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    Peri.

    いろいろと不馴れなので多めに見ていただけると助かります。気になったら手直しすることもあります。

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    Peri.

    ☆quiet follow

    レトクロでクロが薬で外見だけ子供になってしまった設定。何でも許せる方向け。
    ・翠風後。ナデルが最初と最後に登場します。
    ・年齢、中身そのまま。外見だけ幼くなった設定です。
    ・過去など捏造、創作している所がございます。
    ・全体的に暖かめな空気。師弟やきょうだいにある絆に重きを置いて書きました。

    #レトクロ

    渇しても盗泉の水を飲まずはじまり

     とある日、パルミラでクロードと共に過ごす約束をしていたベレト。
     ところがクロードから言伝を預かっていたナデルから「来ないでほしい」と告げられる。何故……と次第に大きくなっていく衝撃を受け、自身に問い、戸惑うベレトだったが、ナデルから直々に「それを調べてほしい」と頼まれる。聞けばナデルでさえもここ数日、彼の姿を見ていないそうだ。

    「貴方なら、あの小僧も事情を打ち明けるでしょう」
    「ふむ……」
     彼のため互いのために取った休暇だ。中身は変わってもそのために使えるのならそうしたい。何の問題もない。
     むしろ願ってもない依頼内容だが、一応聞いた。
    「報酬は?」
    「坊主の思い出話でどうだ? 上手い飯と酒もお付けしましょう」
    「 ── 乗 っ た 。 」
    「よし、交渉成立だな!」

     二人の師はにんまりと微笑みを浮かべながら、固い握手を交わした。



    ーーーー


    1、
     パルミラの彼の公(おおやけ)にされている方の部屋の前に到着する。
     ──彼には自室が複数ある、らしい。いくつあるかは知らないが少なくとももうひとつあり、そちらに一度招かれたことがある。部屋の違いをざっくりといえば、こちらは王子として在るべき姿を示す仕事部屋で、公でない方──招いてくれた部屋──は個人的な部屋であるらしく、自分も見覚えがある感じの、本でいっぱい謎でいっぱいの勉強や調合等もしてる部屋で、広さも男二人では少々狭いかもと感じた気がする。自分が広い部屋に少し慣れてしまっただけかもしれないが……あちらと違い、いつか部屋を空けないといけない心配がないと言えば──どういう意味か察せられるだろう。
     だが確か公的な部屋の隣に仮眠も出来る書斎のような部屋が備え付けられてあって、そこでも確かその光景を少々拝められたと記憶している。

     ……ナデルの話では体調を崩してる様子等は無く、その表向きの部屋で内仕事を普通にこなしているようだが、頑なに部屋に入ることを禁じているらしい。しかも数日間の話ではなく、事はナデルがたまたま収穫した話によると、いち週間を越えているのでは……? ということらしい。
    (それは確かに少し気になるし、心配だ。だが……。)
     ベレトには何となく覚えのあることだった。それは学生時代のある日のこと……と回想も良いが、要は毒薬の調合で何かあったときに似ていると感じる。もし本当にそうなら、実は困ってもいるはずだ。いや彼のことだから自分で解決できるかもしれないが、それでも……。

     意を決して扉をコンコンと手の甲を使って鳴らす。
    「……ん、どうした。誰だ?」
     しまった、何と言おう。一瞬“依頼”であることが頭をよぎってそう思ったが、特にひねることもせず普通に名を告げた。
    「えっ……本当か? 行き違いになったか…」
    「いや、ナデルから話は聞いた。だがどうしても顔を見たくなってしまって。……駄目、だろうか」
    「ううむ……そうだな…」
     わずかに悩んだ後、クロードは入室を許した。
    「──あんたならいいか。それにわざわざここまで来てくれたのを帰すのもな……」
     彼の気配が近づく。
    (……?)
     ベレトは先程から少しの違和感──元の声より意図してその声を出してるような感じ──を覚えていたが、その気配から無視出来なくなった。
     ……足音が小さい気がする。気配も。意図的に消してる感じはないし……やはり何かありそうだ。
     困っているなら力になりたい。だが彼は真っ直ぐ言ったり遠回しに言ったりするときがあったりと、これが所謂“掴み所がない”ということなのだろうが……彼のことはもう自分は結構知れてきてるはずだ。けれどやはりその地位も存在感も後ろにしっかりあるはずなのに、自分でさえ未だにそう感じるのだから不思議……、いや困ったものだとちょっとした苦労の数々を思い出し、僅かな疲労を覚えながらしみじみ思う。
     ──と、扉越しに声を掛けられた。
    「……入ったらすぐ閉めてくれよ?」
     そう用心深く念押しされた後、鍵を外した音がした。気配も遠ざかった気がする。扉から離れたのだろう。
     静かに開けて中を見たがそこには誰もいなかった。……隠れた、のかな。音に気を付け閉じると、何処からともなくベレトの脇の下を素早く潜り抜け、鍵をかける子供が現れた。
    「…………」
    「……ふぅ、やれやれだ」
    「──、ぇ?」
    (まさか……。)
     気配に気づいていなかった訳ではないが、彼の部屋に、こんな時に、子供……? と疑問に包まれていると、その子から彼のような声がした。思わず目を丸くしているとその子供が此方を振り返り、見上げて一言。
    「よっ、先生っ」
     ぱちっと片目を一瞬閉じられ、もう片方と同じ、思わず吸い寄せられるような美しい緑色の瞳が現れる。褐色の肌に少し癖毛で、片方だけに編み込まれた髪型……。
     ……間違いない。────この子はクロードだ!



    2、
    「……粗茶ですが、どうぞ」
    「あ、ああ……ありがとう」
     座って暫く待つよう言われ、わざと見た目と合わない言葉を選びながら出す姿に思わず口角がほんの僅かに上がり、眉が眉間に寄る。……可笑しいと感じた気持ちを抑えるためだ。
     冷たく飲みやすい類の茶が振る舞われる。あちらにはないこちらのお茶も、なかなか恋しくなる時があるんだよな……。持ち手のない種の器を持ち、器と茶を視覚や嗅覚で堪能してから、口内へすーっと運ぶ。
    「……ふぅ…」
     言うとお茶を用意するくらい出来ると機嫌を損ねそうだが、なかなか美味しい。優しい苦みのなかにある甘さが良い。先程の驚きやここまでの疲れも和らぎそうだ。
    「…せんせー、もっと警戒心を持った方がいいぞー」
    「ん? 何も入れてないだろう、今日は。それくらい判る。……美味しいよ」
    「……そーですか。恐れ入りました」
     純粋な何かと幸せそうな笑みを向けられ、気恥ずかしくなったのをお茶で冷まそう誤魔化そうとするクロード。それは一応の功を成し、冷静に味を確かめるに至ることも出来た。
    (……うん、我ながらいい感じだ。一応出す前に確認したけど。)

    「……で、大方予想はついてるが──どうしてそうなった?」
     クロードであると分かれば“どうして再びその髪型に…?”とかはベレトにとって今は些事であり、状況を受け入れてさっそく原因を突いた。
    「あっはは~……、まあ……その通りでなー。
     ───調合、失敗した」
     てへっと自分の失敗を認める笑みを見せる。その笑顔に学生時代の彼を彷彿とさせたが、今はもっと小さく、あどけなく……。
     ──と、まじまじと見つめてしまいそうになりそうなところで目を閉じ、頭を振って打ち消した。
    「……まったく。幼くなった以外に、何かよくない影響とかは?」
    「ないない。それだけが目的の薬だからな。ただちょっと割合を間違えたりして、瞬間的な効果の薬なんだが、長期化しちまった。それだけだよ」
    「そうか…」
     何もなくてよかった。けど───。
    「……何か言いたそうだから説明するが、元々少ない量だけど一応成功した薬だったんだ。けどだいぶ珍しいものを材料にして作ったから、もう少し簡単なもので出来ないかと思ったんだよ。割合もそうだけど、一番はそこだろうな」
    「なるほど。……で、自分で実験して引きこもったのか」
    「いや、俺ももうそこまで向こう見ずじゃないって。書いてあることを信じるか、何か別の方法で成果を確かめるさ。………まあ魔が差して飲んじまったのには変わりないけど…」
     ──ああなんだ、そうなんだ。自分で実験したというわけではないんだな…………ん?
    「ま?」
    「……不っっっ味いんだよ、元のがさ。香りも最悪。だから簡単には使えないし、その辺りの改善もしたいと思っちまって。ほらこれ、相手だけじゃなくて自分達側にも使えそうだろ?」
     にっこりと何か含みをもって微笑むクロード。さらっと言われたが、でも確かに……と顎に手を置いて首をほんの少し傾ける。
     自分などは今あるもので戦おうと考えるけど、彼はまさしくこちらの予想を超える手札を日頃からこうして増やし、幅を広げ、その手札を交えながら考える。一体どちらが有利であるかは言うまでもない。
     自分はそれを辛い過去からや日頃からの賜物と称賛しておくが、危険視するのも分かる。悪人が同じような物を作っていたら。横流ししていたら……。
     だが彼は、そういう人物ではない。仮に盗まれでもしたら、見つかって変な噂を流されたりでもしたら、大変なことにはなるだろうが……。正直盗みに入れたとして、初見でどれがどのような効果を持たらすかなど、一目で分かるものではない。
    「……つまり、品質改良を重ねていくうちに、使用する際の量分を飲んでしまっていた、と?」
    「………」
     ……沈黙は肯定を意味する、という言葉通りに取って良いだろう。その沈黙と笑顔だが何とも言えなさそうな表情を見るに……いや待て、それ以上に飲んでそうだ。
     やっぱり掴み所がないというか何と言うか……………彼は一体何をやっているんだ……。
     何とかと何とかは紙一重と言う。けれどまあ彼はそれとは違って、飄々という風に基づく言葉が合うだろう。
    (──しかしそういった者のおかげで、世の中、何かは築かれ、拓かれて、常識化にまで至っているものもあるらしいし……。)

     ベレトは前にとある事でパルミラに招待された時のことを思い返していた。
     その時は彼がずっと自分の傍らに居て、クロードからも傍を離れないよう言われ、そうしていた。事が終わると自室を案内され、彼から興味深い話を聞けたり、向こうの開かれた書庫で一緒に過ごしたり等して知識や見聞を深めていた。ベレトとしては「ようやく彼の家族に会えるかもしれない…!」と多くの事を除けば密かにそれを楽しみにしていた。
     が、それはあまり叶わず、しかし思わぬ所で思わぬ時に学びというものは得られるもので。
     特に地図というものがどういった経緯で作られたかなど考えた事の無かったベレトにとって、それは興味深く。非常に壮大な規模での話で。常識に基づくなどしていない、かなりの熱意が無ければ難しい事だろうと思わされた。
     ──知らないから出来、知ったから出来、知っているから、投げ出さず出来たのだろうか?
     思わず当時の人たちに思いを馳せるなど、状況と共に考えたりもした。
     それくらいしないと何かを変え、偉業や功績を残すということは不可能であるのかもしれないと。そして今まさに自分の目の前にいる彼は、恐らくそういう類いの者なのだろう……とその瞳を煌めかせながら語る姿に思った。
     彼はパルミラの歴史も簡単に教えてくれた。自分が聞いて良いものなのかと思ったが、
    「──俺達が目指してるものは、何だ?」
     と言われたら、理解や納得をする他なかった。何故なら──戦が終わり、見たい景色を見るため日夜懸命に働きかけ、少しずつ変化しつつあるこの世界の──彼がその舵取り役兼、航海士兼、船長であるのだから。


    「……やれやれ。まあいい、わかった。
     それで……納得のいくものにはなったのか?」
    「いいや残念ながら。薬の味を変えるのって料理とかと違って難しいんだよなあ~……」
     効果を優先したいし……、と彼は腕を組んで苦戦している気持ちを乗せて唸る。
    「……しかし、何でもこの部屋に揃ってる訳じゃなさそうだが、今までどうしてたんだ?」
    「そりゃあ部屋から出て済ませてたのさ。夜中にこう、こっそりと……」
    「………」
     さすがにちょっとだけ呆れそうになる。王族なのに小僧とか坊主とか何で言われてるか、改めて今ようやく理解した気がする。「小さくなる、それだけの薬」と言っていたが、実際にちょろちょろと動いて見せる様子から、子になった事での影響が少し出てそうな気がする。……開き直ってるか、気分が乗っているだけかもしれないが。
     その悪戯っぽい笑みはあまり皆にしてはいけないぞと注意したくなる。
    「──何にせよ、それじゃあ昼間は不便だったろう。何かあれば代わりに済ませてくるが」
    「え、でもあんたは客で……」
    「……確かに君からすれば客だろうけど、こんな状態の君を放って“客人”で居られるわけないだろう」
    「けど……こんな天気のいい日に、勿体ないぞ? 案内が必要なら他の誰かに任せることも──」
    「クロード」
     優しさと王族の両方を併せ持つ笑顔をつくってまだ続けようとするから、遮った。静かに首を横に振った後、ベレトは口を開く。
    「……確かに天気のいい日だ。だから、今日を共に過ごす日に選んだのだろう? それがこうなっただけだ。君のそばであることは、何にも変わらない」
    「…………、…………まいったな、こりゃぁ……」
     ぐうの音もでない、とクロードは頬を掻いてベレトの心意気を受け入れた。



    3、
    「さーて、昼間に得られた貴重な時間! 何を頼もうかねえ~」
     その見た目だけで多くのものを魅了出来そうな子が、目を輝かせ、裏で悪さをしてる欲深い存在のように、フフフ……と邪悪な笑みで此方を見ている。
     ……酷い組み合わせだ。教育者または指導者の顔が見てみたい。きっと悪魔みたいな奴なのだろう。頭痛がしてきそうだ。中身がそのままじゃなかったら“完全に育て方を間違えている、正すなら今のうちだ”と促すところだ。
    「……出来ることなら何でも。けどその前に──」
     苦笑しながら長方形の豪華な長椅子(ソファー)からベレトは立ち上がる。これと合わせた少し低めの長方形の机を一人用のまた豪華な作りの椅子と、同じくその長椅子で囲って、というよくある形で向かい合って座っていたが、ベレトはクロードの隣に移動し座り直す。
    「……ん? なんだよ、ベレト」
    「うん」
     見下ろす形になりながらになるが、当たり障らぬことを聞きたいなと思った。
    「その……」
     ──じーーーっ……。
    「……~~っ、待った! ベレト、ちょっと近くないか?」
    「え?」
     言われて自分が少し前屈みになっていることに気付く。いつも以上にベレトはクロードを見つめてしまっていた。
     小さくなってしまったクロードからするとベレトに限らず、男女問わず建物なども含め、自身より大きなもの全て、普段よりそこそこの迫力が増していた。
    「あ……すまない。力になりたいのは本当なんだ。けど……」
     それとは別に……こんなの聞いてないと思ってしまうほど、驚くほどに愛らしいと思うのと、たぶんちょっと純粋に、彼のこれくらいの歳の姿を見られたことへの感動をしている自分がいる。しかし可愛らしいだけではなくその瞳を始めとした美しさも、彼はこの歳からどこか兼ね揃えていて、見方によっては曰く付きの宝石のように妖しく、人を惑わすには十分とまで言えそうで──。

    (……。)
     ちら、ともう一度小さくなってしまったきょうだいを見る。
     ──ちょうど良い大きさの弓など無さそうだ。というより身体の作り的にまだ戦場になんて出せない。それどころか強い風でも吹いたら飛ばされてしまうんじゃないか? 簡単に拐われてしまう可能性も──。

     ……これは少々、一人で行動させるのは危険なように思えた。そこを自覚しての引きこもりや夜中に行動を起こしていたわけではないだろうが、いろいろな意味でそうしていてくれて良かったとさえ思う。
    (…………。)
     ……いったい何人が彼の幼い頃を知っているのだろう。
     ……彼の両親がこの厄をも持たらすかも知れない危険な魅力に気付かないはずはない。

     聞いて良いものか迷う未知に揺さぶられ、惹かれる。
     後者を聞かれても困るだろう前者で考えるとして、例えばフォドラで彼を見たことがあるのは、クロードの母と繋がりがありそうなリーガン家の人やジュディットさんとか、それくらいじゃないだろうか。……聞いてみよう。
    「ん? まあそうだな。物心つく前のことは改めて聞いてみないとさすがに分からんが、俺がフォドラに来たのは士官学校に入る1年くらい前だったから、俺を知るやつはかなり限られてたし、何をしても疑わしいと思われるのも仕方のない事だったのさ」
     と、過去に打ち明けてくれたことに付け足して説明される。
    「そうか。じゃあずっと、こっちで生きてきたんだな…」
    「そういうこと。承知の上でリーガン家を利用したし、故郷が俺をこういう奴に鍛え上げてくれたってこと」
    「…そう、だよな」
    「……? なんだよ、改まって。──んじゃ、茶も菓子も遠慮無く味わってくれな」
     よっと、とベレトの視界から抜け出すように長椅子から降りて、クロードは書類等が積まれた机に向かう。座っているとき床に足がついてなかった。それが分かる歩幅や背丈に、思わず息が漏れる。

