巡る未来。「…はな?」
声を掛けても返事はない。
人工呼吸器で辛うじて息をしている。
「はな…何で…」
触れる頬はいつもと同じで温かい。
「何で…さっきまで、一緒にしゃべって…」
昼に街でランチをして。
少しだけ散歩して。
急に、倒れた。
その頬を撫でても、髪に触れても、もう動かない彼女。
「我々も手を尽くしましたが…」
病院の最奥部にある集中治療室。
「お腹の子は…?」
「・・・・」
医師は無言で首を振る。
「はな…せめて彼女だけでも…っ」
2040年ーー
医学は画期的に進歩していた。
それでも出産は命がけであることに変わりはない。
医学は進歩しても、人はやはりか弱い。
「奥様は一命を取り留めましたが…余力はあまり…」
一人娘のはぐみが産まれて10年以上。
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