TF断片集『カルカーとストーカーがガーラス9で会話してる。カルカーに設定盛人』
カルカーは戦闘分析官である。そして監査員でもある。ディセプティコンの兵士たちの行動を監視し記録をメガトロンに送る――時にはディセプティコン司法局に送るのが役目だ。無闇に敵視されることの多い役柄ではあるが、長期間任務が多いためか比較的真面目な者が多いプレデターズは非常に過ごしやすいトライブであったと言えた。司令官スカイクェイクも高度通信員のストーカーもメガトロンと大戦以前からの配下であるとの言葉に偽りはなく、彼らに率いられる兵士たちもまたメガトロンの指示を大幅に逸脱することはなかった。過去形の言葉だ。ガーラス9で“再編成”されたプレデターズにかつての面影は無い。
「カルカー」と、ストーカーは常ならぬ低い声色で語りかけてきた。
「なぜメガトロン様が戦争を続けているかわかるか? いやもちろん知っているよな。ひとりが圧倒的な力をもって頂点から支配すれば真の平等がすべての民に訪れるというお考えのもと、反抗勢力を打ち砕き民に分配する資源を十分に確保するためだ。まあそこはどうでもいいんだが」
「そのためにメガトロン様は力のある者が集団を支配できるシステムを作ったのさ。さて今この地で一番力の強い、あるいは地位の高い者は誰だ? どちらもオーバーロード指揮官さ、そうだろう? 彼に従っている限り俺たちがディセプティコンの法規から外れることは無い」
「屁理屈です! 彼はディセプティコンを己の判断のみによって殺しました、法規を外れています!」
「……」
「ははぁん、分かったぞカルカー。さてはこの状況に飽きたんだな。まだ5年も経ってないっていうのにこれだから長期任務慣れしてない奴は困るぜ」
「え?」
「まあ確かに元囚人の不満も膨らむ頃か。進言はするが俺も娯楽ってヤツには疎くてなぁ」
「ま、待ってくださいストーカー! そういう話では……」
期待せずに待ってろよ、という言葉だけを残して変形したストーカーは通路を駆けていった。
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『ドリフトとスカイダイブがサイバートロン星に戻った時に会話しててくれねーかなー、と思ってた頃の会話文。状況的にあり得なくて消えた』
「俺の上司はデッドロック、それとターモイル司令官とスカイクェイク司令官だけだ。わかったらとっとと帰んなオートボット」
「お前の中で、デッドロックはまだ上司の内に数えられているんだな」
「……装甲の一欠片も残ってねぇ上官殿を未だに慕い続ける部下に感謝しろよ流浪人」
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『メガオリの二次創作の初稿みたいなやつ。暗号会話いいよねエヘヘヘしか考えてなかった。後半はストーカーとスィンドル』
「あろー?」
ターン訛りの通信が、メガトロンとサウンドウェーブの間を通り過ぎた。
「誰だ」
「ストーカー、なにがあった」
「運び屋から通行規制の情報が出てる。どこに置かせればいい? "月の下"か"廃棄倉庫"にしとくか?」
「いや、"足元"だ」
「了解。回しとくぜ」
「予測通りここは包囲されています。第二段階のパターンも決まりました」
「警備隊に内通者がいるのか」
「以前より危険分子として調査はしていました。スィンドルやストーカーとも交流があります」
「なるほど、信用できそうな情報だ」
「商人ー、『サイバトロニアンは足元が見えない』って言った奴はどこにいたっけ」
「D-3ポートだぜラジオジョッキー」
「あいよ。皆さんーD-3で合流どうぞ」
「つまんねえ小芝居だったぜラジオジョッキーさんよ」
「盗聴されてたし、まあ一応な? 拾いもんだが良さげなやつがあったから譲るぜ」
「……まあまあじゃねえか、これで勘弁してやるよ」
「その反応、さては高いもんだな?! やっぱやめだ!返せ!」
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『スカイクェイクの過去だけど他の人の三次創作になりかけたのでやめた』
「空を飛ぶのか」と聞かれたので「昔は」と答えた。
地上を追われた日のことを忘れた事は無いが、思い出すことはやめている。いちいち確認などしなくとも怒りも憎しみもスパークに焼き付いているのだ。過去の感情にとらわれるのは生産的ではないと、戦いの末に己自身を買い取った剣闘士は言った。まったくその通りだと今は思う、無意味なメモリの圧迫も過剰なブレインの回転も減らせばきわめて冷静に現状把握と将来への計画を立てることができている。
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『ファーマとターンの話を書こうとして、一応本編読み返したら展開を間違えて覚えてたのでなかったことになった』
