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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    meepoJlo

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    もうすぐ死んでしまう私と君のお話 番外編ふたりでいる時間がほんの少しだけ長くなった。

    ただそれだけ。






    夕練が終わり、ジャージのままグラウンドを出る。指定は無いのでそれぞれにカラーが出てカラフルだなと、唯は一番後ろから見て密かに思っていた。

    広い学園の敷地内は、それぞれの施設に移動するだけでも手間になる。自販機に寄ってから校舎に向かい、荷物を手にそのまま1年生と一緒に寮への道を歩いた。

    「また真希から一本も取れなかった」

    一本道と言う訳ではないけれど、一番近道である神社の境内のような道。日暮れが近く、傾く夕陽が眩しい。
    一番前にパンダと真希、野薔薇がそれに続いて、その後ろに伏黒、更に離れて唯と棘が続く。

    「唯は惜しい所まで来るんだけどな。持ち慣れない竹刀が原因だろ。道具に意識が行き過ぎ」

    先頭を行く真希は歩きながら唯を振り返る。

    「後、詰めが甘い」

    「…ごもっともです」

    自分で言っておいてしゅんとしおれる唯。

    「肝に銘じておきます、師匠」

    そうしろ、と真希が笑う。

    「でも実際、唯さんは後一息じゃないですか?」

    「しゃけ」
    「まぁ唯は最近頑張ってるしな」

    野薔薇が言えばパンダも棘もそれに同意する。伏黒も頷いてくれた。

    「え、本当?嬉しい!頑張る!」

    真希やパンダ、棘の2年生から交流戦までに「とりあえず一本」一番乗りで一本取れそうなのはおそらく伏黒。頑張り屋で、真希の指導を素直に受け入れる野薔薇もそれに続くだろう。

    …って否、そもそもなんだけど私は2年生だ。
    頑張らなくては。

    会話は尽きない。
    次は野薔薇の問題点を真希が上げ始める。



    「ツナツナ」

    言われて隣を見ると、いつの間にか棘がすぐ側にいた。本当にほんの少し、肩が並ぶくらいの距離で、棘の手が唯に触れる。その手は唯の掌に触れ、指が絡んでぎゅっと握った。
    心臓が激しく鼓動する。真っ赤になる顔を思わず上げて確認するが、話に夢中で誰もこちらを気にする様子はない。

    棘は反対側の人差し指を一本立てて、ネッグウォーマーで隠れた口元に持っていく。
    その目元は、イタズラに笑っていた。
    唯は首を傾げるが、とりあえず口を閉じる。

    野薔薇の次は伏黒についてか。
    真希とパンダが何かを話し込んでいるが、心臓の鼓動が煩くて何も話が入ってこない。


    棘は静かに足を止める。繋がれた手に引っ張られる形で、唯も足を止めた。
    その間も、他のみんなは気にする様子もなく前に進む。

    きょとんとして棘を見れば、彼は愉しげに笑っているだけだった。
    そのまま一歩、二歩、三歩と、足音を立てずに後ろに下がると、みんなとの間も結構広がっていた。6〜7メートルくらいだろうか。

    「………?」

    棘は唯を見て、もう一度人差し指を立てて口元に持っていく。白くて長い、棘の指。
    繋がれた棘の手にぎゅっと力が入り、静かに音も立てず、踵を返して走り出した。唯もそれに引っ張られて寮とは反対の方向に走り出す。極力気配を消して足音を立てず、静かに振り返る事もなく。



    「…っあ?棘と唯どこ行った?!」

    真希が振り向き気付いたのは幾分も経たない内だったが。そこに2人はもう居なかった。
    一斉に振り向く。

    「…え?!いつの間にっ」

    野薔薇が目を見開く。

    「棘にしてやられたなぁ」

    と、何処か楽しげなパンダ。伏黒が小さく呆れた溜息を吐く。
    全員が顔を見合わせる。一瞬間があって、真希とパンダが笑った。

    「何か、あったんですかね。あの2人」

    と笑う野薔薇に、

    「まぁ、何かあったんだろうなぁ」

    とパンダはにやりと笑う。

    「その内勝手に戻ってくるだろ。2人とも子どもじゃあるまいし」

    真希は気にした様子もなく、前を向いて歩き出す。

    「楽しそうだな、真希」
    「それはパンダの方だろ」

    少しだけ歩いて、真希は野薔薇を振り返る。
    口の端を持ち上げて、よし!っと気合を入れたかと思うと、

    「明日、唯取っ捕まえて締めるぞ。野薔薇」
    「はい!真希さん、お供します!」

    「女子怖ーい。恵、俺らもやる?」
    「いや…。俺は遠慮しときます」







    少し走った所で角で曲り、立ち止まる。
    唯は息を切らして前屈みになった。

    「棘くん、足……早っ」

    と言いつつも、棘のペースに着いて行く事が出来たのは、単純に棘が唯にペースを合わせてくれたからだろうと思う。

    「ツナマヨ」

    棘は親指をグッと立てて唯に見せる。
    楽しそうな棘の笑顔に、唯も笑った。

    「こんぶ」

    「うん。大丈夫だよ」

    息を整えて唯も状態を起こす。影から角の向こうを見たが、そこにはもう誰もいない。

    「ツナ、明太子」

    棘が指差したのは門のある方角。
    少し歩くけれど、さほどの距離でもない位置に最寄りの駅やコンビニもある。

    「寄り道する?」
    「しゃけ」

    言って唯に手を差し出した。

    おいで、と。
    言われたあの日を思い出す。

    熱くなる頬を隠して俯き、今度は躊躇なくその手を差し出すと、棘は満足そうにその手を握った。
    顔を上げて目が合えば。
    恥ずかし気にはにかむ唯に、棘も目を細めた。











    翌日、制服に着替えて鞄を手に、いつも通り寮を出ると、待ち構えていた真希と野薔薇に捕まった。
    次いで眠そうに目を擦りながら出て来た棘も、一瞬逃走を図ったが即御用となり。






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