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    れっか

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    れっか

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    タル鍾のうさぎバース
    TLで湧いてがーって書いたので世界観がめちゃくちゃです……。うさぎバースの詳細は各自で回覧お願いします。

    #タル鍾
    gongzhong

    タル鍾のうさぎバース風呂場からあがり、冷んやりとするフローリングを踏みしめながらベッドの上に身を置く。滴る水滴をタオルに染み込ませながらゆっくりと体を拭いていった。
    「ふぅ」
     ほんの少し茹る体はこれからの快感を待ち焦がれているようだ。毛が密集する場所である頭髪と腰にある丸い尻尾を細やかに、丁寧に、香りの良いオイルで染み込ませて行くのが鍾離の日課であり楽しみであった。
     (愛も変わらず伽羅の香りは落ち着く。)
     細い手に琥珀色の粘性のあるオイルがとろりと落ちる。それを手に広げて自身の頭にある大きな耳をにゆっくりと馴染ませていった。
    根本には少しだけ。中間から毛先になるにつれて多めに漬け込んでいく。満遍なくしっとりした毛心地はずっと手入れをしているおかげで埋めたくなるような柔らかさだ。大きなうさぎの耳を顔の前に持っていけばふわっと広がる重厚な香りに酔いしれそうで。風呂から上がったとはまた違った意味で頬を染めていく。この時間がなんとも気持ちよくて。このまま眠ってしまいたくなるくらいに幸せで。

    「おっと。忘れていた。」

     ずっと触っていたいけれど耳だけではだめだ。
    またオイル手に取れば今度は腕を後ろに回す。
     フラッティの中でも稀にしかない発現しない貴重な部位であるマリィである尻尾だ。自分では見えづらいがここを触るたびに無意識にお尻の穴を引き締めてしまう。なぜならひと撫でするだけで背筋からゾクゾクするような快感が昇ってしまうから。

    「っ、♡…………んっ♡」
     
     さわさわと、自身の尻尾を揉み込んでいく。その度に感じ入ってしまって。歓喜に待ち侘びたように短いマリィをぴょこぴょこと震わせる。自分の意思ではないのに勝手に動いてしまう我儘な尻尾に我慢ならなくて嗜めるようにぎゅっと揉み込んでしまった。

    「ひゃっあ♡!っ、っ、……んぅ…!!♡」

     これは流石にダメだった。つい力が入ってしまった。握りしめるのではなくてここはデリケートゾーンなのだからもっとこう、優しく撫でるようにしないと。
     快感に打ちひしがれないように尻尾に全集中させる。小さい頃にふわふわで可愛いと言われた耳と尻尾は今でもちゃんと手入れをしていた。綺麗だと触り心地が良いと触られる度に褒められれば自尊心は高くなるものだ。そのおかげで光沢感のある艶々な毛並みは自慢である。
     ドライヤーで乾かして完成した綺麗な垂れ下がった茶色い耳に触れれば満足な仕上がりになった事に陶酔する。思わず頬擦りしたくなるようなふわふわな仕上がりだ。誰に見られても、触られても恥ずかしくない自慢の耳なはずなのに。
     
     世間はそれを許してくれない。

    (誰かに褒めて欲しい…。だがこの耳を見られればいい反応は得られないだろう。)

     小さい頃に愛情たっぷりに甘やかされた想い出を胸に、誰にも見られないように布団を頭まで被る。誇りと軽蔑が乖離する世の中は、鍾離にとってとても生きづらかった。

    *

     「あぁー、やっと終わった。ねぇ、今から時間あるなら夕飯食べに行かない?分かんないとこあるからバーガー片手に食べたいんだけど。」
    「食べながらなど行儀が悪いぞアヤックス。きちんと食べ終わってからなら構わないが。」
     そう窘めれば大袈裟に両手を広げて喜ぶ留学生に鍾離はほくそ笑んだ。アヤックスはスネージナヤから来た留学生であり、小さい頃から璃月の文化に興味を持っていたようだ。本人も理由は分からなかったらしいが導かれるように、漠然と璃月に気がつけば足を運んでいたという。
     夜が楽しみだねーと笑う傍ら、鍾離は耳が痒くて仕方がない。耳の鼓膜に細かな毛が入ってしまってうずうずする。普段はフラッティだとバレないようにベレー帽に大きな耳を収納しながら生活していた。帽子を被る者は少なからずフラッティではないかと怪しまれていたが、普段から古ぼけている雰囲気があった事から怪しまれることもなかった。

