ホープ弥鱈は窓越しに、ベランダで煙を吐き出した巳虎を眺めた。この部屋の家主は今現在寒空の下にいる男だが、弥鱈がいるときは決まって外で煙草を吸った。それがあの男の自分への配慮であることは分かっていたが、感謝する謂れはないと、弥鱈は思っている。そもそも百害あって一理なしのモノを壱號の真似をして燻らす巳虎の気が知れない。
暖房の効いた暖かい部屋から、紫煙に合わせて白い吐息が漏れ出る巳虎に目を向けた。カーテンを開け広げ、冷たい窓に触れる。
「巳虎さん」
聞こえるはずのない呼び声で振り向いた巳虎に、弥鱈は内心驚いたが、煙草を吸い終わった為だと気付き安堵した。
「……さみぃな」
言葉と共に震えて部屋へと入ってくる巳虎を迎える弥鱈は呆れたように声を上げた。
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