オレの一番好きな色 「イヌピーくん、紅葉狩りに行きませんか?」
そう言った花垣の右手には、こういった話題に疎いオレでも聞いたことのある、都内有数の紅葉人気スポットのチケットが二枚握られていた。
なんでも花垣の親と長年付き合いのある新聞屋が好意でそのチケットを分けてくれたそうだ。
腹も膨れない紅葉狩りに興味がある花垣という存在が、オレには不思議だった。
花垣という男はとことん不思議な男だ。
誰よりも腕っ節が弱いのに威勢よくどんな困難にも果敢に立ち向かう姿勢や、決意の固い瞳、自らを盾にしてまで他人を守ろうとする自己犠牲をも厭わない慈悲深い優しさ。
普段は年相応で、どちらかと言うとどこか頼りなく、友達と話す姿を見ていると幼稚な一面もある
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