    「すまないアヤックス。少し諸用があるから先に行っててくれないだろうか。」
    「えぇーまた図書館いくのー?別の日でも良くない?」
    「この間の課題の資料を探しに行きたいんだ。あの講義を受講している者なら皆狙うだろうからな。」

     しょうがないなーとため息を吐かれれば素直にお店に向かってくれる様子で安心する。この間の課題などもらったその日には既に提出していたので全くの嘘だったが一刻も早く帽子の中を直したくてギリギリの嘘をついてまで、フラッティだとバレて避けられるのを回避しなければならない。相手がきちんといなくなった事を確認して、おそるおそる帽子をとった。

    「ふぅー………っ。」

     バサリと、大きい垂れ耳が頭全体を覆い隠す。夕焼けに光る毛の色は燃え盛る山吹色の様で。フルフルと頭を振れば振り子の原理で耳をだらしなく揺られる。耳の奥に詰まった毛を整えれば聴力が格段に上がって、廊下に響く会話一つ一つまで聴こえてきた。
    「この間ちょっと助けてやったフラッティが発情してきてさ!?犯してくれってめちゃめちゃこっち来たんだよ。来んなっつっても俺じゃなきゃ嫌だの一点張りでさー。まじで迷惑でしかなかったんだけど。」
    「うわそれは災難だったな。少し仲良くなっただけで性的なとこまで慰めてくれるとか勘違いするよなあいつら。流石万年発情期。」
    「猥褻魔(わいせつま)。」
    「歩く性欲。」

     フラッティを嘲笑う内容にドッと醜く場が湧き上がる。まだまだ立場が弱いフラッティはこうして揶揄われることが多い。耳の痛い話をこれ以上聞きたくなくて、頭の上から守る様に押さえても容赦ない誹謗中傷が聞こえてしまうのが辛い。
     犯して欲しいと無意識に相手に縋ってしまった後にどれ程己を殴りつけたくなる程後悔するか相手は知らないのだろう。それを必死に押しとどめながら生活する我慢が苦しいのを分かってもらう事は、永遠に出来ない。
     そう思えばアヤックスにこれから会う事が急に怖くなってしまった。そういえばフラッティについて聞いた事があった時、妙によそよそしくなってその話題自体をはぐらかされていた気がする。

     彼自体もうさぎをめんどくさく思っていたら?

     鳴り止まない最悪な発想が頭にちらついて目の前がふらりとぐらつく。あぁ、早くバレない様に帽子を被らなければいけないのに。手が震えて動かない。
     冷めた目で見られない様に。
     これからも友達でいれる様に。



    「鍾離〜。ごめん俺のスマホ机の上に忘れてた……か…も…………。」



     ガラリと、地獄の戸が開いた。
    何も写さないはずの深淵の瞳が、ばっちりとだらしなく垂れ下がったうさ耳の男を捉えてしまった。ぱちぱちと瞬きしながら小さな声で「……フラッティ…?」と聴こえてしまったのを鍾離は聞き逃せなかった。
     まるでそこだけ空間が切り取られたかの様に、時間が止まった様に、万物が静止する。

    「あっ………っ、」

     声を上げたのはどちらだったか。ガタリと音を立てて後ずさりながらも、アヤックスの驚いた顔が目に焼き付いて離れない。
     状況の把握。頭の回転の速さをここまで疎ましく思ったのは初めてだった。

    「〜〜〜っ、!………み、ないでくれっ…。」

     近くにあったベレー帽で耳ではなく顔を隠す。
    このドロップが自分だと思われたくない。どうしようという気持ちで顔は火照るように熱くなるのに、冷や汗は頬を伝って握る手先の温度が冷えていく。これは、違う。自分はアヤックスに発情するようなうさぎなんかじゃない。
     相手が何も言わずに無言でコツコツと進む音が見えなくてもわかる。
    嫌だ。来ないでくれ。数時間前にロトゥンとして楽しく過ごしていた時間に戻してくれ。