DJDのリーダーの炭のように焦げ付いた変形コグを目の当たりにしたファーマは、もはや自身の手に負えない状態だと認めるしかなかった。これ以上誤魔化そうとしても一日も持つまい。サーキットが唸りを上げ、思考を高速化する。治療方法、
応急処置として配線をいくつか取り換える。
「改めて伝えておくが……私が死んだ場合、あなただけではなくこの地にいるオートボット全員を殺す。ドクター、これからどうするつもりだ?」
「……移植手術を行う必要がある。コグは、なんとかしよう……。それより今回は一時的にコードを繋げたにすぎん、部下に力ずくで抑えてもらってでも変形はするな」
「ああ、今まさに変形をしたい気分だ……」
「18時間は我慢しろ。」
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『ターモイル麾下のスカイダイブがプレデターズに配属されるまでの妄想』
プレデターズに呼ばれた奴は幸運だ。今までの働きを認められたことになる。
プレデターズに呼ばれた奴は不運だ。この先まともな場所には行けなくなる。
――ディセプティコンの噂話 その1120
ディセプティコンのターモイル連隊は惑星ダボラを制圧した。過程に少々――そう、少々問題はあったがおおむね命令通りである。地下資源の損傷も想定範囲内だ。後は資源活用班の到着を待てばよい。彼らにこの場を任せ補給を受け、そうして次の戦線へ向かう。いつものルーチンだ。
「辞令が出た」
ダボラ制圧から二日。ターモイル指揮下の兵たちは戦艦のブリッジに集められた。頻繁にある事ではないが特段珍しくもない集合理由だ。ターモイルの、いやメガトロンの言葉に皆が集音機を傾ける。
「補給部隊は13時間後到着予定だが……その後の指令だ。まずプレデターズは全員スカイクェイクの元に戻れ」
「了解しました」
答えたのはファルコン。プレデターズの分隊長と呼んでもいい。彼らが今回ターモイルの指揮下に入ったのはもちろんディセプティコン司令部の指令である。ターモイルの部隊は戦闘関連において一切問題ないが、それ以外についてはあまり信用できないと判断されているらしい。戦艦がダボラ上空域に入るや否や彼らプレデターズ分隊が率先して戦闘区域を指定し、他の部隊長らに資源確保を優先するよう呼び掛けていた。……もちろんそれでうまく回ったので以降誰も異議を申し立てない。
「トラッコンと科学専門家もスカイクェイクに付けとの指示だ」
「うげぇ」
スカイダイブは思わず声を上げてしまう。間抜けな悲鳴にすぐ後ろにいたスモークスクリーンがクツクツと笑い、ドレッドウィングは声を抑えるためわざわざ身を屈めてまでスカイダイブに話しかけてきた。
「いいじゃねえか、栄転だぜ」
「ふざけやがって。左遷の間違いだろ」
ターモイルの言葉が続く中、スカイダイブも潜めた声でドレッドウィングに答える。ちらりと周囲を伺えばトラッコンのフィアースゥープが不満そうに首を傾げているのが見えた。
スカイクェイクのトライブ、プレデターズ。古参の兵が率いる最前線侵略部隊、と言えば聞こえはいいが実の所は未開の宙域の調査部隊だ。数年数十年をかけて見知らぬ星に着いては補給線をつなげていく。間違いなく信用できる者にしか任せられないが、精鋭の科学者や歴戦の戦士――あるいは無軌道な乱暴者――がやる仕事ではないだろう。要するに、プレデターズの配属者はこの先親衛隊や御用学者の地位を望めないということだ。
「ドレッドウィングとスモークスクリーンは本星に帰還しろとの事だ。補給部隊が到着次第合流し、向こうの指示にしたがえ」
「はっ」
「わかったぜ」
「メガトロン様からの指示は以上だ。残る者たちは補給完了後7時間以内にダボラを出、次の戦線に向かう。準備を怠るな。では解散だ」
ようやく解放された、と残り少ない休暇を満喫するために兵たちはブリッジを離れる。スカイダイブも同じように部屋を出ようとして、フィアースゥープと《チクリ屋》カルカーが誰かに捕まっているのを目の端で捉えた。
「ああ、スカイダイブ? 悪いがあんたも補給部隊が到着する前に一度プレデターズの戦艦に来てくれ。ウチは配属前にメディカルチェックを受けてもらう必要があってな」
「……もしそのチェックで数値が悪かったら、どうなるんだファルコン?」
「どこかの拠点に一度向かってもらって……基本的には最前線で消耗してもらうことになるな、つまりチェックでハジかれる奴はそういないのさ」
嫌な話を聞いたものだ。はいはい、とおざなりな返事をしてスカイダイブは己の部屋に戻る。この戦艦に個人ラボを作れるようなスペースは無いので、重要なデータ類はすべて持ち運べるサイズの端末に入っている。最悪これさえあればいい。あとは共用ラボに残したままの作りかけの携帯兵器と、処理済み再加工予定の高危険度物質、今回鹵獲したボッツの武器類……それでもカートで数度往復すれば一人でも運びきれるレベルだ。