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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    もうすぐ死んでしまう私と君のお話 1 私※死ネタを含むオリジナルです。
     自己責任でご覧下さい。
     
    何でも許せる方向け。







    ***



    唯が死んだ。

    彼女は優しくて。
    強くて、脆くて。

    でも、弱くて。


    本当は人一倍、生きたかったんだと思う。







    『 いつか死んでしまう私と君のお話 』





    任務から帰った翌日の事だった。
    任務と言われれば聞こえは良いが、唯がやる事は基本的に後ろに控えて周囲を警戒したり、いざと言う時に備えるくらいの事。4級くらいの呪霊を払ったりもするが、それ以外は大体が補助監督でも事足りるものがほとんどの任務で。


    呼出のかかった五条先生を訪ねる。
    今回の任務はそれでもかなりの体力を消耗した。怪我はないが、まだ身体は重い。
    少し痛む頭を抑えて、ドアをノックする。

    はいはーいと軽い声が聞こえて、応接室のような部屋に通された。唯は椅子を進められ、言われた通りにそこに座る。向かい合うように彼も座り。

    「お疲れさま。調子はどう?」
    「…あまり」

    短く応えた。

    「今日の授業は休んだみたいだね。お休み中にわざわざごめんね。疲れてるでしょ?」

    任務後は、体力の消耗が人一倍激しいのはいつもの事なので、大丈夫ですと告げるに留めた。

    「じゃあ。端的に短く話すね」

    彼の声は飄々としていた。
    でも、いつもの笑顔はない。


    「君に、退学を進めるように上から言われてるんだ」



    低い声で言われて少し目を見開くが。

    「あれ?あんまり驚かない?」

    「いえ…予想はしていたので」

    目を伏せる。
    唯は机の下で私服のズボンをぎゅっと握った。

    「勘がいいね」

    雰囲気で、気付いてはいた。

    自分はいつも、他人のサポートにしか回れない立場の人間だ。一応の階級は4級。
    もう2年生になって1ヶ月も経つのに、単独で動く事は勿論、任務もまともにこなせない。呪術師としてすら認めてもらえてはいないと思う。完全にお荷物だ。
    真希の4級とはまた訳が違う。自分は本来なら4級以下だ。


    「君の強さは知ってるよ。きちんと術式が使えるのであれば、棘にも並ぶ術師になれる」

    隠されたその瞳は、一体どこを見ているのか。
    彼は静かに言葉を続ける。

    「でも、呪術師には向いていないんだとも思う」

    唯は頷く。

    そんな事、言われなくとも自分が一番分かっていた。


    「君には茗荷家の後楯があるから、表立って退学を言い渡す事は出来ないけどね」




    「厄介な家系だね」







    柔らかい夕陽が窓から降り注ぐ。
    五条先生はそちらに目を向けた。


    茗荷家の呪術師は必ず短命に終る。


    それは例外なく。
    術式を使う度に、何らかの形で寿命を消費していく。





    思えば入学前から、一部の教師…特にこの五条悟には、あまり良い顔はされなかった。
    本当に入学するの?と事あるごとに何度も聞かれたし、唯の親にも話していたから茗荷家からは嫌われている。
    けれど、何度聞かれても唯の決心は変わらない。

    私は呪術師になる。
    その為に産まれたのだから。




    現代科学で言えば、アレルギー反応のようなものではないかと、以前家入さんに言われた事があった。
    言い得て妙だと、感じた。
    元々、茗荷の家系には呪力は合わないのではないか、と。家系図を遡ると、短命なのは術式を持って産まれた者だけらしい。
    それは大きく呪力に影響して命を落とす者や、少しずつ寿命を削る者、ある日急に反動の来る者。そして、身体が力について行けず、幼い内に亡くなる者。