    (……実際の、あれくらいの歳の頃も小さかったのだろうか? あれくらいの背格好だったのだろうか?)
     いいやそれよりも、味方は居たのだろうか。いや居ないから、神頼みなどに期待しなくなったのだろう。前に言っていた。だから彼は──自分を疑う自分を、ある意味信じている。
     実はいつも少し、此方での友人など親しい関係にある人達の話に身構えていたのだが…………ここまで彼からそういった話が浮上しない、気を使ってる感じもなく一切聞かないとなると、そういうことなのかなとやるせなさや切なさを感じてくる。
    (自分も……“寂しい”とかがよく分からなかっただけで…………。)
     遠くの光景に何故か時折惹かれるものを覚えて、よくぼんやりと眺めていた時期があった。けれどほとんど、自然の風景を見るのと同じような感覚で。

     “───留めていただけ。”

     ……。ああ、そこまでに留めていただけ。
     傷付かないように。皆にも備わっている人間の自然な機能によって。あるいはもう片方の機能によって。……両方かもしれない。
     冷たく、今だから分かることを見抜き突き付ける自身にベレトは肯定する。
     そうして眺めていたある時、ジェラルトに不器用ながらも謝られてからそう眺めることも無くなったのだが……こう明暗の強い賑やかな国や環境に、語られていた辛い日々に彼の性格ともなると……。何か不快なことを言われても長く留まることなく各地を巡っていた自分と比べると、非常にそうすること──景色を眺めるのと同じような感覚で他者を見る──も困難で、逃げ場も限られていて不要な傷を心にも負う日々だったことだろう。

    「…………」
    (……そんな彼の、何かになれているといいのだが。)

     学校生活を通じて生まれた呼び名、それには絶対に在り続けたいし、今更それから外れるなんて出来ない。……嫌だ。絶対に。
     彼が出してくれた器を両手で包み、茶を眺めながら自分の気持ちを確めて深く頷く。それを一気に飲み干し立ち上がって、彼の傍に向かう。

    「クロード」
    「おう、なんだ?」
     書面に落としていた真面目で整った顔を一瞬で消し、パッと身内にする柔らかい表情を向けられる。
    「聞き忘れていたが、効果はいつ切れそうなんだ?」
    「んー、それが分かれば苦労しないんだが……薬といってもこれだけの効果はもはや悪い薬……毒だしなぁ」
    「解毒薬は作ったんだろう?」
    「ああ。けどちょっと不安でな。当然作ったら飲むだろ? んでこう続いてるもんだから、もう一回飲むか作り直すかしようと思ったんだが、丁度そのときに先生が来たんだよな」
    「そうだったのか。……じゃあ君が治るまで、傍にいるよ」
    「…ぇ」
    「それと、一緒に材料を買いに行かないか?」
    「えっ?」
    「察するに、ここにあったものか、誰かに頼んで仕入れてもらった材料で作ったんだろう? 本当に君の作り方に問題があったのか、材料のせいなのか、はっきりさせるには片方をきっちりと解決するのが良いと思うんだが、どうだろう?」
    「……うん、いいかもしれないな。作るのは俺の癖が混じったりして自分では気付けないかもしれんが、自分の目で確かめた材料を調達出来るなら、それに越したことはない。……ちょっと着替えてくる」

    **

    「待たせたな」
     声を掛けられ、彼を見る。
    「───」
     そのままの格好──子供の頃に着ていたものだろうか?──でも問題ない気がしたが、より皆に溶け込める……いやどうだろう? そういう格好をして彼は現れた。
     ──だが、とても似合っている。
    「どうだ、なかなかだろ。これくらいはお手の物ってな」
    「ああ……驚いた。別人だなほとんど」
     髪型を変えただけで彼はかなり雰囲気が変わるが、黒以外は白や灰の目立つ色はほとんど使われていない、彼が選ばなさそうな服装にちょっとこちらの布──そのなかでも地味目で落ち着いた──を巻いたりして取り入れてるだけの、遊びの少ない大人しい印象の、知性を感じさせる子供という風な感じに彼は仕上げてきた。
     ……それはそれで若干浮いてるというか、味のあるどこかからの流れ者や大切にされてる坊や感が増したと言える。けれど、まず、失礼だがなによりも……。
    「……うん。かわいい、な」
     笑顔で頷き、言ってやった。元々そういう作りなのかもしれないが、若干服の大きさが合っておらず……クロードの方が小さい。
    「ちょ、何処からそんな感想が出るんだよ。…からかってるのか? 品があるとか大人しいとか言ってくれよ~」
     何となく察したクロードは袖を折って捲ったり、靴のかかとを踏むなど思い付くことを試していく。
    「ふふ、すまない。そういう格好も似合うんだと思って。……良いと思う。何か参考にしてるのか?」
    「非戦闘員の調合士見習い」
    「あ、あぁ……なるほ、ど……?」
     ……今更だが、その見た目と合わない流暢さに少し面食らう。
    「いや分かってないだろ。そっちの道の商人の格好でもあるんだ。意外と動きやすいんだぜ、これ」
     と、その場で軽く床を蹴って宙返りして見せた。安定した着地に内心ほっとする。
     ……見た目は子供だから、ちょっとその行動力にハラハラしてしまう。そんな自分に“要らない心配をしているぞ”と忠告する。
     そして商人と聞いて、カタコトした喋りの商人の格好に少し似ているかも……と思った。当然あの彼はそんな特殊な特技を有していない……と思うが、不思議と活発なことにも適した格好な気がする。
     おそらく彼用かまたはリーガン家の特注なのであろう学生服も、ちょっと見方を変えれば何かの研究者や現地に向かい調査を行う者のような、そんな内にも外にも適した隙がありそうで無い感じの絶妙な格好だったが、それに近い印象がある。
     下半身は彼の学生の頃のゆったりとした輪郭のもので、丈は膝より下でくるぶしより少し上辺りまでの、履き物と靴の間に褐色の肌が見えていて、確かに身軽そうな印象を受ける。
    「んで仕上げにこれだ」
     そう言ってお洒落のためだけの目の箇所になにも入ってない眼鏡をかける。
    「…………」
     似合っている。彼だと分かる者はきっといないだろう。
     だが、ただの眼鏡ではなく首に掛けられるようになっている洒落たもので、急に個性が足されたと感じた。決して悪くないのだが。
    「……うーん、とても似合ってるけど…」
     首を捻っていると、「じゃあこっちは?」と今度は目の箇所に暗い色の入ったものや鮮やかな色の入ったものをかけるが、横に首を振っておいた。同じく首に掛けられる作りで、正直一番良いかもしれないと思ったが、目的は似合うかどうかじゃない。うまく溶け込んで買い物が出来るかどうかだ。滞りなく買い物さえできれば問題ないから、本当に正直なことを言えば、この一番似合ってると思われる姿の彼と出掛けたいが……。
     とても磨かれている格好をして印象に残ったり目立つのは、目的とは残念ながら合わない。それに慣れない格好であまりごちゃごちゃとしていたら紛失問題も出てくると思う。壊れるのも勿体ない。
     この格好に何か付け加えるなら帽子かな……と自分も考えてみたが、何となくそれは制服や正装を正しく着たときのようになり、完成され過ぎて逆に目立つと思った。
     どれも目の保養になるためこちらとしては全く問題ないのだが…………惜しい。そして難しいものだ。

    「そうか、じゃあ外して完成だな」
    「……自分も着替えた方がいいかな」
    「いや、先生はそのままで頼む」
    「え、でも目立つと思うが……」
     我ながら全身黒い格好の、此方ではあまり見掛けない……少し暑い、面白味もないいつもの姿だ。
    「先生は人を欺くとか積極的にはしないもんなー。
     ……いいか先生、俺がこの格好を選んだのは────俺がガキにしては賢すぎちまうからだ!」
    「…………間違いではないな」
    「有難う。でも否定してくれていいんだぜ。……続きを聞いてくれ」
    「ああ」
    「賢くても違和感のない子供……つまり、子飼いだよ。小姓だよ」
    「子飼い……小姓……?」
    「ああ! ツィリルのような優秀な後輩を作った先生なら、これで行けるって!」
    「………………まあ。でも……一人で来たのを知ってる人はいるし……」
    「じゃあ奉公人か迷子ってことで」
    「急に雑になったな……」
     “んふふー♪”と今の返しが良かったのか自覚ありな様子でこちらに笑顔を見せたあと、クロードは思案して付け足す。
    「おつかい中の、ってことでさ。
     でも商人達や街の奴等は知らないだろ? ここにいる連中とか見張りくらいで」
    「確かにそうだな」
     その全体的に落ち着いた色味の格好──ベレトの格好に使われている色層に近い、合わせたもの──を選んだのはそういうわけだったのかとようやく理解できたが……。しゃがんで彼と同じくらいの目線で、少し口元を緩ませながら話しかける。
    「……だったら君も、もう少し、子供らしい言動を心掛けてくれないと、な?」
    「うぐっ……。だ、だからこの格好と設定なんだって。……分かるだろ?」
    (…………。)
     ──近年益々、王族らしく気品や風格、厳格さ紳士さにも拍車がかかってきてた、自分の魅せ方も計算し利用する、眩しくて格好の良い、覚悟も決まって心得ている、わきまえている二十代半ば~後半になろうとしている、外見年齢一桁歳くらいの男児……。
     そう思いながらじっと見ていると、それが筒抜けだったのか、顔を若干赤らめながら眉間にしわを思いっきり寄せて、何か言いたそうなのをこらえている感じで、頬こそ膨らんでいないがそのように見つめ返される。
    (これ以上は厳しそうだな……。)
     若くて活発な動物だったら唸っているだろうし、今頃飛び掛かられているだろう。例えそうされても、彼であれば自分は笑って、喜んで受け止めるが。
    「……なら、包帯を少し巻くとか、どうだ?」
     こうして格好と軽く設定を決めたのだが……。



    4、
    「……凄い人混みだな」
     予想以上の人混みに少し気圧される。打ち合わせもそこそこに二人は賑わう商売通りに出たのだが、早速はぐれてしまわないかという心配が二人に出て、早くもこの策を実行しなければならないか、と顔を見合わせ苦笑し合った。

     ……それは変に装わずに、けれど「らしく」あること。それを楽しむこと。
     ベレトがやたらいっぱい話して対応するとか、クロードが澄ました大人しい子でいるとか、そういうどちらかの、どちらとも、慣れていないことを頑張る策は全て流れ去ったのであった。

    「……お。ベレト、あの店行くぞ」
    「わかった」
     ベレトには何が要るのか、どういう店が良いのか分からない。とにかくクロードに従って彼の助けに勤める姿勢で付き添う。
     ……と、ベレトの前を歩いていたクロードが店の少し前で足を止めた。
    「? ……どうした?」
    「…………み…」
    「み?」
     身体を少し震わせたあと、彼は項垂れながらその続きを教えてくれた。

    「………………見えん……」

     ……。
     ベレトは目を丸くした。そして向かおうとしていた店へ思わず目をやる。

     商売通り──二人がそう呼ぶ場所はその呼び名のとおり、様々な金銭の生じるやり取りが許された通りで、屋台のように店を出している者も居れば、建物内に店を構えている者、地面に敷物を引いてその上に商品を並べて取引を行っている者も居る。
     こちらの気質もあって混沌としており定期的に混乱等が生じそう……等々の印象を受けるだろうが、誰でも気軽に店を出せる訳ではなく許可が居る。その許可が降りた者のみが通りで商いをしており、加えて定期的に調査を行うようしているため、一応の秩序は保たれている。
     一部の者達しか知らないことだが、調査の仕方は同じものだけでなく、実に様々な方法で行われている。
     いくつかそういった通りがあり、そのなかでも二人が訪れたところはクロードが力を入れているところであるため───……何故そこを選んだのか等のこれ以上の説明は野暮というものだろう。
     黒衣を纏った二人が向かおうとしていた店は屋台型だった。遠くからだと分かりにくいものだが、屋台型の店の特徴はごく一般的なものと同じで、商品を机や台座、店員側からだと戸棚のような作りになっているものの上なんかに置かれている。
     それらが丁度クロードの背丈と同じくらいの高さだったようだ。

     ……ベレトはしゃがみ込んで──

    「…!? うわわ、っ、ちょ、先生……?!」

    「……これなら見えるだろう?」

     ──クロードを抱き上げた。

     大きな花束をその腕一本だけで持たねばならない時のように、片方の腕の上に座らせ、自身に寄り掛かれるような形で位置を固定する。クロードはベレトによって、ベレトより少し低いか同じくらいの高さの目線になることが可能となった。
    「────」
     無論、肩に乗せたりなどすればそれ以上も可能だ。
     そしてそのまま店に歩を進める。一連の流れを見ていた店主から歓迎の挨拶を受け、ベレトは会釈する。
    「──ほら、どれだ?」
    「……え、あ、ああ……そうだな……」
     目を見開いて周囲を見渡していたクロードは取り繕うように返事をして、それから品を見定め始めるのだった。


     ──結局、こういうときに大事なのは。どれだけ相手の力になりたいかという気持ちと、それに伴った能力がそのとき備わっているかである。そしてそれを行えるだけの行動力や実行力、勇気や決断力等も必要だろう。
     そのどれかが欠けていれば、何かが叶わない…………。

     ──きっと、それだけのことである。




     二人は途中から手を繋いでであったり、やはりクロードの背丈の問題で商品が見えないこともあって、抱き上げた状態のまま商売通りを歩いたりもした。その甲斐あって目当てのものを全て購入出来た二人は、近くの広場の階段で小休憩を取ることにした。

     広場では皆各々に過ごしている。自分達と同じように休憩を取っているもの、芸を披露しているもの、遊んでいる子供や大人達、等々……。
    「……ふう。いつもの“通り”なのに、やけに広く感じたなあ」
    「それは君が小さくなったせいだろう。……頑張ったな」
    「おいおい、ホントのガキ扱いはやめてくれよ? まあ、いろんなものが大きく感じて……あんたが居てくれて良かったと、実際思ったけどな。礼を言うよ」
     二人で疲労回復に良い類いの果物を飲みやすく絞り、すり潰したもので自身を労る。
     甘くて爽やかな味と体内に冷たいものが行き渡るのを感じ、すっきりとした気分になる。通る風も心地よくて、まったりとそれら全てを味わう。
     ちょっと砂ぼこりが混じるのがたまにキズだが、それもまたここでの日常。

    (……それを“祓う”ためにも布を多めに用いた服装をするようになったのが、彼らの服装の始まり……なのかもしれないな……。)
     などと、巻いていた布で砂をはらい合う仲睦まじい家族のやり取りを見て、ベレトは勝手に、ぼんやりとそう思った。

    「しかし……いろいろ安く手に入ったし、案外子供に返るのも悪くないかもしれないなぁ~?」
    「……こら、あまり調子に乗らないっ」
     邪悪な笑みで小のつく悪党のようなことを言うものだから、くすりと笑ってこつんと彼の頭上を、扉を叩くのと同じようにして手の甲で軽く小突こうとしたが──ぽふ、というような、頭に手を置くだけの気の抜けたものになってしまった。力加減を大きく誤ったのと、彼の髪のせいである。
    「……」
    「…なんだ、いまの。──って、おわっ、何すんだよせんせー!」
     ……ふわふわしている。いや、もふもふ? わふわふ? ──いいややっぱり、ふわふわ、だ。
     何となくまだ生まれて間もないような、小さな動物を連想させた。
    (……鳥? 猫? 兎? 犬? いや……小鹿だろうか?)
     何かを見出だしたベレトは隣に座っていたクロードの前にしゃがみ込み、興味津々で彼の頭を撫でる。
     柔らかい触り心地に胸がきゅんとなり、ついついそのまま続けてしまう。彼の笑顔も良い。いつもその年相応の眩しさが勝っている彼の笑顔が、今日はとてもきめ細やかな砂糖のように繊細で、柔らかくて尊く、暖かいもののように思えた。
     その少し赤く染まったまあるい頬にも目が行き、思わずちょんちょんとつついたり、そっと撫でてしまう。……滑らかで、柔らかくて、一体なんだろうか? ずっと触れていたい心地になる。
    「……なんだ、もう頭はおしまいか?」
     こちらの目を見ながら少しだけ添えてる手の方にクロードは頭を傾ける。……やっぱり、愛らしい。だが商売通りで自分がどう見えているのか、理解もしたのだろう。
    (……やはり悪い子だと思う。少しだけ。)
     けれどそう頼まれてしまっては断れない。彼のふわふわとしたくせ毛を堪能しながら、頭や耳の辺り、顔の輪郭に沿って頬などもまた撫で、もう少しだけこの幸せな、思わず笑みがこぼれてしまう時間を満喫する。
     ……特別子供が好きとかはなかったと思うが、彼の喜ぶ姿をもっと見たいと思ってしまう。正確には何に対してなのか掴みかねてるけど、何か今日、とてつもなく頑張ったと思う彼を褒め称えたいと思ってしまう気持ちが止められない。
     ……その答えは、たぶんすぐに分かるはずだ。ベレトはそう直感した。

    「……ふふ。さて、そろそろ行こうか」
    「ああ。目立つ前にとっとと帰って、薬作って風呂入って、飯食って寝よう」
    「……子供らしい言動」
    「おっと、すまんすまん」



