座敷牢の乙女あら、ゆうげを……?
有り難う御座います。いつも、貴方のお蔭で退屈が紛れる気がいたします。
あ、いえ、暇と言うわけではなく……
旦那様のことを考えているだけで、勝手に太陽は沈んで昇りますから。お気遣いありがとうございます。
でも、この家で話し相手になってくださる方も貴方だけになってしまいましたね。
ふふ、つまらない事しか話せませんが、何でもお聞きください。
旦那様とは誰か……ですか?
あら、旦那様のお話、した事ありませんでしたか?
ええ、この家の主人のことではありません。
共に過ごしていたのはとても短い間でしたが、私が今も恋焦がれているお方なのです。
◇◇
そうですね……
旦那様は、不思議で、魅力的で、私が心からお慕いしているお方でした。
1894