ロドスに来て直ぐの頃だ、指揮官であるドクターが、どうやら結婚してると聞いたのは。
でも子供までいるとは聞いてない。
応接室にいるドクターに書類を届けにきたら、見慣れた長いコートの後ろにフェリーンの太めな尻尾が生えていた。
コートと黒いスラックスの間。ドクターの背後へ寄り添うようにある両足、ときおり覗く小さな頭は銀色の髪をしている。
応接室の前で固まって、あたしは息を止めた。
(…もしかして子供を預かっている?とか?)
ふと小さな手がコートの裾を掴んで引く。そうして、か細い声が「お母様」と呼んでいた。
確定、の文字が脳みそに浮かぶ。
「ん、なに?」と柔らかな声で返事をし、ドクターがコートを開いたとき子供の顔が見えてしまった。
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