    5、
    「いやあ、悪いなベレト」
    「全然。それよりも、足は平気か?」
    「ああ。……恥ずかしいとこ見せちまったな」

     帰路についていた頃、クロードは小さいながらも人を器用にかわしながら歩いていたのだが、立ち飲み屋の浮かれた大男に足元なぞ見えてるはずもなく、ぶつかられてしまった。繋いでいた手もほどけて思わず尻餅をついたクロードに大男は低い声音を放つ。
    「……おい、どこ見て歩いてんだ」
     本当の幼子なら震え上がってしまうだろう。不快感と迫力のある暴言がベレトの鼓膜を揺らす。
    「──ばか、それを言うならお前だよ」「…後ろに確かな目の付いてないやつが、何を抜かしてるんだ?」
    「な、お前らは俺の味方しろよ!」
    「‥‥相手をよく見るんだな」「じゃあな、節穴野郎」
     ベレトは身構えてすぐに割って入ろうと思ったが、相席していただけらしい男たちはベレトを見てそれだけ言い残して立ち去り、周りの人混みに紛れていった。近くに居た者達もそそくさと移動し、いつの間にか足を止めてこちらを見ている者達の中に加わる。
     近くを歩いていた人達にも囲まれ、お陰で目立つことになりはしたが、その髪色の者が何者であるかを一般の者達は知らずとも、情報に敏感な商売通りの商人達が知らないはずもなく……。
     大男はベレトとその“お付きの子”がいる間、商売通りと王城付近を出入り禁止になり、謝罪も受けた。
    (──……いや、周りの “““ 男が謝るまで許さない ””” という圧が凄かった。本当に。)
     それで少しだけ理解できた。今回は自分達の有難い方にそれが働いたが……そうじゃないとき、きっと辛い風がしばらく吹き続けることになるのだろう、と。
     ──調和を乱し、不和を生むとはそういうことらしい。
    「……」
     そう思ったのは自分だけではなくクロードも同じだったようで、彼は大男に何か言いたげな様子を僅かに見せたが謝られた際に、
    「……いいよ。けどおっちゃん、もう少し鍛えろよな!」
     そちらのことは口にせず、大男も含めて皆を愉快な渦に巻き込むようなことを子供であることを利用して、容赦なく言い放つことでその場を納めた。大男はまだそういう歳じゃなかったらしいが「そういうところを鍛えろってことだよ!」とさっきの相席していたどちらかの者の野次が飛んで、大男は沈黙し、騒動も終わりを迎えた。


     この国の王族として恥じ、謝罪するクロードにベレトは言葉を返す。
    「そんなことはない。こっちだって同じだ。だからこれはよくある日常風景……。そうだろう?」
    「……っ。ベレト、そうは言ってもだな……」
     クロードは上手い言葉が出そうで出て来なかった。
     あまり嬉しい類いの気遣いではなかったのだが、ベレトは今や王という限られた者にしか座れない唯一の席でも対等に話せる相手で……。言ってしまえば、自分がそこへ推薦し、誘導するようして押し上げた相手である。

     目指す景色のため、対等に、一緒に……とはいえ。
      ───少なくとも現段階では、この人より出来ていなければ。
     手本となっていなければ。
     同じではいけない。先を行っていなければ。
      ───縁もなかった知らない世界に、踏み出してくれたのだから。

     巻き込んだのは自分だという、そこで生まれた者が自覚して持つ品格が、矜持が、道徳観や倫理観が、飄々としているとはいえ彼にだって根強く渦巻いて存在していた。
     もっと案内するように、手を引きたかった。安心して欲しいと……無様な姿を晒すにはまだ早いと思ったのだ。
     でもそれをこの人にぶつけるのはおかしい。結局力及ばずな自分が気に食わないだけなのだから。
    「それに、最初からこうしていればよかったんだ。どこか危なっかしいとずっと思っていたし……」

     ぶつかったことで深酒を決め込んでいたと思われる大男は平衡感覚を失い、尻餅をついたクロードの足を思い切り踏んでいた。一瞬苦痛に歪む顔。それらを視認出来ないほどベレトは落ちぶれていないため、一連の出来事が終わった後すぐさま駆け寄り、治癒を施そうとしたが、「さすがに商売通りで行うのは……」とクロードに止められた。人混みのなかには薬を扱う商いの者も居たためである。
     その深い機転や配慮にベレトは思わず彼を抱き上げて、手短に周りの者達に感謝を告げて速足で通りを抜けた。
     ……そのため治癒の魔法をかけるのが少し遅くなってしまった。当然治せたけれど、靴から出された足は熱を持って腫れており、少し血に染まっていた。しゃがんだベレトの肩や腕に掴まりながらクロード本人も少し「あらら…」と驚いていたが、こうなったのも無理はない。大男は全身縦にも横にも少々余分に肥大していたのだから。

     そこで大事をとって、ベレトがクロードを背負って帰るという形になった。
    「……ずっと引きこもってたからかね、体が鈍っちまってたみたいだ。またいつか、先生からのご指導、願いたいもんだねえ」
    「何時でも大歓迎だ。
     けど……さっきのは。慣れない格好をして、いつもより君の目線が低かったからだろう。いつもの景色が、いつもと違うものに映るのも、無理はない」
     一言一句、丁寧に言う。
    「そしてそのために自分がついてたんだ。なのに用心を怠った。だから君を背負うくらい、させてほしい」
     全くもってそこは自分に腹が立つ。けれど……。
    「……それに、こんな失態からの形で、思っていいことじゃないけれど」
     ベレトは立ち止まって、クロードが背からずり落ちないように位置を直して、再び歩き出す。
    「比喩でもなく、君を背負うなんてきょうだいらしいことが出来て、少し嬉しく思ってるところなんだ。たぶんこのまま、フォドラに行くことだって出来る。いや、もっと先にだって……」
     パルミラから真っ直ぐフォドラの先となると──ブリギットか。王となった彼女に連れている子の真実を話したら、きっと目を丸くするだろう。いやそのまえに、金鹿の皆なら彼に気付くんじゃないだろうか。
    「……きっと楽しい旅になるだろうな」
     音符を飛ばすような想像の世界から引き返し、彼に声をかける。
    「だからそんな、申し訳なさそうにする必要はない。体が戻るまでの間、君はいろいろ気にしないでいいんだぞ」
     少し言葉足らずになっている気がするが、それが今の素直な気持ちだった。

     商売通りから出ると商売以外の仕事をするものや育児や家事をしているもの、休憩したり景色を楽しむ者なども見かけるようになる。あちらとはまた異なる仕事や生活から出る賑わいと空気が流れているのを感じる。
     ……洗濯物を取り込む人、親の目の届く範囲で遊ぶ子供、鍛練をする者、植物に水をやる人、掃除をしている者、猫などの動物と戯れている者、絵を描くもの、楽器を奏でる者、何処かへ向かう者、何処かから帰ってきた人……等々。
     自分の事が分かる者からは挨拶やお辞儀をされた。……あちらほど騒がれないにしろ、有名というものにはなかなか慣れない。

     いつの間にか日は沈む頃になっていて、日が当たる部分には美しい茜色が。そうでないところには青色や薄紫色が混ざったような、夜を思わせる色の影が景色を彩っている。風も少し、日中より下がる気温に伴って、沢山歩いた自分達には心地のよいものになっていく。
    「…………」
     ……静かだ。
     少し……子供扱い? しすぎてしまったかな、と暫く歩いた辺りで思っていた時だった。

    「──? ……クロード?」
    「……」
    「……眠いのか?」
    「…………そんなとこ」
     ぎゅっと。あまりちゃんとは回されてなかった腕をしっかり回され、重さが増したと同時に、彼が先程より自分に密着したのを感じた。位置や感覚を保ち、体重をかけないようしてくれてる気はしてたが、そうするのをやめたらしい。
    「……道は覚えてる。着いたら知らせる」
    「……ん」
     返事を聞いて歩き出したあと、…すん、と彼の鼻をすする音が何度か聞こえて…………それが耳に残る。
     まさかと思ったが、触れずにそのまま彼の脚となって城……というより、遠目から見ると屋根に当たる部分が曲線掛かっており、宮殿と言った方が正しいのかもしれないそこにただ粛々と向かう、のだと思った。

    「…………なあベレト」
    「ん?」
    「どうしてあんたは、こんなに、俺に良くしてくれるんだ?」
     再び訪れた沈黙のあと、時折繰り出される余分なものが削がれた声音で問われる。今では互いに遠く離れて過ごしているとはいえ、その直な問い掛け方には覚えがあった。
     だがどちらかと言えばこういった内容は実践で試し、測る彼にしては珍しい問いだと思ったベレトは、彼に合わせて改めて考えをまとめてみる。すぐ出てくる答えはベレトにとっては当たり前のことなのだが、しかし彼にとってはどう伝わるか分からない。綺麗事のように少々安く伝わってしまう気がして、それは避けたかった。
    「……そうだな。王になるなんて、そんな予定も予測も、全くして無かったしな」
    「ははは……」
     ふふ……、とベレトは釣られて穏やかに。クロードはにっこり顔で、しかし何か非の自覚がある様子で笑う。
    「……覚えているか、今も思ってくれてるか分からないが、前に『無欲なところが魅力』と言ってくれただろう。……そうではなくなった、というだけだ」
    「…………」
    「……無欲で無くなったら…………関係解消、だろうか」
    「そんな、待ってくれとんでもないっ。……勘弁してくれ」
    「……良かった」
     本当に。心の底から。
     言ってから自分はずいぶん素朴ながらも緊張しながら聞いていたのだと気付く。そして他の答えだった場合、自分にとってかなり負担となる危険な内容だったと、首筋を変な汗がつたう。
     きょうだいという関係からも、景色を共に築き、一緒に見る相手からも外れたくはない。……ただし、彼の見たい景色のために自分という存在はならないと言うなら、話は別だ。
    「……そんな日はきっと来ない──いや、来させないから安心してくれ。
     ──大体な、想像の中だからって俺をそんな軽薄な、何処にでも居そうな野郎にしないでくれよ」
     ばつが悪そうに、しかし少々立腹し拗ねた様子で言われる。
    「したつもりはないが、すまなかった。
     ……大丈夫だ。君が五年前の約束を守って、一番最初に来ていたことは、生涯、忘れられそうにない」
     意外にも“誰が一番最初に来ていたか”という話は浮上せず、ベレトしか知らないことだった。あれで皆にとって“二人が、二人のままそこに居た”という事実が何よりも重要だったのだろう。
     そして正確には、「あの“再会の瞬間”を、ベレトは生涯、忘れることなんてきっと出来ないだろう」と大切に胸の内に刻み込んでいた。
    「──あ、あんたなあ……」
     そうやって言葉にされると何だか羞恥に似たものが込み上げてきて……自分が意外にもそういう──焦り、必死で、あまり余裕の無いような──行動を取って居たみたいで……眉を寄せてクロードは思わずベレトをじっとりと睨むように見てしまうが、背負っているためその様子はベレトからは見えない。
     ある意味、今なら何を言っても通るような──“無敵”にもなれる状況だった。
     勿論それにベレトは無自覚であったが、気分が乗ってきて口が回ってきたことで話を続ける。

    「それに何より、君を誇りに思っているからだ」
    「…えっ、誇り……?」
     なんじゃそりゃと訝しむようにクロードは眉を寄せる。
    「ああ。……矜持かな、クロード風に言えば。
     それを傷つけられたら、嫌だとか。たまったものではないと思ってる。
     自分と“同じ思い”で、自分より具体的に、言葉にも出来て実際に試したりもしてきた。自分よりもっと前からそれに注力していて、全霊を掛けている。
     ……そう思う相手を大事にしないなんて、自分には出来ない」

     同じ思いとは、おもにあの学校生活を “どれくらい大事に思っていたか” 、などなどである。
     毎日、毎節、全力投球と言って良いほど懸命に過ごしていたベレトは、事情はあれどそれを壊されたことで憤りを感じていた。……裏切られたような気分だった。
     仕方のないことだが、だがしかし、“あの一年を通じての答えがそれ”であったことが信じられないとベレトは思ったのだ。そしてそんな者に、この国の行く末を担わせるなど、もってのほかだと思った。
     特にあの温厚なイグナーツのような者に、マリアンヌなど戦の前線に赴かせるには不釣り合いに思うような者に、あんな覚悟や思いを強制的にさせるような世界に今後なるのだと思ったら、自分は興味が持てなかった。持てそうになかった。たとえ理解する努力が足りないと言われても。歓迎は出来そうになかった。
     もっと分かりやすく言うと、「自分の誕生日は祝ってもらっておいて、学友のそれは踏み倒しても良い」ような、そういう構造の者に好感は持てないと感じた。これで平等を目標にしているなどと口にでもし出したら、本当に共に過ごした日々に意味を感じられない。
     皆との強く確かな絆の他は、そんな怒りや嘆きを実は密かに溜め込みながらの、いいやそれも存在したからこその、真面目な務めを事切れること無く責任を感じて果たしていたベレトだったのだが、「同じ釜の飯を食った仲」とかを彼が皆の前で言ったとき、まるで自分の気持ちを代弁してくれているかのようで……。

     ──それがどれだけ……同じ思いであるものが居るということがどれだけ……救いであったか。

     もっと自分が感受性豊かであったら、静かに涙を流していたかもしれない。
     本当は自分が皆をそう鼓舞したり、まとめなければいけない役だったのに、なんてことも思う。
     だが一陣の風とか、青天の霹靂とか、恐らくそういった言葉で表せるくらい。それくらい胸がすっとして、欲しかった言葉という名のその思いを聞けて、嬉しい気持ちでいっぱいになったのを今でも覚えている。
    (──ここまで頑張ってきて、本当に良かった。)
     そう思わせてくれる、気持ちの面からも一緒の彼と、彼等と共に戦えていることに幸福を覚えたくらいだ。

     それにもっと前から、何度も彼には自分の気持ちを心を掬い上げられ、代弁してくれ、いろいろ教わり救われていたと、その事をベレトはいま感謝の思いで口にしていた。
    「…………あー……。あー……ごほん、そんなはっきりと讃えたって、なんにも出ないぞ?」
    「ふ……。だから、何にもしなくて良いと言ったろう?」
     “申し訳なさそうにしなくていい”と、ベレトはくすぐられたところがそこまでの急所でなかったときのように困ったような顔をして、相手を優しく包み込むような心で柔らかく笑う。
     彼はまだ““分からない””らしい。
     確かに王というものにある責任やら仕事やらは 大 変 の二文字で片付けられるものでは到底ないが。それがきょうだいからの、家族からの頼みとあったら、答えはどうあれ一度は大真面目に考えてみるものだろう。
     互いにそういう関係であるのを、“きょうだい”と言うのではないだろうか?
     ──そうだろう? と、ベレトは父を思い浮かべながら確信を持って、穏やかに微笑みながら問い掛ける。

     ベレトは強制されて傭兵になったわけではなく、自ら志願してなった。「俺と共に生きるなら、俺と同じ傭兵になれ」とかを言われた記憶は無い。もしかしたら言われたりする前に自分が決めたというのもあるだろうが……つまり、それと同じだ。
     それにまだまだ不在だった5年間の苦労に何か出来たとは思っていない。終戦させたくらいじゃあ、まだまだ、だ。
     その終戦後こそ大変なのに、そこで自分の役目は終わりだ果たしたと、本来の肩書きや立場を理由に身を引き皆任せにするなど、勝手に放り出したのと一緒だ。“そんな選択をする自分など、あってはならない”とベレトは思っていた。
    (ただし──彼のもとでなかったら。彼が当然のようにしてくれてるような待遇でなかったら、そこまでのことを担うという決断や気持ちが真に底から沸き上がるかどうかは、分からないが。)
     そこは少し線を引き、突き放す。単純な話、そうするのにはベレトなりの経験から来る危機感のようなものを感じていたからだ。
     傭兵時代のやり取りはほとんど父任せだったとはいえ……毎回毎回、都合よく、そんな条件で他人を従えられると思うな、というベレトなりの見てきた現実による教えの鞭からである。どんな立場であれ“状況を顧みて条件を見直す”、ということが出来るようにならないと未来はない。そう思うから。
     そんな選択をする自分など、あってはならないというのも──無様な姿や背を見せられない、という自身に厳しく課している意識、というだけに過ぎない。

     自分が安請け合いをしたことによって基準となり、皆がこういった意識を持っている前提で物事を課す、というのは全然相手を思いやっていないことだと思う。
     それはつまり──対等な関係とは言えない。“同じところで共に生きていない”と感じる。

     つまり、教師という仕事も王として懸命になってみることも、ベレトが自分で決めたことで。“あってはならない”に形だけでなく心血や命まで注ぐと懸けて至るまで、実は、結局は、沢山考え何度も何度も理由などを握り締め直してそこに至っている、ということ。
    (それが分かっていない、そういった背景を読み取れない程度の者をこの国の王に据えさせてやる気はない。)
    (治して分からせるか、分からせるためにも身を引いて何かしらの意思ある行動を示すか、自分はそうするだろうと思う。)
     これもまたベレトが抱いている教師という立場からの責任感や少しの行き過ぎではない使命感、意識に過ぎないが、有してる反則な能力もあってのこと。感じていた憤りだったりは救った命にだけでなく、自身に対して向けていたものでもあったのだ。
     ──結果的に彼女の命を救ったことで、大事な皆を多くの危険にさらすことになってしまったのだから。


     だが彼には、ここまでの厳しい心持ちや目は全くといって良いほど必要なかったのだ。

     ──きょうだいという““居場所””をくれている時点で、自分は““いつも貰っている側””、で。
     だからと言って、おかしな負い目などはない。と言うより持ってはいけないだろうし、そういった関係をクロードは望んでないだろうし、それをきょうだいとは呼ばないだろうし。
     その“きょうだい”も、やめたいと言えば彼はそう呼ぶのを止めてくれるだろう。だからこそずっと、父が亡くなったことで自分の内に無くなった柱や支え、芯を再び与えてくれた彼の““きょうだい””でいたいと思うんだが…………。
    (……さて…………。)
     ──「自分に良くしてくれるのは何で?」と言われたところに思考が戻り、切なさを感じた。頭の良い彼が、まだそこは“分からない”、なんて……。
    (……いや。分からないのではなく、よく他人から聞いてきた、そして理想のかたちである、皆にはあるそれが自分にもあるということ、それを自分も皆と同じように受け取って良いということを、“それを未だ信じられない”、という意味だったら……?)
     ──なんだかちょっと悔しい思いがベレトの内に生じた。