    「あっぅ…!!!〜〜〜〜。」
    「ちょっ、待って!」

     ガタンと椅子を蹴飛ばした音が教室中に鳴り響く。バレた。ばれた。どうしよう。そればっかりが頭の中をぐるぐる回って肝心な帽子を被る事さえ忘れてしまっていた。
     じわりと目元に溜まる涙で視界がぼやけていく。息づく暇もないくらいに熱の籠った吐息が喉を焦がして肺が痛い。一刻も逃げ出したくて、ウサギのように飛び跳ねてその場から離れようとする。だが見られたショックで脳の伝導が体に行き渡らず、右足が左足にもつれて盛大な音を立てて転んでしまった。
     その拍子にズボンが運悪く机の角に引っかかって、裾の短いシャツが捲れてしまい、急所となる尻尾のマリィをぽろんとお披露目してしまった。
    まるで茶色くてふわふわな尻尾を見てくれと言わんばかりの体勢で。外気に晒された事で普段あまり刺激のないそこがぶるりと震えた。

    「はっぁ……………ぅう”。ぅ…ひぐ…っ、」

     人間では考えられないぐらいに顔を覆う程の大きな耳にふさふさした丸い尻尾はどう見ても万年発情期だと揶揄されるフラッティのドロップそのもので。
     これ以上誤魔化せないと分かっていても、必死に丸出しの頭と尻尾を縮こませてその場で蹲ってしまった。
     これ以上一緒にいられないと分かってしまえば、心が張り裂けそうなぐらいに、苦しくて、嫌で。寂しくて。
     声にならない啜り声が涙と共に落ちていく。カタカタと震える体を抑えようにも相手の反応が怖くて何も出来ない。

    「鍾離。」

     何の感情も乗らない声が体の横でふと聞こえた。

    「こっち向いて。何もしないから。」

     それは嫌だ。ただでさえこんな女々しいドロップだとわかってしまえばドン引きされる。
     
    「その耳……、」

     この耳がなんだ。毎日丹精込めて手入れしているこの耳まで侮辱されるのか。フラッティは軽蔑されやすい事から自身も自分の耳をあまり良く思わない者は多い。そのせいで同種の耳は見るに耐えないほど禿げていたり、痛々しく切れていたりと隠しているのはよく見る光景だった。
     しかし鍾離がそうならなかったのはひとえに幼少期から愛情をたくさん注ぎ込まれ、可愛い耳だと何度も言い聞かされていたからだ。普通の人よりも優れているその耳に自信を持てと優しく撫でられた経験があるからこそここまで捻くれずに済んだのだ。
     それを、数少ない友人に軽蔑されれば本当に向こう側へ落ちてしまいそうだった。

     すっ、とがっしりとした青年の手が伸ばされた。
     相手の顔が見えず、傷つけられる恐怖にぎゅっと目を瞑る。頭を抑えてガタガタ自分を守るように後ずさった。この体を、甘えたがりで泣き虫なこの品種の性格を否定しないでくれ。



    「柔らかい………。」

     ポツンと独り言がこぼれ落ちる。来るであろう衝撃は来ず、毎日手入れしていた毛並みを優しく生え際に沿って撫で始めた。

    「これ毎日手入れしてんの?たまにフラッティ見た事あったけどこんなに綺麗な毛艶した耳初めて見た……。」
    「あっえ、」
    「めちゃめちゃいい香り……て変態じみてるね俺。ごめん。」
    「…それは毎日、オイルしてるからな…。」

     そうなんだ!と快活に笑えばまた黙ってこちらに微笑む。一体何がどうしたいんだこの男は。
    それよりもフラッティを見ても全く軽蔑した目を向けずに心配されるとは思わなかった。過去にバレた時にはその場では普通を取り繕われても、徐々に離れていくことが当たり前だったから。

