背後は堅牢な窓、目の前には天敵たるユキヒョウ。
逃げ道はなくドクターは自慢のシマ模様の尻尾を膨らませた。低く唸りながら立ち上がってレッサーパンダ特有の威嚇を試みる。
しかし相手は丸みのある豹柄の耳を左右に動かしただけだった。頭のうえにある三角形の耳先までぴんと張って威嚇したが、効果は一度もない。
ここに来て推定、一週間ほど。木の実の収穫を手伝っていたら、吹雪になり気がついたらユキヒョウに拉致されていた。
犯人は「救助をした」というが、何故いまだにこの屋敷に閉じ込められているのか謎だ。
広大な屋敷と高そうな服装、出てくる食事から推定するに雪国の王であるユキヒョウは名の通りに偉いようだ。
「うっ、うう」
本能として立ち上がって姿を大きく見せようとするが、いかんせん相手が大きすぎる。
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