    「それに君の、野望にだけになれないところが好きなんだ」
    「────」
     クロードは驚きで目を見開く。それは少し、クロードにとってはいまひとつ自分を肯定できない部分や理由であったからだ。
     様々なことを考えてしまうこの頭と野望への歩みは、果たして合っているのかどうか。正しいのかどうなのか。常にこの問いはクロードの中に存在していた。
     今を蔑ろには出来ない。だが野望には近付けて居るのだろうか。そのためのことをやってはいるし、自分の思い描く景色はきっと何物にも変えがたい素晴らしいものだと思っているが……。
     例えばあの遠くで煌めいている星のように、ここからだと美しく、輝かしく見えるだけで、実際近づいてみたときにどのような感想を抱くのか。もし降り立てるのならそうしてみなければ、そうなってみなければ解らないことだとはクロードも思ってはいる。
     しかし、どうしてもその速度は緩やかだ。この緩やかさがときにしんどさや迷い等をクロードに与え、自身を肯定することの妨げとなっていた。
    (けれど急ぎ、焦り、ただその景色へすぐに、形だけたどり着ければ良いってもんじゃあない。)
     本当にそれだけが目的だというなら、例えばもっと瞬間移動系の魔道の性能を上げて、いや極めてしまって、一人でそういう場所にたどり着けば良いだろう? 出来るかは置いといて、さ。
     それにその移動してたどり着けた景色というのは────何者かが、誰かが作った景色だ。
     つまり移動してそこにたどり着くということは、本来自分がやるべきことを、やらねばいけなかったことを、誰かがやった、やれた世界ってことになる。
    (……今の俺がそんなところに皆を置いて一人だけ跳んでいけたとして。俺はきっと居たたまれなくなって、帰りたくなってくるだろうな。)
     ──表向きには出さないと思うし、吸収出来るもんは全部吸収してやると意気込むだろうが。
     クロードの脳裏には皆の顔が浮かんでいた。その皆の居ない、景色だけが成立してる世界は……今となっては、そちらの方が荷が重いように感じた。
    (まやかしの一時的な軽さを楽しみはするだろうが、やっぱり、それじゃいけない。そうじゃないよな。)
    「……」
     クロードは静かにベレトの言葉を思案しながら受け止める。掛けている体重などの負荷も忘れて。彼のなかでその言葉を受け止めるには、少し整理する時間が必要だった。自分と共に歩いてくれるこの人の言葉は……少し耳障りが良すぎて。都合が良すぎて。……口を挟むのは、些か勿体無かった。


     野望という目的だけになる。王は時にそれが許される。
     高ぶっている民の気持ちを扇動出来れば、より良くそれをその人々にとって良い、つまり時代に合ってる形で叶えられるだろう。ただしあくまでそれらは、目的を叶える者にとってはおまけの範疇で、だろうが。
     いろいろなものから目を背け、決めつけ、踏みにじり、過程の出来を気にせず進むという道もある。
     ……当然、そうした後の責任は取るのが筋だと思うが。
     ……そうしなくて良いのもまた「王」というものだ。

     それで言えば、彼は、なんて────。


    「君の目指す場所がそこで、やる気の源や罪の意識がそれであっても、いつも目の前の相手や一緒に居る者達、多くの人や物事を尊重しながら、思いやりを忘れず、その現実と問題に向き合っている。君のそういうところが好きなんだ」
    「…………」
    「なかなか出来ることじゃないと思う。本当に利用することしか頭にないのなら、優しい振る舞いもそういった類いの、計算され尽くしたものになるだろう。
     だがそういうのは、分かる者には分かるものだ。しかし救われた者の中に本心からのそういった声はあまりない。それは君の誠実さや切実な思いが正しく伝わり、届いているからだ。
     ──これを誇りに思わないわけがないだろう」
    「……」
    「皆とこの時代を乗り越えよう、歩もうとしている。出来る限りを尽くして、なるべく誰も見捨てようとせず。
     ……ふふっ。君が真に皆に目をかけているのは、もう自分以外も気づいてきている頃合いだと思うぞ?
     そんな姿をずっと見てきた。君は自慢の生徒で、自慢の……うん。これを親友と言うのかな。それをきょうだいというのかな……」
     ふふふ……♪ と今度こそ音符を飛ばして、今まで味わったことのない幸福に思考と身を委ねベレトは微笑む。そしてその後ろに好意の言葉を付け足す。
    「…………、……? ……な、なあ。いろいろはっきりと述べてくれるのは有り難いんだが、さっきからその……語尾につけて言ってる…………、それは……?」
     聞こうか聞くまいか迷ったが、好奇心に負けてクロードは少々曖昧に聞いてみた。
    「? ……あ。ええと……気に入っているんだ。尊敬してる。間違えた」
    「あ、あぁ~、なんだ言い間違いか、そうかそうか」
     どこか早口で答えたあと、クロードのからっとした笑みと反応から、ベレトの内にある何かが刺激され、その何かに突き動かされるようにして、
    「──いや、間違いでもないが」
     その会話を継続させた。
    「?! ……あ、あ~~、あれだろ、食べるのが好きとか、みんな大事だ~とか、それと同じだろ? 先生も随分と口が回るようになったんだなあ~。驚いて変に聞いちまったぜ、ははは」
    「…………。つまり、好きと、同義だが?」
    「~~~っっ、何で…………何でちょっとムキになってるんだよっ!? さっき間違えたって自分で言ってただろ!」
    「──そうだったかな。忘れてしまった」
    「なっ……!? ……へ、へー。ほぉー。ふぅーん……」
    「……あ、こら。ちゃんと捕まってないだろう、危ないぞ」
    「…………」
    「……頬杖をついていないか? 器用だが、他人の背中でやることじゃない」
    「…………」
    「……クロード?」
    「……………………あまり変なこと、言わないでくれよな」
    「………。すまな──」
    「ほんとにそうだって言うなら、俺がどんな姿勢でいようと無事に送り届けてみせてこそ、だろ?」
    「──ああ、勿論だ。任せてくれ」
     そう返すとふてぶてしい王子様な態度をやめ、再び腕を回された。はにかみながらそうしてくれているらしい。彼の今の気持ちや体温が伝わってくるような、重みやそれらが掛けられている分だけ心を開き、頼られている気がして嬉しさが込み上げてくる。
    (──責任を持ってしっかりと送り届けるぞ。)

    「……ところで、寝るんじゃなかったのか。もう着いてしまうぞ」
    「いやあ~~~。もうほとんど目の前に着いてから言われてもなぁ……」



    6、
     城に戻ったあとも全てを何とかやり過ごし、あとは“自室で飯食って寝るだけ”となった。その飯も終えて、今はゆったりと夜の時間を過ごしている。
     無論、購入した材料で解毒薬を作り、飲み終えたあとだ。
    「あーあ、せっかくあんたといるのに……酒が飲めないなんてっ…!」
    「駄目だぞ、絵面的にも」
    「…………ダメか?」
    「駄目だ。薬の効きが変わったら、どうするんだ?」
    「……ちぇっ。分かったよ、分かってるよ」
     クロードは自分に言い聞かせるように二回言った。近くにあった主に背に当てる用の座布団を抱き締めたり、顔を埋めたりする。
     自分でもふざけて言ったはずなのに、結構悔しく思ってる。……これじゃ本当のガキみたいだ。今日の俺はどこか可笑しい。
    「──元に戻ったら、一緒に飲もう」
    「! ……約束だぜ?」
    「ああ」
     突然の言葉にクロードは思わず立ち上がる。ベレトからこういった誘いの提案を受けるのは珍しいことだった。役目を終えた座布団が彼の手元を離れ、無惨にも放りっぱなしにされる。

    「~♪」
     そうしてご機嫌な様子で長椅子から弾むようにして降り、そのままその気持ちを表すように、軽やかにその場でくるりと回った。まるでその日を夢見て、浸っている様子で踊られる。
    (──たぶん意図せず、最初に解毒薬を飲んでからも禁酒や質素な食事になっていて……。)
     結構な日数が経っているのではとベレトは思う。そんなことで彼の生活は崩れはしないだろうが、そういうのもあって、何となく落ち着きがないんじゃないだろうか……。
     ベレトは酒のために自分からその場に行ったり買い求めるまでの気は滅多に起きないため、子の姿で今はそんな気を紛らわせようと腕を組んでうろうろしてるような様子が、少々問題ある姿に映ってしまう。
    (……さっきのは幻か何かだったのか? 鼻歌まで歌っていたというのに。)
     自分はまだこちらの恵みをじっくり味わい、うっかりのんびり食に夢中になっている間にこうなってしまっていた。
     かといって禁断症状を抱くほどの者ではないと思うのだが。というかそんな風に育ててないし育てないが。
     とりあえず理由が酒でさえなければ話を聞くのだけど……。
     ──と、その動きがぴたっと止まった。
    「…?」
     ──と、また同じように動き出した。
    (……よし、酒のことではなさそうだ。)
     ベレトは声をかけることにした。
    「…どうした?」
    「いや……気にしないでくれ。取るに足らない、いろんなものと葛藤してるだけだ」
    「??」
     いろんな、というとやっぱり酒もあるんじゃないかと思うけど……うーん。
     もっと、そもそも彼らしくなく、短絡的に葛藤が起きてしまうような“理由”があるような…………あ。
    「もしかして、薬のせいじゃないか? 解毒薬が、たぶん……」
    「──あ、そうか。……うん、たぶんそうだな」
     クロードは何を言われてるか分からなかったが、ベレトの思っていたことを瞬時に正しく読み取る。
     そして、はあ……と下らぬ根本の原因にクロードはやるせなさそうに席に戻って冷えた水を口にする。少し冷静さを取り戻せたようだ。

     ……即効性のある薬は求められるものだが、基本的には慣れと反動が怖いため、推奨できないものらしい。彼も基本的にはそれに習って作るため、毒薬以外はそのようにするらしいが、今回はその習いから外れたものを作ったらしい。ベレトはそのせいかもしれないと思った訳である。
    (まったく、無茶をする……。)
     ……けれど。城内でもおそらく変わり者と思われている彼でも、丸々一節、部屋から出てこないとなるといよいよ不審に思われてもおかしくない。というかその頃を少しばかり過ぎてると思う。彼はもう昔とは見られ方や扱われ方が違うのだ。
    (……もっとしっかり着いていなければ。)
     ご飯も体調不良ということで彼は通っているため、自分という来客用に少し華が足されただけで、基本的にはクロードに寄せた質素なものと言えばそのとおりなものでもてなされていた。勿論それを、彼と分けあって食した。

    「……それで、何を葛藤していたんだ?」
    「うーん……まあ、なんだ。もう少し起きていたい欲とさっさと寝ちまうのがいい欲みたいのが膨れ上がって……上手く安定しなかった。そんな感じさ」
     言っててこの程度の制御は、出来て当然の初歩中の初歩だろうとクロードは自己嫌悪を通り越して呆れ返りそうになった。本当にそうなってしまう前にクロードは「あんたともっと楽しく過ごしてたいしな」と付け足し微笑む。
     同じ思いであるベレトもそれに微笑みながら頷いたあと、先の話の考えを述べる。
    「…………気持ちが安定しないということはつまり、効果が出ている証拠なんじゃないか?」
    「そうかもな。……うーん、でもちょっと……の量が足りなかったか、……、…………?」
     気持ちを切り替えて返事し、今度は調合のことを考え出すクロード。少し仕事を片付けるかどうか、みたいなことも聞き取れた。薬以外の、寝る寝ないという葛藤の理由はそういった様々な、確かに一つ一つを大事に思えば気にかかってしまうことが原因だったらしい。
    (しかし……自分にはさっぱりだが、他に一体どんな薬があるのやら……。)
     今でも十分とんでもないものを作っている気がするし、いつかは止めた方が良いのだろうけど…………悪用する者が悪いのであって、信頼している彼に余計なことを言いたくない気持ちが大きかった。その発想力は自分には到底、学んだだけでは身に付きそうもないと、実際に作る様子を隣で見させてもらって思った。
     彼ほどになるとただ作り方を見て作るだけではなく、経験を活かして模索しながら作るほうが自分に合ったものが出来る、という結論に至るのだろう。……だから成功への道筋が曖昧で、失敗もするのだろうけど。

     ……何はともあれ、放っておくとずーっと頭を使いっぱなしで居そうな彼を、休ませなければ。
    「……クロード、そろそろ休もう。せっかくの効きが悪くなってしまう」
    「ん、そうだな…」
     そういって小さな歩幅で寝室に駆けていったかと思えば、少し経って戻ってきた。その間、食に満足したベレトは可哀想に転がったままの座布団をもとの位置にそっと戻しておいていた。次いで食器をちょうど重ねたりなどしていたところで、少々気の抜けた、庶民的なところを見られたように思う。だがクロードは何も気にすることなく声を掛ける。
    「あんたはこっち使ってくれ。俺はそこでいい」
     クロードは小さな手でソファーを指差す。
    「え、でも」
    「今の俺じゃ凄い余るし広すぎて勿体ないだろ。……で、丁度お似合いだろう?」
    「……」
     確かにあれは大きい。前に彼がいま指差す先を覗いてみたときに目が点になった。一人用とは思えない立派な寝具だと思う。実際に転がったらかなり広く感じるはずだ。というか当然自分一人の使用でも余るに決まっている。対して今の背丈の彼には長椅子(ソファー)がちょうどいい大きさのそれに十分成り代わってくれる、とは思う。……あれくらいの男児にしては、たぶん平均より……その…結構……本当に小さいと思うし……。
     けど……中身はそのまま。元気そうに見えても、彼は病人だ。皮肉や自虐的な言い方が顔を覗かせていることもあまり感心できない。誰の趣味で一式整えられたものか分からないが、公な部屋にあるものは調和や気品があるだけでなく、そのなかに少し可愛らしいとも取れる造りな物もあり、それにいまの自分なら似合いだろうと、彼は言っている。
    (…………。)
     ……今思い返せば、彼を背負っているとき。重さが増しただけじゃなくて体温もかなり上昇していると感じた。子供特有のものかと思っていたが……きっと違ったんだ。
     たぶんだけれど、彼が通りを広く感じたのは体が小さくなったからだけじゃない。過去の傷のせいだけでもない。大男とぶつかったのだってきっと……そういうことだったのかもしれない。
     文字通り毒のように何かが悪く回っていたんじゃないだろうか。……安静にしていなかったことで。
     だが全くそんな素振りを見せずに、自分の提案に彼は付き合ってくれてたんだ。
     だったら……ちゃんと、なるべくしてなる通りにさせるのがいいだろう。自分の役割を果たさなければ。


    「……だからって。一緒に寝るってのはちょっとどうかと思うけどなあ」
    「そんなこと言えるのも今のうちだぞ」
     何かあったときのためにすぐ傍についていることにした。ベレトとしては大真面目に世話や看病としてなのだが、クロードにとっては……子守り以外の何だってんだ、というむずむずと込み上げて来るものがあった。
     ベレトはたぶん今日の夜中か明日には高熱が出るのではと言うと、何か思い当たることがあったのかすぐ手の届くところにクロードはいろいろ準備した。
    「さっきちゃんと飲まなきゃならんものは飲んだし、大丈夫だって」
    「じゃあ額を触らせてみろ」
    「う……」
     観念したのか渋々こちらに額を差し出す。ベレトは額に手を当てる。
    「……少し熱い。やっぱりこちらでちゃんと寝るべきだ。それか向こうで付きっきりで看るが?」
    「──わ、わかったよ。一緒にな、うん」
     ベレトの鋭い視線と徐々に強まる語気に耐えられず、眠る位置についてぽふんと、風邪等とは違うのだけど確かに少し怠かった身体をクロードは布団に全て投げ出す。
     クロードは久しぶりの使用でここまで負荷が大きい薬だということを失念していた自分を少し恨みつつ、どうしたらこうならずに一時の身体の伸縮、すなわち外見のみ年齢を操作出来るか、次の自分への課題を回らない頭でとりあえず挙げていき、気を紛らすことにした。

    「……」
     本が乱雑に床などに積み上げられているのがベレトの視界に入る。さっきこちらへ彼が引っ込んだのは、寝具の上にあったそれらを退けるためだったのかもしれないとこっそり思い至って、彼を見る。
     ……薬は確かに効いているのだろうけど、入室を許された自分が彼を看ない理由は無い。吸水性の高い布も用意したし、自分も布団に上がった。
    「……これ、本当に一人用か?」
    「? そーだけど?」
    「……嘘だ。少なくとも三人は寝れる」
     そして少なくとも二人用だろうと思う。いやそう言って欲しかった。何と言うか、これはさすがに住む世界が違うと思ってしまう。二人横たわって贅沢だがちょうど良い広さに感じた。が、足下が余りすぎているだろうと思う。
    「そこで寝たい奴はそういないだろ。……いや、居たな」
    「え?」
    「動物。猫とかドラゴンの子供とか。たまに勝手に入ってきて、勝手に寝てた」
    「そうか」
     へらへらと思い出してクロードは笑う。
    「………」
     そのなかでも特に驚いたのは、毒を持つ類いが居たことだとは言わないでおいた。

     されたことの一つに過ぎないがそういうのが続いて、お陰で眠りたい場所と眠れる場所と…というようにいろいろ分けて、想定して、考えるようになった。
    (……。)
     そんな俺が気に喰わなくて、乗り越える度に悪質になっていき……最後に結局、奴等は確実に勝てるもので挑んでくる。
     ────暴力だ。
     昔からある、白黒つけるにはうってつけな方法。残念ながらこれが俺にも有効であると思われてしまった。
     暴力にもいろいろある。そのままの意味と、暴力と思うもの、そうと呼べるもの……そういうものも含まれる。一人ならともかく複数人、集団で来られちゃあどうしようもない。
     小さい頃は、とにかくただ受け止めていた。それだけだった。よく考えもせず答えを求めて「何故」と思うだけ。
     ……自分から沸く強い怒りや恨みなどにさえも「どうして」という感情が湧き、そちらを先に知りたがった。
     どうしてこんなことをするのが愉しいと思えるか、こんなことに一体何の意味があるか、分からなかった。いいや理解したくもなかった。知りたいと思うのはそこじゃない。そういうとこだけはあいつらと同じじゃなくて良かったとよく思っていた。
    (……なんて。そんなのは結局、都合の良い思い込み。──同じじゃない、なんてあり得ないのにな。)
     人類規模の話。本や図鑑などに書かれている生き物達のように。人間だってひとつにまとめられて書かれるだろう? その時、どのようにまとめられ、綴られるのか。人間以外が綴るとしたら、どのような内容になるだろうか?

