カチカチカチ、振り子時計が時を刻む音に、サラサラサラ、羽根ペンが紙の上をなぞっていく音。窓から西日が差し込み出した執務室には二人の男がいるにも関わらず、先程から彼らの話し声は聞こえない。机に向かって難しい顔をして紙の上に羽根ペンを走らせている男と、窓際に腰掛けながら手元の資料を真剣な顔をして見ている男の間の空気はどこか厳かだ。二人の男は仕事仲間ではあるが私語を挟むような関係ではないのだろう。こうしてお互いに無言のまま仕事に打ち込む。それが二人の男の日常だった。
どれくらいお互いに無言の時間が続いただろうか。二人の男のうちの一人、机に向かって紙に羽根ペンを走らせている男一一将校がふいに手を止め口を開いた。
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