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    dango1125

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    dango1125

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    柊夜ノ介オンリー展示小説です

    こっち、見てあと、五人…だけ…

    柊夜ノ介は放課後、校門の前にいた。
    今日は劇団の稽古も用事もない。生徒会の仕事も昼休みには終わらせた。ゆっくりと帰ることができる。
    こんな時は彼女と、小波美奈子と過ごしたかった。
    だが目当ての人物はなかなか姿を現さない。もしかしたらなにか用事があって帰れないのかもしれない…。
    ならば、あと五人の生徒が自分の目の前を通り過ぎるまでは待っていよう。そう決めた。

    あと四人…、三人、二人…

    あと一人というところで、校舎から出てくる美奈子の姿を見つけ、胸が弾んだ。
    だが彼女の隣には別の男性がいた。なにやら楽しそうに話しているのが、その笑顔でわかった。大好きな彼女の笑顔が見れたのに、それが自分に向けられたものではないのが嫌だった。耐えられなくて目を逸らすと、美奈子達に気がつかれないように、さよならも言わずに足早にその場を立ち去った…

    嫉妬か…
    相手は誰なのか見れなかった。自分は臆病者だ…。

    二人っきりの時なら、自分だけを見てほしいと、この気持ちを言葉にして伝えられるけど…
    もどかしいな…
    彼女の交友関係は自由だ
    もちろん交際関係も…
    だがそれでも…

    あなたを笑顔にできるのは僕だけがいい、なんて…傲慢だな…

    生徒会室から絵を描く美奈子を見ているのが好きだ
    絵を描きながら笑ったり困ったり、色んな表情をしていると思えば、急に真剣な表情でキャンパスと向き合う…。そんな彼女を見ているだけでも満足していたのに…

    僕はなんでも演じることができる。あなたの理想の人になれるよ。

    君の周りにいるホタルの中で、より一層輝いて見せるから…
    だから…

    「こっち、見て…」

    ひとりぼっちの帰り道で、届かない願いを吐き出す…



    次の日の昼休み、食事を終えて生徒会室へ向かうため廊下を歩いていた。ふと、窓から校庭を見ると、クラスメートとバスケットボールをする美奈子を見つけた。
    楽しそうだな…。
    思わず足を止めて、その姿を見つめる。他の人と笑っているあなたを見るのが嫌だったのに、その笑顔に目を奪われずにはいられない。
    クラスメイトが美奈子にパスしたボールが、高く舞い上がる。だがボールを受け取れずに、美奈子の頭の上をバウンドした。怪我はしていないのかと心配で、思わず窓枠を掴んだ前のめりになって彼女を見た。大事にはなってないらしく、みんなを心配させないように照れたように頭をかいて笑う。そんな姿も可愛らしくて思わずこちらが笑顔になってしまう…

    「ははっ…」

    気がついた時にはその場を離れて、グラウンドに来ていた。

    「美奈子さん」
    「あ、夜ノ介くん!」

    夜ノ介に声をかけられて、美奈子は笑顔で手を振った。それだけなのに頬が緩む。
    別のクラスの自分がこの場にいる。場違いかもしれないが、それでも…

    「僕も、混ぜてもらっていいですか?」

    勇気を出してそう言えば「いいよー」「一緒にやろう!」と、美奈子のクラスメイトに優しく迎え入れてもらい、輪の中に入れてもらった。
    みんなシュートをしたりフェイントを掛け合ったりして楽しんでいた。夜ノ介もボールを受け取ると、見よう見まねでシュートをしてみた。だがバスケットの経験はほとんどなく、ゴールを外してしまった。だが美奈子のクラスメイトは「どんまい!次は行ける!」「もっと膝を柔らかくして!」と応援したりフォームを教えてくれた。

    「腕ではなく膝でうつ…左手は添えるだけ…」

    ゴールを見ていたが、視界に入る美奈子の存在が気になって仕方なかった。
    何度も外して、それでも諦めきれなくて、周りの人に甘えて…
    幻滅されるのではないか…
    だがそれでも、自分には無理だ、できなかったからと諦めたくない…
    肩の力が自然と抜けて、ボールを飛ばす。ボールは綺麗な弧を描いてリングに吸い込まれるように入っていった…

    「やった!入った!生まれて初めてです!」

    夜ノ介がはしゃぐと美奈子のクラスメイト達も「やったあ!」「おー!おめでとう!」と喜んでくれた。
    みんなと片手でハイタッチをしながら喜びを分かち合った。
    最後に、まるで自分のことのように嬉しそうに両手を高く上げていた美奈子の手に触れた瞬間、その細くて小さくて柔らかい手をギュッと握った。
    みんなと同じようにハイタッチをするつもりだった美奈子は、突然のことに動揺し、頬を染めた。

    「やっぱりあなたの笑顔が大好きです」
    「え…」

    「あ、ありがとう」と美奈子は恥ずかしそうに笑う。
    繋いだ手がじんわり汗ばむ。恥ずかしそうにしているのがわかる。愛おしくて、目を細めた。

    「おーい。なにイチャイチャしてんだ?」
    「昼休み終わっちゃうよー?」

    美奈子のクラスメイト達は二人の様子を見てニヤニヤとしている。そんな様子に気がついた美奈子は「え?!えっと…」と目を泳がせてあたふたと不思議な動作をするも、自分から夜ノ介の手を振り解いたり、離そうとはしなかった。

    「はい。すみません」

    夜ノ介が手を離せば、ホッとしたような寂しいような表情を見せてくれる…
    あなたって人は…

    あなたがいると、あなたしか見えない
    あなたといると、僕にしかなれない

    格好つけていても、自分の原動力は彼女の笑顔なんだとわかった
    見ているだけじゃ物足りない
    あなたの笑顔を独り占めしたい
    ならば君の隣で、君を笑顔にして、僕もずっと笑っていたい…

    思うだけなら、いいですよね…
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