アーサー誕目が覚めた時からうきうきしていた。
昨晩眠る前に、少しだけ開けておいたカーテンの隙間から明るい日差しが差し込んできていた。枕元に差し掛かるきらきらと塵を反射した光の帯を目で追って、アーサーはぱち、ぱちと数度瞬きをする。清潔な朝の空気が満ちていた。胸に入り込む新しい1日の気配に目を細め、布団に入ったまま背中をそらし、小さな手足を目一杯伸ばす。
…伸ばしてから、ひゃっと悲鳴を上げて縮こまる。
「……またやってしまった……」
厚手の布団の中はほかほかと温かい。けれど、眠る自分の体が届いていなかった部分は冷たい空気を孕んで冷たく、アーサーはそのことを忘れて冷えた部分に足を差し入れてしまっていた。この城に来て、これをするのはもう数度目だ。アーサーに与えられたこのベッドは、アーサーの体に対してずいぶん大きくて、必然温められない範囲も広い。3月が始まり、もう暖かさがやってきても良い季節であるはずだったが、北の国の春はまだまだ遠い先のことであるようだった。アーサーははふ、と息を吐いた。鼻の奥が痛くて、鼻が赤くなっているかもしれない。
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