つめたい心臓『それ』を手にするとき、いつも頭の片隅で夢想する。
引き金を引く。幸運の女神は僕に微笑まず、鉛の塊が僕を貫いて、全部おしまい。
その瞬間何を思うのだろう。やっと負けることができた、と安堵するのだろうか。それとも後悔するのだろうか。とか。
「勘弁してくれないか」
夢境。ホテル・レバリーの一室にて。
もう何度目かになる死の実験。
被験体は僕、アベンチュリン。
教授の手には一丁の拳銃。
それを僕に渡されて、これから何をさせられるのか聡い彼は察知してあからさまに嫌な顔をする。
「教授だって人を殺したことくらいあるだろう?」
「そういう問題じゃない」
「ナイフの方がよかった? でも銃の方がいいだろう? 引き金を引くだけなんだから」
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