     つまりはこういうことだ。
     ──誰にも。そうでない、そうならないと、その可能性を否定できない。
     逆にそうなる可能性なら…………肯定出来るんじゃないか?

     けど既に存在するもん全部に目を向け、耳を傾け、心を開けて。息を吸い込んで、吐き出して……そうすることしか出来なかったし、それだけで俺自身は結構、事足りてた。充実していたし満足だった。
     あれが欲しいとかこれが欲しいとかは、まあ人並みにはあったが……何せそれを、例えば必死に手に入れたとして、
    「あの大きな空よりもそれは価値のあるものなのか?」
     とか。そういった比較にもならない、唯一無二のものと比べていたから、大して欲しいものは俺にはそんなに無かった。
     だがそんな考えで生きてるやつはあまりいないのだと知ったし……欲しいものほど簡単には手に入らないようになってるのは、皆同じなんだろう。
     そういうものが蔓延ってる世界であり社会であり、それが他人事ではなくいま目の前に広がっている、自分が生まれたときに用意されていた現実なんだと、俺は受け止めた。

     ……だが知っただけでは意味がない。
     逃げること、やり返すこと、流すということ、騙すということ等も覚えて…………でも、それらにも大した意味はないと思った。全くとは言わないが、今だけ、ほんの数日間だけ乗り越え得られた平和なんて、意味がない。
     ………こんなの虚しいだけと成功した復讐に思った。想像どおり満ち足りた気分になど成らず、勝って賑わう相手も居ないことに、遠くでそれが開かれていることが耳に届いたことで気付いた。

     ……この虚しさを何とかしなければ。用意されていた世界は恐らくずっと、何かするものが現れない限り、このままなんじゃないだろうか。
     そう物陰になってるところから人通りを眺めながら黄昏、たまたま赤子の世話をする家族を見ながら思った。そして傷を負っている父親らしき人に目が行く。
     あの傷はきっと誰かからの命令を受け、ついたものだろう。今はこんなだが、いつかはその命をする側に俺はなる。
    (…………。)
     ざわ……と胸の内に何か嫌なものが生じて、少し苦しくなる。
    (なんだろうこの、いろいろと噛み合わないような、この感じは。)
     だが瞬時に思い至る。……いまの自分が、あまりにも力量不足であるからだということに。
     いま築かれているあの家族の笑顔、団欒……。それらはあの全員が揃って成り立っているものだ。しかし傷を負うような仕事にどうやらあの父親は就いているらしい。その父親がいなくなったら? あるいは傷を負ってまで帰りたいと思う場所が無くなったら? あの一家は、個々人は、一体どうなる?

     そういったことを考える時間が俺は少しずつ増えていった。
     ……もっと根本的なところ、もっと大きなところに問題があり、それをどうにか出来るところにいるからこんなことを思うのだろう。
     用意されていた世界は、決して悪いばかりじゃない。ならば何があの平穏を脅かしたり、崩す原因となるのか。
     …………人の、築き上げてきた何かに問題があるから、なんじゃないだろうか。
     ……何百年もその問題が解決していないのだと思うと、足が震えてきそうなくらい恐ろしいが……。

     だけど、だからこそ自分のやりたいことが少しずつ見えてくる。だが世界は、自然は、そんな人間に何を思うのだろう。何かをそもそも思っているものなんだろうか?

     ──見上げる星空はいつもきれいで。だけどいくら眺めたところで、その答えは何時だって返って来はしないのだった。



    「……クロード」
    「……ん?」
    「呼吸が浅いぞ。──なにか考え事してただろう」
    「ギクッ……」
    「ちゃんと休まないと……、」
     こうするぞ。というようにベレトはもぞもぞと近づき、眉間に人差し指を置いたまま右回りに、左回りに、くるくると何の法則性もなく滅茶苦茶に、でも優しい力で動かしてきた。
    「ちょ、ちょっ……これはこれで眠れないって!」
     思わず笑ってしまう。──どういう邪魔の仕方だよ!
     言うとすぐにパッと離して顔をそおっと覗かれる。無表情に近い顔が、目が合うとその目を優しく細めて、けれど少し悪い感じに口角を上げられた。それがあまり進んでいたずら等をしたことがない人の、慣れないことをやってみて成功したと感じている類いの様子や表情であるのを、クロードであれば相手がベレトであっても容易に見て取れた。
    (……ああ、馬鹿馬鹿しい。)
     この人の言う通りさっさと寝よう。
     つまらない葛藤をしていた自分にさえそう言い、笑い飛ばしてやった。

     つまらない葛藤とは、本当にくだらない……ただの意地を張った部分のことである。
     ──弱さを見せて、良い試しがなかった。
     やりたいことや求めるものを素直に言うこともそう。それでも言ったり試したりしてきた方だと思うが、だからこそか、その経験が邪魔をしていただけ。この人にその経験はあまり通用しないんだったと改めて実感した。
    (……そんな研き、築き上げた自分じゃなくてもいい人だった。)
     自分から言い出したくせにな。──願うように。未練がましいように。諦めきれないように。結ぶように。手離さないように。切れないように見失わないように……。
     きょうだいみたいな、そういう関係になりたいと。そういう関係で在りたいと。
     そんな我儘で勝手で未熟であるところも……許してくれてしまう人だった。

     ほんのりと薄く色付いてるベレトの頬に気づく。
    (何というお邪魔虫なことが大好きな悪魔なんだろう。俺の思考の妨害が出来たことが相当嬉しいらしいな。)
     その顔は得意だぞ、こうやるんだ……というようにクロードはベレトと同じ顔をした。……だが少々大袈裟に。そして邪悪な感じで。
     だが今の彼が全力でその顔をしたところで、せっかくの整った可愛らしい顔が残念に崩れただけだった。
     そしてどちらからともなく、くすくすと笑い合い……二人は眠ることにした。

    「……気分は? 平気か?」
    「ああ、平気だよ。ありがとな」
     ベレトは困ったような、けれど慈愛の込もった表情で微笑む。気付けば夜も深くなり、薬か毒かの回りを気にしての問い掛けだったのだが。……そうきれいな笑顔を作り強がられてしまったら、焼きたい世話も焼けなくなる。本当に彼の休息の邪魔になっているんじゃないかという気がしてきてしまう。顔色だけで状態を読み取ることは難しいし……。
     迷ったがやはり自分も軽く寝ておこうと思った。彼に異変が起きたりなどしていないうちに。
     ……ふと。そういえば今日一日、ベレトは言ってなかったなと思い、小声で言った。
    「おやすみ、」
     ──彼の本当の名を。
    「……ああ、おやすみベレト」
     やや間があって、自分も名を呼ばれた。
     じんわりと胸が暖かくなる。……彼も同じ気持ちだろうか。
     確かな繋がりがある相手から、名を呼ばれる。その幸福にベレトは浸りながら彼を見守り……彼の寝息を聞いているうちにベレトも眠りについていた。




     ──そして次の日。早朝。
     クロードより早く起きたベレトは自分以外の小さな来訪者に気づく。彼の言った通り、飛ぶのもままなって無さそうな小さなドラゴンが丸まっていた。ベレトの起床に気付き小さく鳴く。
    「……いつ来たんだ? おはよう……いや、ようこそ、かな?」
     彼らの好みであるらしい場所を順に優しく指先で撫でてやると、人差し指を甘噛みされる。それにしてはやり方をあまり知らないのかちょっと痛いが、ちゃんと歯がある証拠でもある。
     餌をやった方がいいかな、とその甘噛みが続くのと自分の動きを追う様子から思い、隣で眠る小さなクロードを見て、額に少しかいていた汗を拭い、何となく頭を軽く撫でてやってから寝室を離れる。
     指示を出し、それが出来たら褒美に餌をあげ、手であげたりしたあと器に餌を入れる。ゆっくりとだがちゃんと食べている様子を確認して、自分も少し水を飲んでから寝室に戻ると──。

    「──よっ、おはようさん、きょうだい」

     彼は元の姿に戻っていた。……着替えもちゃっかり済ませて。

    「……おはよう」
     髭が無いせいだろうか、早朝だからだろうか、朝日を受けているせいだろうか、真っ白な軽装が眩しく映えているからだろうか──彼はいつも以上に年相応の、皆や自分と同じ年頃に見えた。

     床に足をつけ寝台に座っていた彼は立ち上がって、ベレトの帰還を歓迎する。
    「……起きてたのか?」
     見開いていた目を何とか戻し、寝ていたふりをしていたのかベレトは聞く。
    「いやいや、あんたが汗拭いてくれた辺りだよ。それで目が覚めた。ありがとな」
     さらりとそう言った後、何か思い出したかのように軽く頭を触りながらポッと頬が赤く染まる。ほとんど一瞬でそれは引いたが、いや引かせたが、クロードが触った辺りはベレトが丁度撫でたところだった。
     取り繕ってすぐに先程の調子──颯爽と帰ってきた王族の青年──に戻る。
    「いや……、けど急に戻ったな。……大丈夫か? 何かしたのか?」
    「ああ。あんたが寝てる間に一度目が覚めてな。戻れそうな感じがしたから追加で薬を飲んだのさ」
    「…えぇ………」
     真剣に聞いているのだけど。という思いと、彼に何かあったのに自分は起きれなかったのかという悔しさと──薬というのはそんな…気分で好きな時に好きな量を飲んでいいものでは……。服用する際にいろいろな決まりがあるはずだが……。という思いに包まれる。
    「……そんな“信じられないッッ……”みたいな顔しないでくれ。
     ──このとおり! 何ともないさ」
     大袈裟に精神が不安定になっている女性のような真似をした後、右腕を元気よく上げてグッと力こぶを作るような姿を取る。
     笑顔付きで何とも爽やかだが……盟主の格好もこっちでの装いも、お洒落な彼の技術で上手く視覚的な効果を果たしているのだなというのが分かる。
     着替えたといっても今は、下は黒の簡素だが良い品のような男性用や紳士服の括りでよく見かけるごく一般的な型の履き物に、上は“適当に一枚袖を通しただけ”で前も適当に留めてるだけの、その視覚的効果も今はないため、全体的に線が細いと感じる。
     ──ああ勿論、彼の最適解である大立ち回りな戦法(ドラゴンロード、バルバロッサ)に必要なものはしっかりと備わっているが。
     彼はたくましさを強調する姿を解いて、軽く腰に手を当てたよく見掛ける立ち姿になる。
    「それにこういう類いはじわじわやるより、一気にやっちまった方がいいのさ」
     そう言うとどこかお茶目に片目を一瞬閉じられる。
     ……ふむ。それは何となく分かる気がする。いや幼くなれたりちゃんと元に戻れたりと、そんな伸び縮み?というかなり不可思議なことが可能な時点で、頭が混乱してくるが。
     確かにいま、彼の顔色は良い。子供の姿のときよりかは分かりにくいが、自分の前ではそう偽ってばかりでもないはずだ。彼の顔や全身を頭を動かして見ていると、どうぞどうぞ、と彼は両手を軽く広げて自分に好きなだけ見ることを許す態度を取る。
     ……うん。間違いなく“現在の”彼に戻ったな。

    「──分かった。まずは栄養を採ろう。今日も1日、自分がついてるからな」
    「おお、頼もしいなあ。さすがは先生だ」
     ……忠告でもあるんだが。分かっているのだろうか……?
    (いや、彼のことだ────楽しんでいるのか。この状況を。)
     それはベレトも同じところであった。
    「当然だ。君の教師であり、きょうだいなんだから」
     互いの目を見て微笑み合う。確かな絆が心地良い。──と、ことんことん、と音がした。
    「…ん? なんか音しないか?」
    (……あ。)
     この音はたぶん餌入れの音だ。何処からか迷い込んだ子竜を思い出し、今日はまずその子を家に帰すことから始まりそうだなと思った。





    ーーーー
    おわりに


    「……というわけだ。今はもう元気にしている」
    「なるほど、よーく分かりました。いやー、目も当てられない事態になってなくて良かった。いつも先生にはお世話になってばかりですなあ」
    「いや、自分は何も…」
     ……薬のことは言わない方がいいのだろう。そう思い、話を合わせるため、皆にどう言い訳していたのか等を事前に彼に聞いておいた。

     始めはとりあえず調子が悪いことにして、二日三日、溜まっている書類仕事等に専念するということで、様子見を。
     だが薬の効果がいつまでか予測がつかないから「良い機会だし…やるか!」と彼は決意し、どんどん持ってくるよう伝えたら……本当に一時出られなくなったと聞いた。
     ナデルや一部の者達はそんな──小さくなったとは知らない──彼の動きを、卓上の鬼神の動向を、良くも悪くも疑ったわけである。
     彼もそう思われる頃だろうと想定済みだったようで、理由を考えていたが──ある時、傷を負った気性の荒い子竜が迷い込み、付きっきりで世話をしなくてはいけなくなった……ということにしよう! ──となった。

     勝手に渡りに船。だが決して、行き当たりばったりでの採用ではない。一応、彼が丁度治ったこともあり、部屋を出るには自然な理由となるからだ。

     ……それに、クロードが“被害”を受けていたことを知っている者の方が多いというのもある。
     時にどうやったのか、仕掛けた生き物をご丁寧に世話や躾をして、皆の前で堂々と返してあげたこともあるのだから。意外とおかしいことがおかしくないで通るのが彼であるのを忘れてはならない。
     何故ならその躾をしたのは自分ではなく相手であるということにして、一時花を持たせ鼻を伸ばさせ、役も与える。だが最終的には「実はそうではない」と役目を果たせないことで周囲に“そういう奴”と知らしめ、教え込ませるための考え抜かれた行動、つまりは策であったのだから。
     だがこれに関しては流石に彼も父親から直々に「これは良くないやり方だ」と叱られた。そしてそこで終わる彼ではなく、彼は何故駄目なのかを考え、答えを導き出してその手を封じたが、注目すべきは──皆は彼が叱られたことも、その事を彼が禁じ手にしたことも、知らないことである……。

     ──というのを利用する、ということなのだが、当然ベレトはこれらの話を知らないため、随分と滅茶苦茶というか強引では……という印象を持つのだが、何か根拠がありそうだと信じて、ベレトはこれに従った。
    (……それに一応、嘘は言っていない。子竜が傷を負っていたのは本当だ。──外側にではなく、内側にだが。)

     あの後、餌入れを鳴らしていたからご飯のおかわりを要求されたのかと思ったが、ご飯は残しているし調子が悪そうで、自分より彼等に詳しいクロードに診てもらった。
    「……こいつ、なんか飲み込んだのかも。病気じゃ無いと思う」
    「そうなのか?」
    「多分な。怪我もないし。けどぐったりしてるから……もしかすると……」
     ──それは的中していた。診断後、準備を済ませた場所に移し、彼はそれを吐き出すよう声をかけながら子竜の腹や急所を少し揉んだり突いたりして、背を擦ったり叩いたりしていると、正常な吐瀉物の中に消化出来ていない丸いものが混ざっていた。服などに使われている──釦(ボタン)だった。
     顔を見合わせ、これは事故の類いだろうと頷き合い、子竜の無事を喜び合った。念のため薬を飲ませて寝かし、半日くらい様子を見ることにしたのだが…………懐かれた。この上なく。

     子竜は感謝を示しているのか自分達にとても愛らしい姿を見せるも、無邪気でやんちゃな子だった。
     意外にも彼のこちらの部屋は──今回は内仕事をしていたのが分かる程度にはごった返していたが──表向きには綺麗に片付いていて上流の者と思わせるものがあるが、子竜のお陰で寝室以外もベレトにとっては見覚えのある景色に様変わりした。
     大慌てで書類を移動させたりするクロードに代わり、ベレトは子竜の注意を引いたり面倒を見つつ、掃除をそれとなく手伝うも、よじ登って顔を覆うように翼で抱き締められたり、顔をすりすりしてきたり、舌で遠慮なく舐めてきたり、頭に顎を乗せてじっと動かなかったりと──全く捗らない!
     と、思っているところをクロードに見られ爆笑されたり、こちらも妙に感情を薄くし懐広く寛大であろうとするクロードに笑わせてもらったり、共々楽しく振り回された。
     幸い彼の部屋に壊れやすい“超”が多く付く高価なものは無かったが、書類は時にそれくらい価値があるもので──。
     だが被害はそう無く、けれど室内の備品については一緒に頭を下げに行った。


