偶然だった。
「店員さんの一番好きな料理を一皿、頼めますか」
「はい。トマトのロールキャベツでいいですか」
姿かたちはどうみても死の間際にあった微かな記憶に残る大包平だった。勿論、髪の色は黒色である。ただ一心に見つめる瞳と少し寄せられた眉は変わらない。
だから確信したのだ。大包平も転生してきたんだ、と。
前世は不慮の事故で亡くなったとされているが、実際は審神者業によくある戦死だ。
ただ、本丸襲撃ではなく政府の建物へ赴いた際の敵襲から役人を庇い死んだのだった。我ながらあっけない。刀剣男士の魂も転生することがある、そう聞いたことはあったがもしあるならば初期刀が躍起になって今頃自分を見つけ出しているだろう、と踏んだ。そして結果現在までそんなことは起こらなかったため、私の周囲では無い事案だったのだと結論付けたのだ。
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