こっち、見てあと、五人…だけ…
柊夜ノ介は放課後、校門の前にいた。
今日は劇団の稽古も用事もない。生徒会の仕事も昼休みには終わらせた。ゆっくりと帰ることができる。
こんな時は彼女と、小波美奈子と過ごしたかった。
だが目当ての人物はなかなか姿を現さない。もしかしたらなにか用事があって帰れないのかもしれない…。
ならば、あと五人の生徒が自分の目の前を通り過ぎるまでは待っていよう。そう決めた。
あと四人…、三人、二人…
あと一人というところで、校舎から出てくる美奈子の姿を見つけ、胸が弾んだ。
だが彼女の隣には別の男性がいた。なにやら楽しそうに話しているのが、その笑顔でわかった。大好きな彼女の笑顔が見れたのに、それが自分に向けられたものではないのが嫌だった。耐えられなくて目を逸らすと、美奈子達に気がつかれないように、さよならも言わずに足早にその場を立ち去った…
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