    (──そういえば結局、彼の方は材料が悪かったのか、作り方が悪かったのか……分からなかったな。)
     いろいろあって今の今まで、頭からその事が抜けていた。
     とりあえずナデルを納得させることに成功したようで、ようやくひと息つけた気がした。
     ……そのナデルはと言うと、クロードより自由が利くため、最近では彼の方がこちらに訪れ滞在し、顔をよく見るようになった。彼も暇な人ではないため、あくまでクロードよりも、だが。

     ゴネリル家も首飾りも近隣の東方も、最近は決まりを守るパルミラに時間的な猶予が出来たため、別のことにその時間を当てられるようになった。相互理解のための動き、はまだそこまで活発ではないが、いずれ正式にそのような関係になっていけることだろう。そのためにナデルもこうして訪れ、例のヒルダのお兄さんと関係を強めるようしている。
     今は互いにその時のための備えをしているような状況にある、らしい。らしいというのはそういう指示をベレト達は直接はしておらず、隣接している両者がベレトとクロードの意を汲んで動いてくれている為である。当然いろんな考えのものが居るが、こちらにツィリルのようなものが居るようにあちらにも少々紛れている者がいるらしい。
     ……皆が皆、約束破りの荒くれ者であると考えてはいけない、ということだ。
     実を結ぶため、敵国“だった”とするため、まずは強力な根をツタを伸ばし、築かなければならない。そのための協力をヒルダの兄とナデルは惜しまないと言ってくれたし、ヒルダも迷惑してた分だけまだ少々渋るところはあるが、
    「うーん……クロード君の故郷、なんですよね? じゃあ向こうに素敵なものがあって、それをあたしにも見せてくれたり、分けてくれちゃったりとかしてくれるなら、協力してあげても良いですよー?」
     ──と。ちゃっかりと、しかし冗談混じりに条件を提示して協力の姿勢を見せてくれているのも嬉しい。心強い。
     ……まあ、男二人で彼女の好みに合うものを選ぶというのはなかなか難しいが、お店の人に「下手なものでは彼女には通用しない」と発破をかけて紹介してもらってもいるからだろう、今のところは好みを外さず全て気に入ってもらえている、と思う。この前払いがどのように作用するのか、楽しみだ。
     ローレンツも何だかんだ文句を言いつつ向こうが気になっている様子なんだが、どちらかと言えばやはりイグナーツ。イグナーツの方が…………と、いつかの作戦のように思ってしまう。良くも悪くもローレンツはぶれないから、信頼してる者からの話を一度挟んでからの方が良いと思う。


     酒の入った瓶を開け、とくとくと少し大きな器──樽をそのまま小さくしたような──に赤系色の酒が注がれる。机には多くはないが料理人こだわりのご馳走が並んでいた。
     店全体の雰囲気はナデルが選ぶにしては少し上品な、けれど程よく話し声が聞こえる程度には賑わいと静けさが同居している、赤子や奔放な子を連れてくる客は居なさそうな店だ。大人同士がたまにはこういう場所で時間を使ったり、話をするのに適していそうだが、由緒正しいような貴族ならばもう少し上の店を選ぶ、そんな感じの──自分達には合ってる店だ。
     少し注意深く店内を観察すると、すぐ隣の席との間隔が安くて賑わう店より広く感じる。個室のような工夫を凝らした場所もあり、自分達が座ったのも丁度そこだった。

    「……坊主があんたを気に入る理由が、よく分かります」
    「…?」
     器を持ち、ナデルの器と軽く合わせて、そのまま二人、軽く一口含む。……渋味のある、少しざらりとした舌触りの、強い酒だ。喉へ通し、ナデルは器を机の上に置くと、話を再開する。
    「ベレト殿には自分勝手な、淀んだ色をした欲がない。報告も無駄なく正確だ。
     ……普段もそうなのでしょう? 大した見返りもないのに、よくもまあやるものです」
    「……そんなことはない。沢山貰っている」
    「ほう? 一体何を?」
     ベレトも器を置いて料理を口にし、少し首を傾げ考えたが、やはりこれだと思う。
    「……居場所、かな」
    「居場所ですか。ほほお、あの坊主が貴方ほどの人に、ねえ……」
     訝しむナデルを見て、少しだけ微笑む。
    「……過大評価です。そして、過小評価だ」
    「はっはっは、冗談ですよ。いやあでも、あの坊主がねえ……」
     そうしてまた愉快そうにナデルはしみじみと訝る。

     ナデルは彼が満たせる者や相手はせいぜい、その腕のなかで守れるだけの、自分で拾い自分で世話すると決めた動物達くらいだ、と思っているのかもしれない。
     ……言いたいことは分かる。
     彼の器は大きいが、別に無尽蔵に広く、底無しに頑丈という訳ではない。
     頭が良くて柔軟で、視野が広くて遠くまで見渡せて。
     けれど、だからこそ躓いたような失敗もするし大雑把なときもあるけど……あれで繊細だ。
     割れ物のそれが割れぬよう粘土の高い自ら産み出したもので多くの者達は覆っているものだが、意外にも彼にはそれがあまりないと感じる。代わりに何で覆っているか…………それは経験や知識、野望に対しての熱量や本気具合……といった“真実”で堅め守っているように思う。
     出会ったときのような彼になるまで、きっと沢山傷付いてきたはずだ。
     本人が否定しても間違いなく友人や仲間想いだし、人が持つ善性や良心、可能性の方を信じている。
     悪さはしても彼のそれには暖かいものがいつもある。いや、そのためなら一般的には悪いとされることだってする。微笑ましい範囲で。彼はそういう人物だ。
     そうじゃない悪をしたとき、彼は罪の意識に苛まれているし、そうした思慮深さや自覚があるからこそ、自分も彼の自由を許してやれる。

     そして皆も持っているものだが、絶対に誰にも入らせないようしてる領域を彼も持っていて、だから他人のそれを知りたがるけど、無理矢理こじ開けるようなことを、彼はしない。
     そもそも結構相手を選んでいて、とても慎重で厳重に距離を測っている。
     それもそのはずで、彼のやろうとしていることは、この濁っている世界を、新しく何にも持たず生まれてくるものにとってどういう世界に映るようしたいか考えている…………そんな感じでもあるからだ。考え方の根底……規模が違う。
     大抵は目の前のことや長くても二、三年といった少し先の範囲で考えるところを、彼はまず全体という離れたところから、地図を広げたようなところから考え始める。勿論、目の前の事からの場合もあるが、とにかく必ず一回はそのような事をしているというところが、常人離れしているところなのだと思う。
     と同時に、そうであることで彼が王族であるのを彷彿とさせてくれて、ある種の信頼感や安心感を抱けるところなのだと思う。
    (だからと言ってもいろいろと仕事を投げられ過ぎな気がするが……。)
     ……彼なら上手く休みを取っているだろうけど、信頼を築けば築くほど、目の前のやらねばならないことが高く積み上がっていって、肝心の野望になかなか手がつけられないとか、そうならないか少し心配だ。

     彼のやろうとしていることは、皆を率いていけるような力強さと確かさ、濁った理由である破片を取り除いていくような繊細さが求められるはずだ。加えて人情もきっと沢山求められる。
     ……しかも求められるばかりで、返す者、返そうと思う者は数少ないだろう。
     ……価値観を描き直したいと思ったのには、きっとそういうところにもある。
     残念ながらただのいい人では、現状使い潰されるだけだ。だからあれくらいの策略の練り方や話術などを身につける必要があったのではないかと思う。
    (──それこそが「現状がおかしい」証拠だと思うのだが……。なぜかそこで“どちらが辛い過去をより経験しているか”で競い出すのだから、嘆かわしいというか……。)
     問題に着手する者がなかなか現れないもの無理はない気がしてくる。

     争いが生まれる理由のひとつは、相手のことをよく知らないことにある。そういうことをしても良い相手と勝手に思い込んでいるから、そういうことが出来る。
    (……描き直すもなにも、相手を軽んじて見るなどおかしな話だ、と自分は思うが。)
     ……残念ながら皆自分が非常に大事で、そんな価値観のものは現在少ないのだと思う。
    (だからこそ“愛すべき者達”と、自分は金鹿の皆などに思っているのだが……少し勝手で、重たいかもしれないな。)
     妙に枷とならないようしなければ。彼らはそういった重たいものに引きずられているよりも、軽やかでいる方がとても魅力的なのだから。

     そして軽やかでありながらも、決めたことには深く従う。
     そこがとても良いと自分は思う。事がフォドラ全体の域になっても彼等は変わらないのだから。

     そこがまとまりがないところなのかもしれないが、そうでもないと思う。彼等は共通して、友人が困った顔をしていたら手を差し伸べる。そういうところが一致しており、そして同盟もまたそのようなもので繋がっている、そう出来ているとベレトは感じていた。とても理想的な他者との距離や形にすら思う。
     彼の野望は彼一人では叶わない。彼一人がその条件を満たしていても、実現は不可能──同士が必要だ。
     ……そんなことが可能な、それらを持ち合わせているような、自ら進んでやるような、そのために傷付く覚悟もしているような者が、果たしてどれくらい存在するだろう。
     その同士となってくれそうなのはやはり……金鹿の皆以外にいないと思う。
     五年後に再会の約束を取り付けたくなる気持ちもよく分かる。
    (……彼等のことを、皆を信じているからこそ、だよな。)


     この世に悪意が満ちていたり、意地の悪いことや理不尽が存在するから、手段として駆け引き等をするようになっただけで、この世界にある真実や美しく綺麗なものを彼はとっくに見つけているんだと思う。
     それに人が下手な価値をつけるなんてとんでもないことだ、という敬うような意識がこんなに、あまりにも無い者が多くて、正直辟易している。
     こんなにも人とは傲慢になれるものなんだなと、金鹿の皆や一緒に戦ってくれた者達以外と関わっていると思う時がある。
     無論、彼等にだって譲れないもの、すなわち深く従うものがあるが、その中身や限度は大きく異なる。彼らは「そういったものまで手に入れたい」という度を越えた、領域を一方的に脅かす所までの欲望は持ち合わせていない。
     ……意外とこの【価値観】が無い者が多いのだ。恐ろしいことに。驚くべきことに。……おぞましいことに。

     だから彼はどんな者が居ようと叶えるため歩き続け、異なる考えや想いを許し、それでも等しく説き、気付かせたい、授けようと思えるのだろう。
     あくまで命令などではなくひとつの考え───価値観として。


     だって“それ”は、きっと誰のものでもないし誰のものにもならない、そんな枠には収まらないものだと思うから。




    「夢も貰いました」
     ……“それ”のことを、自分では上手く言い表すことが出来ないが……否定できないもの、という風に言えるだろう。そこは誰にも否定できない、というような。
     人間が何かしたわけでもなく先に存在していた大地や海や空などの自然のように、善か悪かどのような方向に進むか分からないが、何かを感じ湧き立つ気持ちや行動を、嫌悪したり抑えたりは出来るだろうが、否定は出来まい。
     それがなければそもそも生き物として、人間として始まらない。その機能や構造を否定することは出来ないだろう──皆同じ機能が備わっている結果のなかで、起こっていることなのだから。
     だからそれを縛れない。だからそれを否定できない。
     それを分かっている彼だから──夢ではなく野望と言い、新たな決まり事ではなく自身の価値観、という控えた称し方に落ち着いたのだろう、と思う。そしてそれを押し付けるということもしないのだから……。
    (だから彼は貴族っぽくなくて、いろいろと押し付けられやすいのかもしれないな。)
     まあ……それとこれとは別で、なぜ皆、自国の王と他所の王とで接し方がこうもあからさまに違うよう出来るのか、自分には少々疑問なのだが。

     ……彼らと出会わずただ傭兵業をしていたら、自分は貴族や王族というものが分からないままだったろうな。どういうことを考えている者がいるか、全く知らない人生になっていただろう。
    (それにこんな規模の夢を自分が持つとは思わなかったし……。)
     自分はまだまだ、皆と過ごした大修道院での日々のようなものが好きだなと思っただけの、そこからそれらを護ろうとかの一員に加わり立ち上がったばかりの──彼と比べたら、まだまだな一人に過ぎない。

    「……夢、ですか。……そうですな、それなら私も貰ったやもしれません」
     夢、という言葉は今のナデルには少し気恥ずかしいものだった。嫌いではないが……年齢的に。
     両国のツタや架け橋となるよう動いているし、そんなようには見えないかもしれないが、それは表向きで、こういう場でじっくりというのは……。しかもあまり恥ずかしげもなく堂々と、表情を変えずまだ真っ直ぐと言える年頃が相手となると、その眩しさに懐かしさすら感じた。
     しかしこれが同じく“師”という仕事をしている者なのだから、自分が間違えているのではないか、恥ずかしさを感じているこちらが未熟に思えてくるというものだった。

     ……二人は少なからず、彼に期待している。だから彼の力になりたいと思うのだろう。教える役目を終えた後でもこうして関係が続いているのがその証拠だ。双方の実力ならばいつでも彼のそばを離れられる。
     だが、頂点であったり主君にでもならない限り、生活のためにも誰かのもとで蓄えを得なければならない。その相手を選べるというのなら、二人の選択肢は一つだった。
     ……いや勿論、ナデルには立場上その上を行く存在──クロードの父、もとい「王」──が居るのだが。どちらが若々しくいられて愉快そうであるかで言えば、一択だった。



     二人は食事や何かそれぞれに染々と浸り、互いに一皿…………空いた。
    「……遠目からでしたが、幼い頃の、何の抵抗力もない頃の坊主は、よく泣いてました」
    「……」
     ぴくっと動きを止め、話をよく聞こうとベレトは静かに食事の手を止め、酒の入った器を近くに移動させ、手にしたままになる。
     ナデルは考えながら話しているのか、ゆっくりとした速度で話していく。
    「よく歳上の、図体ばかりデカい奴等にやられてましたなあ。でも此方じゃ変わりもんと思われるほど、純粋で、好奇心旺盛で。でも大人しくもあって物静かでもあった。よく笑い、分からないことは何でも聞くような、不思議な空気をまとっているような、そうでもないような子だったと昔身近なものに聞きました。
     ……あいつらはたぶん、坊主のそういうところが羨ましかったのでしょうな」
     そんな風には生きられなかったから、とナデルは現実的に生きるしか選択肢がなかった子達には余裕がなかったのだと付け足す。
    「けどそんな姿を俺が実際にこの目で見るのはもっと先のことでした。
     あいつが俺の前に自らを鍛えるため頼みに現れたときの様子は、何かに対して静かに憤っているような。けどどうしようもなくて、周りを気にして不安もあるけれど、その憤りと負けん気で全部押し返してるような。全てが未完成の癖にこの世に存在する疑問や不満をとんでもなく抱いていて、気を張って強がっていて、時に生き急いでいるような……ちっこい癖に笑顔の少ない、可愛げのない坊主でした。……想像出来ますかな?」
    「…いや……」
    「でしょうなあ。そんなでしたから、その真面目さ加減がどう転ぶか読めない、危なっかしい奴と思いましたが、王族であること、戦士としてやっていけるものは十分感じられましたよ。
     ──ですがねえ。これが、かなり、不器用でして。…下手でして。
     あいつは他人に格好悪い姿を見られるのが嫌な奴で、みるみる最初の仮面が崩れて行きまして。それで、“目を配ればちゃんと良い方に転がる奴”だと思いました。けどそれはそれで、コツさえ掴めば何処までもすいすい行くもんだから、此方が振り回されそうにもなりましたよ」
     ははは、と笑いながら手を焼かされた事を明かすナデルに、同情の頷きを返す。
    「けど凝り性といいますか、自分で問題を見つけたら止まれる奴で。納得のいくまでずうっと同じことを繰り返したりもしてましたな」
    「へえ……」
     それには少し、覚えがあった。おそらくナデルのもとでも新しいことをさせてみたときに、それが顕著に現れたのだろう。
    「んでいつの間にか、教えた覚えもない事をやったり……。
     あいつの熱心さに応える以外は特別な扱いも何もしていないつもりだったんですが、笑みを浮かべながら自在に弓を扱えるまでの奴になってましたよ。剣等もなかなか行けましたしな。勿論上達していく過程は見てきましたが、俺が斧を用いた戦闘を得意としてるのもあって、驚かされましたなあ。
     まあ“失敗するときはする”のは、今でも変わらんようですが……。毎日あの手この手でいじめや嫌がらせを受けたりしながら、よくやると思ったもんです」
    「……」
     少しだけ酒を口にして、食事に戻るベレト。……さっきとはまた違う味になった気がする。
    「……ほほお、美味そうに頬張りますなあ。坊主から聞いた通りです」
    「……何と言っていた?」
    「異次元の胃袋だと言ってましたよ。実に美味しそうに食べるとも」
    「そ、そうか…」
     ちょっと気恥ずかしいが、もてなしの用意をする際などにどういう人物か説明をしないといけないときもあるだろう……。と自分を納得させるため言い聞かせる。
    「一度は見ておいた方がいいと言ってましたが、坊主の言うとおり、良いものが見れましたなあ。──がっはっはっ!」
     そう言うと豪快に酒を継ぎ足して飲み、ナデルは飯を喰らった。その様子もまた見ごたえがあったが、ベレトはあまり顔を上げることが出来ず、小さく切ったものを口に運び、もそもそと口を動かした。
    「……」
    (一体何を吹き込んでるんだ彼は……。)
     ナデルの報酬はこれが目的だったんだとようやく思い至った。


