トマ昴 現在は十九時。今日は別々の場所での仕事だった。昴は撮影、トーマスは取材。大体が二人とはいえ、人気が出るに連れ一緒ではない時間も増えた。
帰りのタクシーの中でメッセージを見る。
『終わった! 俺が先かな!』
受信時刻は二時間前だ。寄り道していなければとっくに帰っているだろう。犬みたいなキャラクターが「つかれたー」と寝そべるスタンプを眺めて、ふと笑う。
『お疲れ。今終わった』
既読がつけば3秒ほどで返事が来る。少し待ってみるが反応なし。これは寝てるな。昴は撮影系の仕事が苦手だ。実際、じっとしているのは案外疲れる。
そうしている内にマンションに着く。エレベーターを待ちながら自室の鍵を手で探ると、二つ分の鍵が出て来た。
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