【供養】与謝野兄弟初期設定『遠野物語』の馬と結婚した娘の話は何処かで聞いたことがあるのではないか。
畜生と交わるなどという愚かな行為をする者は実は少なくない。
我等はそんな愚か者から生まれ出る者なり。
ある所に一匹の雌牛がいた。
その牛は怪我をしてもう車を引けない体になっていた。牛飼いは新しい牛を迎えてその雌牛を殺そうとした。
しかし牛飼いの主はそれでは可哀想だと言って自ら養うこととした。
雌牛は牛でありながら人と同じ様に屋敷に上がり、人と同じ様に布団で眠った。
そして、主と雌牛は恋をした。
誰もが呆れ果てた。
主は『畜生道に落ちてしまう』と咎められてもやめなかった。
ある日雌牛は一匹の子牛と1人の子供を産み、死んでしまった。
1人は人の姿に牛の角をした子供。一匹は牛の体に人の顔の子牛。
主は1人の子供は角を折り育てた。一匹の子牛は生まれてすぐに殺してしまった。なぜならその子牛は立つこともできず、何かを食べることもできず、呼吸すらしていなかったから。
殺される瞬間子牛は言った。
『この国に災いが起こるだろう。』
主はこの国の国司だった。
そして、8年後その国では大飢饉が起こった。蔵に溜め込んだ米は一揆で奪われ、国司は餓死で死んだ。死の直前、子牛と子供が主の前に現れた。
『畜生と交わる愚か者には災いがおこる』
『よって件のごとし』
雌牛は豊穣の神であった。その神を穢した男に天罰を。そのために生まれたのが神の子供である件なのである。