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    テス

    トマ昴 現在は十九時。今日は別々の場所での仕事だった。昴は撮影、トーマスは取材。大体が二人とはいえ、人気が出るに連れ一緒ではない時間も増えた。
     帰りのタクシーの中でメッセージを見る。

    『終わった! 俺が先かな!』

     受信時刻は二時間前だ。寄り道していなければとっくに帰っているだろう。犬みたいなキャラクターが「つかれたー」と寝そべるスタンプを眺めて、ふと笑う。

    『お疲れ。今終わった』

     既読がつけば3秒ほどで返事が来る。少し待ってみるが反応なし。これは寝てるな。昴は撮影系の仕事が苦手だ。実際、じっとしているのは案外疲れる。

     そうしている内にマンションに着く。エレベーターを待ちながら自室の鍵を手で探ると、二つ分の鍵が出て来た。
     ――合鍵を作った。昴とトーマスそれぞれの部屋で一本ずつ。互いに適当に見繕ったキーホルダーを付けて交換した。
     トーマスが昴に渡した鍵にはまるで飾り気のない楕円形のプレート(銭湯かよ、と言われたがよく分からない)、昴に手渡された鍵には黒い毛玉みたいな物体(百均で買っただろ)がぶら下がっている。
     互いにまだこれを使ったことはない。単に使うタイミングが無かったからだ。
     もしかすると今日、と少し期待をして、すぐにアイツのことだから忘れてるだろ、と思い直す。
     二人で同じ玄関を通ることが多くなってから、誰も居ない部屋に帰るのが少しつまらない。すっかり変わったものだとトーマスは思う。変えられた、の方が正しいかと昴のせいにしながら鍵を差し込む。
     扉を開くと数メートル先も見えないほどの暗闇。だろうな、と小さく息を吐いて灯りのスイッチを手で探す。恐らく返信も来ていないだろう。疲れているなら休ませよう、とそのままシャワールームに向かう。
     脱衣所に違和感。妙に湿気がある。換気扇を回し忘れたわけではない。数秒考えた後にシャワールームの扉を開く。床が濡れている。まさか、と、もしかして、の間で少々警戒しつつリビングに向かう。
     もしもの時のために左手を前に出しておく。室内の物の位置は全て把握してある。音を立てないように一歩、二歩。光に目が眩まぬよう用心して照明のスイッチを入れる。素早く全体を見渡すと――
     ソファで昴が寝ていた。

    「……おい」

     不法侵入ではなかったどころか、望んでいた光景に溜息を吐きつつ声をかける。反応無し。熟睡中。無防備にも程がある寝顔を眺めながら、不法侵入の逆ってなんだ、合法入室か、などとよく分からないことを考える。
     そっと髪に触れる。やはり少し湿っている。ちゃんと乾かした? と小声で溢してから、人の部屋に上がり込んでシャワーを浴びてスッキリして眠っている恋人を眺める。……ああ、可愛いな。
     据え膳食わぬは、とは言うが寝込みを襲うほど堪え性が無いわけではない。そのうち起きるだろ、と再びシャワールームに向かう。
     
     
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