    「…お前はこの姿に嫌悪感を持たないのか?」
    「え?全然。……あー、そっか言ってなかったっけ。俺の弟のテウセルもフラッティなんだよ。だから見た目について悩んでたり苦労してるの間近で見てきたからさ。他人事じゃないと思って。」

     そう言って垂れた耳を口元に近づけてちゅっとリップ音を立てられれば嫌でも顔に血が昇るのか分かった。見慣れてるなら大丈夫だと過信してもいいのかもしれない。

    「うちのテウセルもさー、家の中で唯一のフラッティだった上に街はまだまだ差別が残ってたから耳引っ張られたり千切られそうになって泣きながら帰ってきてたんだよね。帽子も嫌がって被ろうとしなかったから。その度に虐めた奴らぶん殴ってきたけど、こんな耳嫌だってカッターで切ろうとした時は流石に肝が冷えたよ。」

     水面下に押し留めてた過去を湧き上がらせる。それを静かに聞いていた鍾離にとっては壮絶なものだった。帽子を被らないだけでそこまで扱いが変わるのか。無意識に唇を噛めばすっと雪国の光で染まった白い人差し指が当てられた。

    「だから俺達家族は精一杯愛情を捧ごうって決めたんだ。ぼさぼさの毛並みで泣いてる弟を守れないなんて兄失格だろう?テウセルの耳は可愛いって毎日皆んなで撫でで可愛がったんだよ。実際可愛かったしね!」

     その結果今では得意な聴力を活かして秘密を暴いたり「僕の耳の可愛さを知らないなんて可哀想!」と自尊心の塊になるまで育ったのだから少しやりすぎた感は否めない。
     でも泣かれて傷つくよりずっと良い。
    フラッティならではの悩みをアヤックスは人一倍理解できる男だった。

    「だからそんなに怖がったりしないで。それに尻尾までついてる人は初めて見たよ。触っても良い?」

     優しく問いかけられればこくりと頷くしかない。丸出しの尻尾を優しく触られ、くるくると掻き撫でれば微かな刺激が腰全体に広がる。そして最後にぎゅっと握られれば快感をぶつけられたように果ててしまった。

    「んんっ、…!あっ♡しょこ、そこだめっだ!」
    「えっごめん!!」

     パッと手を離せばふーっ、ふーっと顔を真っ赤にして息を整える鍾離がいた。尻尾を触られたぐらいでこんな呻き声を挙げる自身が信じられなくて。自分で触る時はここまで酷くなかったのに。
    それでも一度味わった快楽を知らずになんて居られない。もっと欲しいけど自制はしないといけない。だって、まだ友達だから。嫌われる要素は少しでも今は少なくしないと。

    「…先程は、済まなかった。どうかしていたようだ。今日の夕飯は一人で取るからまた別の日にー」


    「えい。」


    ゴリ、と音がしそうなほどにマリィを握り潰された。

    「〜〜〜〜っ、♡♡♡!!!!!ひゃっ♡やだっ、なっ♡、」
    「このまま逃すと思う?悪いけどこんな可愛いのに今まで通り友達として見るとか無理だから。」
    「っ♡、え?」
    「今まで男が好きになるとか俺がどうかしてると思ってたけどこんな可愛いフラッティが目の前にいるのに逃すとかすると思う?鍾離はもう少し自覚した方が良いよ。」

     怒涛の展開に頭が追いつかない。好き?友愛ではなく恋慕として?それもずっと前から?
     たくさん考えたいのにマリィを未だにグリグリと押し潰されて気持ちいいことしか分からない。

    「アヤッっ、クス。待て。ん♡」

     耳を横にパタパタを振ればそこら中に伽羅の香りがふわりと広がる。それだけでアヤックスの欲情を唆るのには充分な求愛行為だった。
     寂しがり屋な故に人一倍避けて、甘えん坊なのに人一倍に近づけない甘え下手なドロップ。まさにそのものじゃないか。


    「大丈夫。その体も心も全部、俺に任せてよ。」


     まさにうさぎを捕食する狼にふさわしい展開だった。
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