    「察するに、君はたぶん茗荷家の中でも、特に呪力に影響を受け易いんじゃないかな」

    五条先生の顔に、笑顔はない。

    「今のままだと、卒業出来るかもわからないよ」

    唯は何も言えずに俯く事しか出来なかった。
    おそらく唯は、最後の“幼い内に亡くなる者”。

    今生きているのはたぶん偶然で。
    元々家でも、呪術師になる為に訓練を受けて来た。
    けれど、入学してから任務に着くようになって、とりわけ呪力や術式を駆使するようになって、違和感を感じた。入学して半年も経たない頃だった。
    しばらくしすると、任務の後、帰る頃にはかなりの体力を消耗するようになった。術式を使っていても、いなくても。


    「正直、あまり無理もさせられない。でも、ここに居る以上、任務や実地訓練には着いてもらわなきゃいけない」

    顔を上げて、五条先生を見た。

    「それは承知しています」

    表情の分からないその顔を、真っ直ぐに見て問う。しばらく逡巡して、口を開いた。

    「五条先生も、私の退学に賛成ですか?」

    言われた彼はこちらを見て、うーんとわざとらしく唸った。
    唸った、けれど、続く言葉はしばらくない。
    少し考えたように、告げた。

    「正直、対応には困ってる」

    腕を組んだ五条先生は、たぶん唯を見ている。

    「今は昔とは違う。お家がどうとか…そんな事で呪術師を目指すのなら、オススメはしないよ」

    否僕もだけど、とツッコミつつ笑う五条先生。

    「ですが、呪術師は元々危険な仕事です。死と隣り合わせなのは、何も私だけじゃない…」

    言って、唯は目を伏せる。

    「ごもっとも。でも、死ぬ事を前提として学ぶ君と、呪術師になる事を前提に学ぶみんなとは、やっぱり違うよ」

    「諦めろ、と仰っているのですか?」

    「否。それでも君が呪術師になりたいのであれば、それなりにサポートはする。それでなくとも人手不足の業界だから、補助監督なり何なり仕事はたくさんあるしね」

    唯は唇を噛む。

    「呪術師でなければ…」

    ーー意味がない。

    小さく口の中で呟くその声は、目の前のその人に届いたのだろうか。

    まぁ、と五条先生は続ける。

    「唯はもう少しだけ、広い世界を見てみてもいいんじゃない?」

    言って笑った。

    「まだ16歳の女子高生でしょ。焦って答えを出す必要もないよ」

    たぶん、ーー…


    「何にせよ、決めるのは君自身だからね」












    「失礼しました」
    と、軽く頭を下げてその場を離れた。

    頭が痛い。けれど、そんなのはいつもの事で、唯にとっては大した問題でもなかった。



    寮の近くにたどり着く頃には陽が沈み、徐々にオレンジ色を暗闇が飲み込んでいく。
    春の風はまだ冷たい。

    唯はその場に立ち止まった。


    あと少し。

    後少しで、部屋に着くのに。


    涙が堪え切れなかった。
    ぽたり、ぽたりと、雫が地面に落ちる。
    俯いたまま動けない。


    なんで?

    何で私だけ?


    足から力が抜けて行く。
    唯はその場に疼くまった。

    涙が次から次へと溢れて止まらない。
    膝に顔を埋めて、只ひたすら流れる涙を袖で拭った。







    不意に、人の気配を感じた気がして顔を上げる。

    「ツナマヨ?」

    唯のすぐ後ろに、同級生がいた。
    口元まである襟の制服に、少しだけ驚いたような、戸惑ったような顔をして。
    鞄と、手にはコンビニの袋を提げていた。
    寄り道の帰りと言った所だろうか。

    棘は唯の隣に座り込み、静かに鞄の中からタオルを取り出して手渡す。

    「…ありがとう」

    ハンカチの代わりだろうか。
    小さく呟いてそれを受け取る。
    唯はそのタオルで目元を抑えた。



    「ツナマヨ」

    ぐいっと、棘が唯の袖を引っ張って、道の端を示す。少し先に、座れそうな段差があった。


    彼は何も言わずに、柔らかく笑ってくれた。











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