月夜と吸血鬼達「あ、今夜は満月だ」
城内から夜空を見上げてそう呟くと、ユキさんがオレの後ろから手を伸ばし、窓のカーテンを閉めてしまった。吸血鬼は明るい所が苦手だし、例え夜だとしても満月の夜はそうでない時と比べるといくらか明るい。だからユキさんは、満月の日にはほぼ必ず城内の窓のカーテンを閉めて回っている。
でも、彼がそうする理由が月の光が眩しいからだけではない事を、オレは知っている。その事を知ったのは、彼と一緒に暮らすようになって初めて訪れた満月の夜の事だった。
その日も今日と同じように、夜空には綺麗な満月が浮かんでいた。周りを森で囲まれた城内から見上げる夜空は村にいた頃とは比べ物にならないくらい綺麗で、オレはしばらくその光景に夢中になっていた。
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