巣に囲う パタ……、パタ……と力ない足音が聞こえて来る。
普段アイツの足音は〝仕事〟でない時はもっと元気で軽快な音をしている。最も、その元気な足音もここの所随分と耳にしていない。
それも当然の事だろう。何せアイツは自業自得によって再び妻を失い、今度は愛娘も失ったのだ。
亡くした訳では無い。ただアイツが、今まで通り問題を問題と思わず、気が付いても先送りにしたせいだ。家族との時間の取り方、娘を此処に連れて来る事、危ない、金にもならない〝仕事〟について。まともな大人ならばパートナーと一度は真剣に話し合った事だろう。
だがピーター・B・パーカーという男が、ただの一度でもそう出来ていたのなら、この結末はやって来なかったに違いない。或いは、結末がもう少し先だったか。
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