。

     「おくちに会いましたか?」
     「ん」
     「それはよかった。これはあなたへの想いを込めたマカロンですので」

     額に落とされるキスはまるで留学生の眠気を誘うかのように。だが、眠ってたまるかと再び口を開ける。

     「もういっこ」
     「おや、よろしいのですか」

     ふふ、と小さく上品に笑いながら、その手に純白のマカロンがもうひとつ。珍しく手袋をしていないその長い指にそっとかじりついてやる。

     「こら、そんなかわいいおイタをされては困ります。帰りづらくなってしまう」

     帰らなければいい。留学生がそう思っていることなどわかっているくせに。

     「おやすみなさい、良い夢を」

     いつもそうだ。バルバトスがこう言いながら与えてくれるキスは、いとも簡単に留学生を眠りへと堕としてしまう。袖口を握っているはずの指から力が抜けて。
     ふわぁ、と遠のく意識の中でその瞳のオリーブグリーンに魅せられる。悪魔のように美しい、だなんて比喩表現があるけれど、あれを考えた人間はきっとこの男に会ったことがあるのだろうなと、そう思った。




     『……そう、もっと求めて』

     揺らされる。奥が疼く。敏感になった身体の震えも溢れる涙も止まらない。

     『まだ、ですよ。まだ終わらない』

     満たされすぎるほど満たされているのに、まだお互いを貪るように重なる。熱い、とけてしまうと思っていても足るることのない。

     『わかりますか?あなたの奥深くが私を離さんと絡みついてくる……ああ、幸せです』

     しあわせ、わたしも、すき、もっと。声を出しているのにちゃんと言葉にならない。伝えたいのに。

     『大丈夫、聞こえていますよ。あなたのその愛らしい声も、気持ちも。この濡れた音とともにすべて……さあ…私を、中で受け止めて……』






     「っっっだぁああああああ!!!!!」

     チチチチュンチュン。魔界の朝は暗いがそれでも小鳥は鳴く。汗だくで目が覚めてあたりを見回した。ここには自分ひとりしかいない。ゆうべ去っていった男はその影もないのに、夢の感触がイヤにリアルで。
     思わずそっ、と布団をめくる。自分が女でよかったと思う瞬間である。何故かは聞かないでおいてほしい。

     ーーおはようございます、そろそろ起きましたか?

     D.D.D.に表示されるメッセージ。まさに今着信をしたわけだが、もしやどこからか見られているのではと疑ってしまう。

     ーーいま起きた。
     ーーそうですか。いい夢は見られましたでしょうか。

     にこ、と笑顔のスタンプが送られてくるのが憎たらしい。なにが想いを込めたマカロンだ、うら若き乙女にあんな夢を見せるだなんて。

     ーー今日お会いできるのも、楽しみにしていますよ。

     ポコン、と送られてきたハートいっぱいのスタンプに激おこマークをたくさん返したが、きっとまた楽しそうに笑っているに違いない。
     放課後教室まで迎えに来て、とワガママでも言ってやろうかと思ったら。
     
     ーーお昼休み、お迎えにあがります。

     だなんて。
     これでどれだけ求められてるのか分からないほど留学生だって子どもじゃない。ああもう、わかったってば、思い知らされましたよ、あの真っ白な甘ぁいおやつに。

     これはこれ、ふたりで会えるのは嬉しいけれど。たぶん午後の授業に出られなくなってルシファーに叱られるんだろうなどうしようかな、と考えて。傲慢の悪魔とマカロンひとつを天秤にかけてみたけれど、残念ながら小さなマカロンが激重だった。


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