「鳥籠の天使」蝉の声が遠くで途切れ、夏の残響が窓辺に溶けていた。
一颯の部屋は薄暗く、カーテンの隙間から差し込む陽光が埃を踊らせている。
彼女はベッドに座り、膝を抱えていた。160cm程のしなやかな体は、今や骨ばって見えるほど痩せ細り、かつてバスケットボールで鍛えた筋肉は影を潜めていた。
緑の瞳は虚ろに宙を彷徨い、長いまつ毛が震えるたび、涙がこぼれそうになるのを堪えているようだった。
あの日から、私は壊れた。壊れたまま、こうやって息をしている。生きているのかさえ、分からない。
そこに、彼女がいた。
星咲杏癒。銀髪が光を浴びて青みを帯び、白い羽が腰から伸びる姿は、天使のようでありながらどこか歪んでいた。小さく、華奢な体の彼女は生きていた頃の痩せた輪郭をそのままに、紫の瞳が渦巻く白い瞳孔とともに一颯を見つめている。彼女は微笑み、柔らかな声で囁いた。
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