     互いに器も皿も空になった頃、改まった様子でナデルに声をかけられる。
    「ベレト殿」
     自然とこちらも背筋が伸びる。
    「これからも坊主のこと、どうかよろしく頼みます。俺では坊主の心を開き、解きほぐすまでには至れませんでしたからなあ」
     丁寧にお辞儀をされる。
    「……勿論だ。でも彼は彼なりに、貴方を信頼し、頼りにしていて、代わりはいないと思います」
    「……嬉しいことを仰いますなあ」
     そんな言葉を交わし、終わりの空気を感じたときだった。
     来客を知らせる軽快な音が聞こえてくる。店員が歓迎の言葉を発し、客は席を探すことだろう。
    「……? ──!」
     だがその客はベレトを見つけ、相席を狙い迷いなく歩いていく、つもりだった。その客にとって唯一無二の存在が一人で訪れていないことに気付いて眉を潜める。踏み出しそうになった足を止めて迂回して……その相手を見て意外そうに驚き、嫌な予感でもしたのか一人の店員の仕事を一時的に預かる。
     ベレトはそれに気づいたが視線を落とし気づいていないふりをした。そして──彼はやった。
    「お水のおかわりは如何ですか~?」
    「ああ、もら───!?」
     ナデルがそう言いながら顔を上げると、じとーっと見下す、元教え子の姿がそこにあった。さっきのキラキラほわほわした、感じのよい爽やかな青年声を発したのが嘘のように、どこか冷やかに牽制を込めた目でかつての師を視線と圧で射抜く。
     ──が、彼の昔を知る師にそんなものは通用しない。
    「おい小僧、何やってんだ?」
    「こっちの台詞だぜ、ったく……。
     先生……何か迷惑な事とかされなかったか? 大丈夫か?」
     うるうるとした声と瞳でこちらの手を両手で包み、顔を覗き込みながら聞いてくる。妙なところで高く発揮される演技力に、苦笑しながら頷く。
    「ああ、楽しく食事をしていただけだよ。
     クロードも一緒にどうだ? ……ナデルの奢りだぞ」
    「んなっ、先生?! それは貴方だけ──」
    「そりゃあいい! いやあ~~悪いなあナデルぅ~。
     ──あ、そこの店員さーん、ちょっといいかー?」
     “はい、ただいま~!”と若いが学のありそうな店員が注文を伺いにたどり着くと、声を上げて大きく仰け反りそうになる。クロードであることに気付いていなかったが、流石にこの面々に並ぶと誰であるか、その服装等が違っても一目瞭然だった。そんな店員に“驚かせて悪いな”と慣れてる様子でクロードは微笑む。
    「おい、坊主! ……はー、ちゃっかりしてやがるぜ、全く……」
     ナデルは諦めたのか半目になり、肩肘を着きながら酒を煽る。
     それらを愉しげに眺めていたベレトだったが、注文後も興味深そうに品書きを眺めている彼に声をかける。

    「クロード、水をくれ」
    「お、いいぜ。入れてやるよ」
     器を差し出すとそれを手に取り、水の入った入れ物を斜めに傾けていき……器が満たされていく。
     ゆらゆらした水面にきらきらと光が反射して、綺麗だ。

     ──まだまだ、楽しい時間は続きそうだ。



    おしまい。






    ーーーーー



    あとがき
    お読み頂きありがとうございます! 以降はネタバラシだったり、何を考えながら書いたのか等の読了感を削ぐかもしれない可能性がある話も飛び出すと思いますので、気になったときにでもどうぞ~。

    **

     実は作品自体はほぼ出来上がっていたので、前作から間をほとんど空けず、もっと早くうpすることも可能だったのですが……正直に打ち明けると、ちょっとこちらの受け取り方が悪いのかもしれませんが少々心外な文を見てしまい…。それくらい理解して書いてるが…?! と傷心しておりました。
     それでなかなか筆が取れず、けれど取ってみると大筋に変更は全くないものの、何だかんだ全体的に表現等の修正やら、主に丁寧めに加筆をしていった結果、目標というよりは予定として掲げていた『8月中にうpする!』がギリッギリになってしまいました。
     腑に落ちるところまで持っていったり、気持ちの整理をつけるとかって本当に難しいです。

     ただ今回のことでちょっと良かれと思って、「この界隈(FE好き?風花雪月好き?)は理屈好きなんだなあ」と思い、入り用かと思ったのが仇になったのか、あとがきが余計なものになっているのでしょうか、それなら次回からやめようか、作品から生じた解釈じゃなくて、作者にたいしての思いが垣間見れ「こいつ分かってない認定」されたっぽいのが何よりも自分でも予想以上にショックでしたし、こうして作品の下に書くのではなく、あとがきだけの枠を用意して、そこに書き加えていくのがいいのかなあ……など、改めて考える機会を貰えたかなと思いました。始める前から迷ってたんですよねその辺り~~。次からはそうしようかなと思います。
     

     ──さて、それでは作品の話に移らせていただきます。
     まず子供になったネタは書いておきたいかな~とちょっぴり思っていました。
     正確には過去の話を書く機会があったときに、ちょっと明確めな回想があったらいろんな意味でオイシイかもなーくらい。作品に起こす仕掛けとか作用的なそんな印象的な感じの意味で。
     でもただ書く(表に出す)のではつまらない。そこで前々から考えてたものと絡めて面白く書くという方向で、これまた前々から「現クロード君(本編クリア後の俯瞰視点的)には、二人の師匠が存在するということだな。んー、この師匠同士が仲良いと面白いよな~」と思っていたので、ナデル師匠にご登場頂くこととなりました。
     つまりあまりガッツリ小さくなったprettyなクロード君を中心にして、こうして一緒に散策したりな話までは考えてなかったのです。
     でも、僕達きょうだい(家族)じゃん? なら、なるべく何でも知っておきたいじゃん? 困ってるときすぐに助けに入ってやりたいじゃん。無論、適度な距離感で。入り用なら誰よりも早く駆けつけたりさ、すぐ登場できるようしたいじゃん?
    「──ナデル師匠、過去の話をぜひ聞かせてください!」
     という感じでスタート切ったのが、この作品です。……自分にだけでいいから教えてくれ! って思ってるド真剣なきょうだい先生は沢山いると思ってますが、如何かな……?

     特にクロードくんは「きょうだい」に秘められてることすら作中明かされていなかった、そこ(インタビュー)で明かされたからこそ、いろんな方が愛情深く練られ出されるものが面白く、何だか本当にテレビでやってる「こうだったかもしれない……」が多い歴史のバラエティ番組やそういうコーナーみたいで、自分も自分が思っているものを一度ちゃんと抽出して何番煎じでもいいから、頭のなかでほわわ~んとさせたままを一回やめようと思ったのもあります。
    (もしかしたらまた超雑に扱って、某ゲームで出してくるかも知れないしね!!(超絶危機感))

    (※ぶっちゃけ自分は一部製作とはとてつもなく……いや死ぬほど気が合わないんだろうなと思ってるので。)
    (※そして歴史好きというほどでは全然ない浅さなんですけど、謎は謎なままな方が良いんよ……(懇願) 冒涜という言葉を知ってるか?とも思うんで公式からの正解は、特に子供クロード君は要らないんだけどなあ~~~と結構強火に思ってます。すみません。
     実装するなら 頼 む か ら エガとディミだけにして………もう安易に巻き込まないでッッッ……(怒) その代わり青獅子等はあんだけ語られると素直に見たい……出して良いぞ……。と思ってます、はい。)
    (・まあそれ以前に「お祭りゲーなんだからもう少し平等に実装したらどうなの…?」と思ってるんで、そこからして思想が合ってないんですけどね……。なのでプレイもしておりません。こういう環境で推しが例えば偏って実装されてもあまり喜べない、笑えない質なので。申し訳ないけど心の平穏を第一にしております。)

     ですが、結局はそんなに……でしたね!(爆) ぼかしてるし、中身そのままじゃダメだろうがこの下手くそが!!、と自分に突っ込みつつ、どんな幼少期をうp主が考えてるか、ここにさらっと書いておこうと思います。……好きに妄想を広げてかいてもいいのよ(黙れ)


     クロード君の幼少期は自分のなかでは、第一時期と第二時期があると思っていて、第一はめちゃくちゃ可愛らしく、ちょっと甘えん坊(…不安、びびり、気や器が小さい様子、等々)でもあって、大人しくもとにかく「何で?」と聞いたりそういだくような、危機感(という勘や頭のよさ)よりも好奇心旺盛さが大きく勝るピュアっ子な時期で、第二は周囲から押し付けられたものによって「身に付けなくては」と強い自我や自覚が芽生え、野望も出来て彼自身も語っていたような地に足を着け始めた(ちょいシビアな)少年漫画のような頃、という風に考えてます。
     今回の話のなかでの見た目は第一時期です。物心はそんなについてないから自分でもあまり語れず、彼を受け入れ知っている者からしたらエンジェル級なかわいさだったに違いないと思ってます。ナデルが主に知っている、彼のもとにいた時期の坊主の姿は第二時期、という感じです。

     この「超可愛かっただろ!!」捏造は、とあるお二方の創作を見てうp主が腑に落ちたためです。
     大人しいし非力だし、人見知りはするしビビるし不器用だし……正直何も出来ない、でも笑顔はまじでかわいい……という育ちのよい、まだ庇護のもとにありそうな坊っちゃんな感じをとある方がイラストだけでなく漫画にもされてました。あのかわいさはやばいね。天下取れるね……(?)
     ただし日本の方ではなく、向こうの方なので向こうの言葉でのもので、正確に読めないのだけが残念です……(´・ω・`)
     もうひと方おりまして、そちらも向こうの方なのですが2,5~3等身くらいのお人形を作られる方のものを見て胸にズギューンと刺さりました。ありゃ~~~やばいね、そうとうだね犯罪だね……あ、いや犯罪級のかわいさ、美しいお顔だったね……。
     正直生まれのせいでのいじめは分かるのだけど、王族やぞ……?! と思うと「(実の兄弟含め)怖いもの知らずのお馬鹿さん連中」と考えるのが妥当であるけど、それでは短絡的過ぎるなあと思って、あとほんの一歩理由が欲しいなという感じで、完全にはどこか腑に落ちてなかったのです。なーんか理不尽すぎるなと。
     ところがそのお人形さんを見たとき、「何という美しさと可愛らしさの共存……!!」と思ってようやく腑に落ちたのです。
     要するに、「美しいもの、ただそこにあるものを人は無責任に汚すよね」ということ。自然や宝石とかね。そういうことしない傷つけない類いではなくそういう大多数側のこと。勝手に人間が価値をつけ、値段をつけて取引してるだけ。本当は地球のものであって、誰のものでもないのに。それこそ真の宝だというのに。
     野性動物と比べて自然とあまり共存して生きていない(彼らに比べて距離がある)からそういった楽しみ方や親しみ方、ありがたみ等が薄いんでしょうかねえ……。まあそこまでいくと話が壮大すぎるので、一度脇に置いといて。
     元々そういった美しいと可愛らしいが共存してる系のドールは好きでしたが(見る専)、ここまで合うとはな……と。第一時期の見た目はこういう感じであり(あそこまでの明確な中身がまだ無いから雰囲気や人相に出ない)、だから袋叩きのような目にも遭い、まるで少年漫画の主人公やそういったキャラのような背景や性格を持つようになったのかな、とようやく思えたのです。当然クロード君とはいえその見た目のことにもう何段階か無自覚だから一人じゃ危険だわ……と先生もなるって感じで。
     何にしても、気の毒で可哀想な話です。あまり言いたくないけどね可哀想とかさ。レッテル貼りたくて知りたがったり考えたいわけではないからさ。


     さて、子供になっちゃったネタをするにはどうしたらいいか、というところにポロッとお薬ネタが降ってきました。超ベタですね。息抜きに書いてた作品なので個人的にはこんな感じでよいのですが。でもお薬ネタは正直書く予定は全く無くて。でも子ネタであり小ネタで最適な、時短!説明も不要!なものとなるともうほぼ限られますよね。
     加えていい感じの話にしたいと思ったので、本当のお薬ネタはそこ(子供になっちゃった)ではなく、そこからちょっとエッ……な方向に舵を切るでもなく、「せっかくだし……何というかこう……この状況にならないと難しい(かもしれない)、何かがしたい。……過去の傷をどうにかケアするみたいなことは出来ないかな~……むむむ……」(真剣)、みたいな真面目路線なところで回収したいなと思いながら書いてました。暫く姿が戻らなかった謎も、戻った謎も実はそんな感じだと思っていただければ。
     やろうと思えば皆は「過去に会ったことがある話」を構築出来ると思うんですけど、彼はかなり本編で語られていた設定を崩さないと、ねじ曲げないと、反則しないと出来ないなと思って。
     じゃあ先生(きょうだい)がその辺りを回収してしまいましょう、という感じでなんか裏技っぽいですけど、、、先生という存在が裏技も裏技っぽいしなぁ~と。──無論、必然ですがッッ!(一応の強火強調)

     そんな具合で時期も本編中ではなくその後に自然となりました。あ、とくに書きませんでしたけど時期は現在と同じく8の節くらいを考えながら書いてましたが、ちょっと暑さが落ち着いてきた9節くらいでも良さそうだし、お好きに想像していただいて構いません。
     そしてベレトというか家族の動きで、本人のいないところでいろいろ聞いて(自然と耳に入って)彼のことを補完しつつ、きっと本人に尋ねたりもしてる(そういう会話を時にはして、仲を育んでいる)んじゃないかな、みたいな。
     今回ベレトにちょいと頑張ってやってもらったこと(うp主が書いて演じてもらったこと)自体は結構普通~な感じのことなんですが………実際に見たい、その家族めいた行動を起こす先生の姿を……! と思いながら書いてました。(一瞬たりとも逃さない姿勢である情熱的なカメラマン風に)()

     あとはちょっぴりナデル師匠が実は一人で抱え込んでいたやり残しというか。心残りというか気掛かりというか。そういうものの共有という感じです。
     見た感じ師匠として誰にでも平等に接していて、大雑把そう不器用そうといっても、そこは気にかけてるだろうなと。(…向こうはちと洒落にならんくらい体育会系多いんだろうけど。でもそれは場所や人だけでなくあんな巨大な生物がいる時代で、私達の現代が「ある程度でもそうでいなくちゃいけない」ところから抜け出せてるから(ああいう生物が絶滅したから)、なのだろうみたいな。)
     どっちが先生として優れているかではなくて、歳が近かったら出来ることがあるのと同じで出来ないこともあるだろう。経験値も影響するだろうし、分かっててもどうしようもないことってあるだろうから、そこを正直に言って託すというか。大事なことですよね。
     当然ナデルからしたらベレトはちゃんとしてると思ったとしてもまだまだ若人な印象があるでしょうし。
     そういう「本気であるからこその教育者同士のお話」というのがあったらいいよね~、みたいなものはずっとありました。ここもっと仲良くなろうぜ。
     それとちょっとだけカップの2(タロット)からも案をもらったかな。大分前になりますけど。あとはカップの3もかな。最後の方にちょこっとだけ。どちらもこの二人、三人に当てはめると良い絵のカードになるなあと…。

     ……ああそうだ、これは不要な中でも不要な話と思いますが、彼が一度引っ込み、装い新たに出てきたときの格好である「非戦闘員の調合士見習い」は、漢方とかに強い東洋系なイメージ(俗に言う中華っぽい服装)をしてますけど、うp主はコエテクが出している某錬金術士シリーズが好きな者だったりします。そこから考えた言葉であり、格好もその東洋系かこちらの作品っぽいものでもいいな~と思ってます。めちゃ要らんところで妄想捗ってたって話です(笑)
     だってやりたいじゃん、クロード君のアトリエ……。絶対面白いと思うんですけど。なので正直そういうキャラをこんな扱いするとは思わなかったね、聞いてるかな無双の製作さんよお……。(落ち着いて)


     ──以上。そんな感じでこの作品は作られていました。
     あとどうでも良い話ですが、今書いているなかで二番目に未来に片足突っ込んでいる話でした。ああいや生産性がないし、元々見る専門でいるつもりだったので数は本当に無いし、今年が五周年という自分のなかでは「一年中お祭り年でしょ」と思ってるから、いつ何を上げても良いだろ!と枷をゆるめることが出来ているから浮上出来ているだけなんですけどね。
     そして元々もっとテンポ良く読めるものにしたかったので、今回数字を振ったものにしたんですけど、気にしいな性格には意味なかったぜ!!! 前回と違う書き方なのはそういう意味なので深い意味などはございません。ごめんなさい。

     そして幼い頃のクロードくん妄想には上記お二方だけでなく、小鹿の映像にもズギューンとやられてます。可愛すぎるぞ……。待っている姿が健気ですし、人に助けを求める姿もまた泣けます。参考にされてるのかムーブがクロード君とも被ってるんですよね…。そしてあまり警戒心なく人に近づく子もいるなか、人が鹿を狩っているという現実…。
     非常に有名なアニメーション作品である「バンビ」を見たことが御座いますでしょうか。無いなら見るんだッ!!(急に叫ぶな) 俺からはそれ以上は語らねえが、ここまで辛抱強く読んでくれてるあなたには見る価値が非常にある作品だとうp主は思う。何よりあの世界観が合えば美術やキャラに魅了され、癒されると思いますよ。


