題名は、愛について。「うーーん」
「どうしたの。さっきから深く考えてるみたいだけど」
木陰に入り混じる春の光がアイクの髪に反射した。二人して腰掛ける木の根元には、涼しい風がそよいでいる。
「ボスとしての自覚が足りないって父さんに言われて」
「仕事で何か失敗でも?」
「特に何かあったとかではないんだけど。それがいけない?みたいな」
ピンと来ていない様子のアイクに説明を付け加えた。
ルカがマフィアのボスに就任してから数ヶ月が経った。父から受け継いだファミリーのメンバー達とは小さい頃から仲良くしていたし、ボスになったからといって彼らとの関係に特別何かが変化することもない。もちろん、ファミリーを背負うものとして自分の行動に伴う責任が何倍にも重くなったことは理解しているつもりである。しかし実の父親、先代ボスの指摘によると「お前はまだボスとしての自覚が足りていない」らしい。「平和な毎日に胡座を描いていてはいつか足元を掬われる」と。説明を求めると、さらに混乱を招く言葉が返って来た。
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