イタズラな、野薔薇ちゃんに誘われて、真希ちゃんと私で女子会をする事になった。ショッピングに行くと決まると、荷物持ちに虎杖くんと伏黒くん。そうなるんならと棘も誘ってみた。(パンダは一応誘ってみたけどお留守番)
女子会って何だっけ?
少しだけ暖かい冬の日。
それでもやはり寒いと呟いたら、棘がマフラーを貸してくれた。
東京の街中を、ぞろぞろと歩く。
高専にいると忘れがちだけど、少し行くとやはり東京だと改めて思う。
野薔薇が先導して、色々なお店を回った。食べたがっていたパンケーキのお店に、タピオカも飲めて私も満足だった。
虎杖は野薔薇の荷物を両手いっぱいにかかえて。いくつか服を買っていた真希は、結局自分で荷物を持って。
かく言う棘は、唯が1着買った服の紙袋を1つ持ってくれている。そのくらいなら自分で持てるんだけど。
「唯さん、あんまり買ってないみたいですけど…いいんですか?」
と、野薔薇に聞かれる。
「気にいるものがあれば買うけど…。あんまり私服も着ないしね」
言えば野薔薇は確かに、と頷いていた。
野薔薇ちゃんみたいに、あれこれ選べたり、たくさんの可愛いを身に付けたくなるのはすごく羨ましい。真希ちゃんみたいに自分を持って、欲しいものを選べるのも素敵だと思う。
「優柔不断なんだよね、私。似合うかなぁとか、色々悩んでて買えなくなっちゃう」
唯は笑って見せる。
真希は唯の身につけているコートを指差す。
「そのコートもかなり迷って買ってたしな。後、唯は1着買うとかなり大事にする」
「貧乏性なだけだよ〜」
これには苦笑いで返した。
「でも、唯さん美人だから、何でも似合いますよ。スタイルいいし、羨ましいです」
「野薔薇ちゃん、そんなお世辞言っても何も出ないからね」
「お世辞じゃないですよっ」
こうして話していると、みんな普通の女子高生だなぁ、と思う。女子3人で前を歩き色々な話で盛り上がる。女子会もやっぱり楽しい。
たわいない会話をしながら、そろそろ帰ろうかと言う時。
「あ!最後にあそこ行きたい!」
野薔薇が指差したのは、雑貨屋さん。何だか色々とガチャガチャした印象を受けるよくある若者向けのお店だ。
「いいねぇ。面白そうじゃん」
真希も乗り気に見える。
え〜もう帰りたい〜、とあからさまに嫌がる虎杖を引っ張って野薔薇はお店に入って行ってしまった。伏黒もそのまま着いて行く。
出遅れた唯も、それに続いて歩き出す。
後ろの棘もそれに続くと思っていたけど。
不意にその腕を掴まれて立ち止まる。
振り返ると、棘がぎゅっと唯の腕を掴んでいた。
「……?」
「おかか」
意味がよくわからず、唯は棘を見て首を傾げた。
棘は少しだけ目を細める。
空いた方の手で少しだけグレーのマスクをずらして、腰を屈めたた。
瞬間、棘の顔が近付く。
柔らかな感触を唇に感じて、ちゅ、とリップ音が響いた。雑踏の中、耳元でやけに大きく聞こえた気がして。
真っ赤になった唯は動けなくなる。
すぐにその綺麗な顔は離れて行った。
呆然と立ち尽くす唯に、ペロリと舌を出してニヤリと悪戯に笑う棘。
マスクで口元を隠して、何事もなかったように唯を追い抜いて歩き出す。
してやられた。
気がする…。
End***