     それとタイトル付けにずっと頭を悩ませてました。元々この作品は根っこ、起点がちょいギャグ寄りでテンポ良く読めて、読んだ後に残るものはほっこりとしたものになると良いなという、あんま記憶に残らないけど、読了感のよいものになるといいなと考えていたので、
     イマドキな中身をそのまま説明してる感じの、子供ネタと分かりやすいタイトルか、書いていくうちに段々シリアスが足されていくこの作品らしい、もうちょい考え抜かれた感じの方がいいのか、しばらく揺れておりました。
     といっても候補はず~~っと浮かばず……。いい加減まずいと思って辞書を開いたらその言葉が出てきました。
     【渇しても盗泉の水を飲まず】…かっしてもとうせんのみずをのまず。
     これを元にちょっと考えたかったのですが、そんなセンスはないしそのまま調べて知るという発見も楽しいと思うのでそのままにさせていただきました。
     孔子の行いからの言葉で、この言葉の意味は手持ちの辞書によると──どんなに困っても間違ったことはしない。と書いてあり、彼にぴったりな言葉かなと思って採用致しました。
     他の辞書では──【渇すれども盗泉の水を飲まず】、と書かれており、喉が渇いても「盗泉」という悪い名前(盗泉とは、「盗人の泉」という意味。)の泉の水を飲まない。苦しくても不正なことはしない。と書かれていました。
     それとその言葉には続きがあり、「悪木」という名の木の下では休まない、とあります。簡単に言えば高潔で頭のイイ人はいろいろ考えているもので、楽をするにも安易に飛び込んだりしない、ってことのようです。
     シャミアさんとの支援をうp主は思い出しましたね。参考にされてるのでしょうか……? どちらかというとこの言葉からではなく、<月>のタロットから「君が思うように、世界は危なく構成されてるものだ」、というところから来ている気はしますがね。


     あとは、普通にいい人(使い潰されるレベルで)なんよねという、人柄のよさや誠実さや品性等から、金鹿や彼の本質、奥底にあるもの=そんな闇にも負けやしない光や美しいもの、をまるで「水」や宝石のようだとよく連想するのですが、今回は「水」に比率を置いて、状況も気持ちも昼夜に行ったり来たりとさせてみたつもりなのですが、そういったところも楽しんでいただけてましたら幸いです。(「宝石」は前回のほうで意識してたりします。)

     水と言えばことわざのなかにある「覆水盆に返らず」という言葉。自分は意味を雑に間違えて捉えていて、積み重ねてやったことは不正解かもしれないぞ、取り返しがつかないことをしてるかもよとか、やったことは取り消せないから注意しよう的な、自分の器の大きさに問題があって(小さくて)水が溢れてしまうのだ的な……自分に対して警告や戒め、注意喚起のような言葉に思ってたのですが、
     本当は別れた相手が出世したことで寄りを戻したいと言った元妻に送った言葉で、盆の水を地面にこぼして「これが(器に)戻せたら戻りなさい」と言ったそうな。
     これを知って自分は、虐めてきたりした相手にこれくらいは思っても、言い放っても良いだろうになあ……とクロード君のその背景に思いました。(いやまあ、その判断力で時と場合によって相手にそう言い渡したりするときもあるだろうけど。)
     そして【渇】という字。パッと辞書を見ただけでも「渇く」とか、「しきりに欲しがる」とか「切実なこと」とか。「枯渇」「渇望」「のどが渇くこと」「水がなくなること」とあり、第二の故郷であるリーガン家が「水の都」であり、先生や皆がいるというのも何だか良いなあ、納得かもしれないなあと。…………俺が、俺達が……良い泉の水だ……!!(?)
     またあまり自分は聞いたことのなかった言葉ですが「渇仰(かつごう・かつぎょう)」という言葉には、“心から憧れ、慕う”という意味があるようで。調べるといろいろ出てきますが、「これはもう信仰に近いかも」と先生を信じているという気持ちを打ち明けてくれたシーンを思い出しました。

     ……そんな感じでございます! 全て屁理屈に聞こえたらごめんなさい。英語でもこれに近いことわざがあってそれがまた良いんだ。
     Better to be beaten than be in bad company.(悪い奴の仲間入りをするくらいなら殴られるほうがましだ。)
     こっちのほうが彼らしいかもしれませんね。特に幼い頃や抵抗する術が乏しい時なんかは自分にそう言い聞かせてたかもしれない。

     彼の「手段を選ばない」は、「人を助けるため」等であるのが良いんですよね~。そりゃあパルミラで浮くだろうなあって。フォドラでもそれで浮いていると言って良いしな。。。(エガとディミの二人が関係が在りすぎるとも言う。)
     でもその過去がありながら人を嫌いにならず、線を引いて決別することはせず、王族として責務を全うしていているところというか、そういうところが自分が最初から求めていたFEのキャラ像だったんだよなあ……と。そういう感じが、根がそういう気質であるのが本当に個人的にはたまりません。王道大好き。──護らねば、この坊っちゃんを……。
     マジで迫られたら身を守るため、毒薬などを使ったりもして回避しながらの人生だったのだろうなと思ってますけどね。対義語が「背に腹はかえられぬ」とネットでは書かれていて納得でした。良いんだよ、王族はそれくらいで。

     生き抜いていくには仕方ないことが山ほどある。しかし、志の高きものはあれこれと思い悩むものである。……まさに彼のことだなあと自分は思います。
     あとですね…………他二人よりいろいろなことが味方して、軽傷で済み、生い立ちも比べればマシで先生引ければ勝ち的な、ずるい的なラッキー的なこと書かれてたりするの見ると、──おいおいおい、ちょっと待てよ。冗談で言ってるんだよな? と思ってしまいます。本当に信じたくなかったけど、でも無双なんてものが作られるくらいには実際に逆恨みされていたという真実。
     これには本当に───バッカ野郎。んなの一線を越えないようずっとしてきたから(「渇しても盗泉の水を飲まず」)に決まってるだろうが。
     ……と、うp主はずーっとずぅーーーっと思っていたのです。意外と本当に日頃の行い(分かりやすく善行を積むだけがそうとは言わないよね)のお陰なんじゃないかなって。こんな時代なのにさと。
     だというのに残念ですね、そう感じ取ったり、他者のことを彼のことを「こうなのだろうな~」と考えられない人がこんなに居ようとは……。そして無遠慮に入り込まないというマナーもないとか……。「抵抗するせいで~」とか、ちょっとさすがに生徒という手元を離れてるなら言いたいことが滅茶苦茶あるぞコラ、って感じです。
     翠風がそういう、善良なものたちだけでなく、野望のため、全ての者のために頑張ろう的な、そういう物語だったから。
     王様ってそういう異なる考えを抱えて生きている者達も寛容に見て、保護してやったり保障してやったりしないといけないんだぜ、分かってるか?大丈夫か? と思いながら歩んでいたので。意見が合致した翠風は本当に大好きなルートです。銀を除いて他だと「一年間学校で皆と一緒に過ごした意味は?」と正直思ってしまったのでね。


     ──さて最後に、少しノリよく終わりましょう。
     今回は書きながら意図せず、これ……デートでは?? …ランデブーだな?? みたいになりました。恐ろしいですね。イチャイチャしやがって。爆発しr嘘ですもっと見せてください。
     真心的なものを発動しながら書いてたら、というか基本的にはこういう話をやりたいんだと伝えたら、あとはキャラ任せにまずは世界を歩ませるのですが、すいすいそう進んで行くんだもんよビックリだよやりますねぇ!()
     彼らの動向をレポートしつつちょこっと此方で糖分足したりCPとかプラスのため、話にするため調整させてもらってますけどね。なんかこのタグらしいことをしないといけないなーみたいな気持ちで自分は足してるんですけど皆さんはそうじゃないんだろうな……。
     日々をキラキラと愛しく、美しさや価値を感じ生きれて、誰かのそれも大事に思える気質が本当に素晴らしいと思うから、沢山貴方も味わってとこちらもついついあげたくなってしまいます。幸せな時間を。
     なんて真面目に考えてしまうからでしょう、恋愛よりも自分はそっちみたいな。見るのは好きなんですけど自分が思っていることを出すとこうなるみたい。なんとつまらない奴なのでしょう。
     でもその尊さがまず好きだから仕方ないですね。これからも気が合えば見てやってくださると嬉しいです!
     


     それでは、こちらまで読んで下さり有難うございました! 何か不足してると感じたらまた書き加えていきます。それでは~。


    ーーーーーー

    おまけ 
    【うろ覚えな経緯振り返り ~今作に少し焦点絞ったもの編~】

    ?(数年前)~    クロード君の過去や行動の理由や仕方、やりたいこと等に大変共感だったりを覚える。
    本編クリア後     向こうの民度やクロード君の過去等を想像してみる。
               想像していた幼い頃のクロード君に近い姿を見掛ける中、大変cuteなものと出会い、電撃と納得が走る。おのれナデル……羨まし…何で俺きょうだいなのに彼の幼少の姿を知らんの??() この世界写真などの撮影機ないしな……(泣)
               おおよその見てみたい展開が脳内で出来上がる。(が、今作品のような形にする予定は無く、やっても本命作品にどうにかちょろっと組み込む程度の予定だった。)

    ~数年、数ヶ月後 
    [◎世間 夏、FEH にて  祝・水着姿の級長達~!]
     別の格好解禁万歳~! ──えっ、振り回されて、やれやれコメントまで吐かれて可哀想…。ほんにこの姉弟は……。 たくさん寝て良いよ!!
     グラサンにウインクにサンダルにアイスとあざます!!可愛いねえ。これを愛さねえで何を愛せというんだ。 ブレスレットにうp主ぽわんぽわん↑↑心臓が持ちません。好きだ~~。愛してる。

    [△世間  無双発売]
    発売前 : 翠風後を始め、どのルートの妄想もその後のことを生真面目にずーーーっと考えていたため、何でやり直すのか意味不明……と思いながらPV視聴。元々酷くあった嫌な予感が言葉では言い表せないくらいとてつもなく増す。これだけ好きなのに様子見を決意するほどに。
    (ただし今回の倉花先生デザインのクロード君も好き。倉花先生きっかけでFE風花雪月にうp主は興味を持ったので、本当にその素晴らしい仕事に感謝した。)
    発売後 : いろいろ納得が全く行かず、銀英伝やアルスラーン等の作品を始め、狂ったように観まくる。(銀英:映画含むova全部と小説一巻。 アルスラ:ova全部と荒川弘先生版のアニメ全話と小説一巻。)
        + ちなみにコエテクで好きな作品は:影牢と蒼魔灯、戦国無双、アトリエ など

    ?(おおよそ見終えた後)~
       息抜きにこの作品の元、落書き下書きのようなものが出来上がる。

    [◎世間 祝・本編五周年!!]
     お寝坊先生おはよう!! さあ、皆で──宴だぁ!!
    (無双? 知りませんね。五年寝てる間にそんな諦めの悪すぎる悪意マシマシな悪あがきな醜い夢でも見たのかもね。ノブ野望ならぬ闇うごの野望(じゆうちょうに書いたやつ)。)
     ──実際、自分のなかにこびりついて体調とかメンタルを何度も何度も崩したけど、ちょうど良い区切りだったため、え、何それ?と「五年間寝ていた間にベレトスの記憶にも残らなかった夢」として処理することにした。さようなら~!!(満面の笑み)
    (※実際それくらいの賞味期限付きな作品に思います。好きな人はずっと好きで良いと思うけど、……五周年中なのにシェズを出すなそこぉぉぉ!!?! ……と、無双にも関わっていそうなFEHの方には思います。そういうところなんだって。本当に。)
    (○ 似…てもないように思うけど、これやるくらいなら戦国無双クロニクルの方が断然面白いんじゃないかなとうp主は思います。史実をネタにしたイベントが秀逸だと思うのです。それが良かったから興味を持つようなったので、うp主は。)


    ☆五周年なんだから一年中祭り、宴みたいなもんだろ!
      →無い勇気を出して作品をうpしてみると、再度決意。


    2024/07/24,25 前作完成 うp
     たぶん読み返したら今作同様、直したいところいっぱいになりそうな人生初完成物書き作品。
     三つ編みはただお洒落でやってるのか、誰かにやってもらったりしたことがきっかけで続けてたものなのか? を考えてみた作品。左右変えてやったりしてるし、うp主は後者なんじゃないかなと思ってます。勘。
     そこに「飲んでみなければ味は分からないけど、見映えの良い飲み物を作るような感じ」でタロットの世界(ベレト:愚者、世界。ソティス:世界。自然(属性みたいな))と月の、実は世界全体が夜の闇に包まれていて、個人のそれが明けただけじゃあ弱い!偉い人ならそんな程度で満足してはダメじゃ! という簡単には夜が真には明けない感じをミックスしつつ、人は日常の何処かに希望を見出だして生きてる、というようなものになったらいいなーと思いながら書いてました。
     あと彼の本名ネタ。まだ何も始まっていないんだけど、それがこれから始まっていく感じの雰囲気も出せたらいいなーと。──この時期はまだ天帝の剣も手に入ってないからね!
     何をそれぞれが抱え、大事にしているか。どんな途中の道中にいるのか、という距離もある頃の話でした。

    2024/08/31 今作品完成 うp
    2024/09/17 加筆修正 ※タイトルのみ今後変更の可能性あり
          おまけ(このうろ覚え経緯)追加

     たぶんもう本文には手をつけないだろう! というくらいには加筆修正しました。頑張った。テンポの良い作品を目指してたとは一体……。
     ナデルも知らない幼少の頃は誰かに直接聞きに行こうじゃないか。な、ベレトよ。そしてうp主にも教えてくれぃ…。いや割りとまじで知りたいんだァ…。
     読んでる方が持ってるイメージの邪魔を避けたりするため、幅を持たせるためにもパルミラの詳しい描写は避けてますが、うp主はアルスラーンのような感じやアラジンのような感じの街並みを想像しながら書いてました。読んだ方のイメージや知ってる情報(例:参考にしてるであろう国は、ズバリ此処ォ!など何でもヨシ。)が知りた過ぎる……お恥ずかしながら世界史に弱いんだ……いつか学びたい……。
     そして今日はなんと、中秋の名月!土星とのコラボ日! らしいじゃないですか。良いですねえ~!
     集中したり体調崩したり、たらたらノルマこなしたりしてるだけで日が経つのがあっという間で、加えて季節のことに疎すぎて本当に偶然でしたが、お月見する二人か……いいな…………。
     子竜のことを何とかして、謝罪をしたあと、気付いてしてたら良いですね……元に戻ったことだし。いや二人に伝えたらしてる姿をうp主に見せてくれるでしょうけど、今日のところは二人っきりで楽しむが良いさ……ムフフ。
     ということで急遽入れようかと思ったけど、やめときました。でも考えてみたいネタですねえ……ふむ…。


    ーーー

    (息抜き作品を手入れして出すのは一旦お休みして、本命に取りかかろうと思ってます。人を選ぶ作品ですので、飛ばして息抜き作品を待つでも全く構いません。)
    (◆本命作品の話。※以下、いろいろ落ち着いてきたら後で削除するかも?
     本命はズバリまとめると、所謂「僕の考えた友情支援S話」なんですが、ただ書いてもあれなので(これ若干悪癖でもあるだろう…)、先生が周回設定となっています。
     これはうp主の「初」が沢山重なったことによって、感想を元に作品になるようした感じ……ですね。ここではそう言い切ってしまいましょう。
     「初FEで、ある程度味わいたいものや考えを持っていて、(一番自分に合う)黄色を最初に遊ばなかったいちプレイヤーが道中感じてたものを作品にしたようなもの → 金鹿適正の高い先生が遠回りしてようやく最適な場所にたどり着いた話」
     となってますので、興味を持って貰えたら嬉しいですが、ご注意を。無理はせずさらさら~っと読んで頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。)
    (……ちなみにうp主は、赤→青→黄→銀の順で通ってきて、最初にやったところをよく言われてる実家と思えなかった類の者ですが、銀は「えっ同窓会、おわ……え…!?」以外は大方納得出来る作りで好きです。……これ以上は本命内かそのあとがきで語ろう。それでは~~。)
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    Replies from the creator

    Peri.

    DONEレトクロで主に三つ編みと名前をネタにしたお話です。何でも許せる方向け。
    ・捏造・想像的な所があります。
    ・湿っぽい時期のちょっぴり程度の糖度、距離感あり。
    ・ソティスも登場しますが最初の方だけです。金鹿の皆も登場しますが最後の方だけです。全体的にモブやモブ生徒達がざわ…ざわ…としてるイメージ。
    ・青春、しっとり、爽やかな日常もので平和的な内容となってます。
    “あなたの存在は、ああいうのと同じくらい──”◇自室

     せっかくなので着てみる。
    「───………、………………」
    「…なんっっっじゃその顔はぁ!!」
     自然と目が細くなり、眉間にしわが寄っていく。……ハッキリとは、何かを言うことも出来ない。
     若干言葉がおかしい気がするが、そう言う他ないくらいには何と思えばいいかすら定まらなかった。見る見るうちにそうなっていくベレトの様子に、ソティスはへそを曲げる。
     困った、と言うのも違う。そうではないんだ。時間が経てば経つほど結果的にそういうことになるのだが……本当にその時を待っている訳ではない。
     ……ただ、強いて言えば。自分はあまり肌を出すような服装を普段していないから、こうなっている……だけなんじゃないかなぁ、と思った。
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