白い輝きは聖夜と共に街はこれから迎える聖夜の彩りに溢れていた。
今年はどのようにして過ごそうか考えを巡らせてみる。
去年は素敵なディナーとホテルステイを堪能させてもらった。
「今年は家で過ごすのもアリかもなぁ…。ケーキとか手作りにして、プレゼント交換もして…。ふふっ、良いかも!あとで馬淵に言ってみよっと!」
夕食の買い物を終えて帰宅する途中で偶然にも彼とばったりと会った。
今日は客先での仕事があってそこから直帰してきたのだという。
買い物した荷物を持ってくれて空いた方の手を繋いでマンションまで帰宅した。
「荷物持ってくれてありがとうっ…!すぐに晩御飯の支度するね!」
「あぁ、頼む。先にシャワー浴びてくる。」
「うんっ、ごゆっくり!」
彼がシャワーから上がってくる頃には、テーブルに手料理を並べ終えていた。
食事の途中で今年のクリスマスはどうしようかと声をかけ、先程自分の頭の中で思い浮かべていたものを伝える。
「でね、今年はお家で過ごしたいなあって。あの、邪魔じゃなければ、クリスマスツリーを置いてみたくて……。」
「…ふむ、なるほどな。なら、明日にでも大きい店に行って見てみるか?」
「本当!?やったあ!楽しみっ!」
そして翌日に街の外れにある大きな商業施設へ足を運んだ。
店内の中央には見上げてしまうほど大きなクリスマスツリーが展示してあった。
様々な彩りの装飾品がツリーに施され、店の照明で更に輝きを増している。
「わぁ、きれいっ!」
「そうだな。家に飾るやつはどんなのがいいんだ?」
「えっと、装飾品は金と銀をメインにした色がいいかなぁ…。」
「分かった、向こうの雑貨屋行ってみるか。」
「うん!」
雑貨屋には様々な大きさのクリスマスツリーや装飾品が置いてあった。
ツリーの大きさはリビングの部屋の大きさに合わせ、装飾品はセットのものを一つとばら売りされているものをいくつか購入することになった。
リビング用のツリーは自宅に配送してもらうことにして、他にも玄関用に小さなツリーと観賞用に綺麗な雪が舞うスノードームを購入した。
次の日にはツリーが届き、彼と共に飾り付けをする。
「わぁ、綺麗!えっと、最後に星を乗っけて…。ん、っしょ、んーっ!!わっ、ぁ、ありがとう……!」
「ん、ここでいいか?」
「うんっ、大丈夫っ!えへへ、ありがとうっ!」
彼が手の届かなかったところへ星型の飾りを乗せてくれてツリーが完成した。
スノードームはリビングのテーブルに置いて、クリスマスに向けた準備を無事に終える。
クリスマス当日の朝は窓の外はうっすらと白色に染まっていた。
「うぅ、寒い…、あれ、雪……!!!」
先に起きてリビングに暖房を付けに来た時に雪が散らつているのが見えた。
どうりでいつもよりも寒いわけだと思い、そのまま朝食の準備に取り掛かった。
今日は彼が仕事があるため、帰ってきてからクリスマスパーティをするのだ。
「…朝から寒いな…。」
「おはよう、外見てみて!雪だよっ!」
「ん……、あぁ、なるほどな…。」
「会社行くとき気をつけてね?」
「……今日は在宅にするか。」
「もぉ、自由だなぁ…。それで大丈夫なの?」
「あぁ、別に今日は外に行くような仕事も無いからな。」
「そっか、まぁ、雪の中お仕事行くの大変だもんね…!なるべく家事とか音立てないようにするからっ…。」
「いや、気にするな。むしろ、悪いな。出来る事は手伝う。」
「全然だよっ、ありがとうっ…!」
本当は彼が会社に行ってる間に準備を済ませようと考えていたのだが、仕事とはいえ一緒に居られることが嬉しく感じた。
そして仕事が始まるまでに洗濯や食器洗いを手伝ってくれたおかげで、いつもよりも家事を早く済ませることができた。
「手伝ってくれてありがとうっ!思ったより早く済ませられたよ!」
「ん、良かったな。じゃあ、仕事してくる。」
「うんっ、コーヒー淹れたら持っていくね!」
「あぁ、頼む。」
彼が仕事を始めてからリビングの掃除を少しして、今夜のクリスマスパーティーに向けて部屋を飾り付けする。
夢中になって飾り付けをしていたら、あっという間に昼を迎えてしまい、彼から声をかけられるまで全く気づかなかった。
「あっ!!!ご、ごめん!お昼……!!」
「随分熱入れてたな?」
「すっかり夢中になってた…!」
「昼は下のパン屋で何か買って来るか。この時間だとお前の好きなあの食パンが丁度焼きあがるんじゃねえか?」
「…ありがとう、じゃあパン屋さん行こっか!」
マンションの向かい側にあるパン屋にはよく足を運んでいて、彼の言う通り丁度食パンが焼き上がっていた。
人気な食パンでいつも行くと売り切れていたから今日は買えて運が良かった。
外に出てみると地面にうっすらと残る雪が照りつける太陽の光に反射して輝いている。
「こうしてみると綺麗だねっ!」
「そうだな、……鼻真っ赤だぞ。」
「わっ!ぅ…、ちょっと冷えたのかな…。」
「外出るのにマフラーとか手袋とかしてねぇからだろ?」
「う…、そういえば、そうだね…、慌てて着けてくるの忘れちゃった…!でも、馬淵の手が温かいから、えへへ、気にしないっ!」
「あのなぁ…、風邪だけは引くなよ??」
「うんっ、分かってる〜!」
帰宅後に昼食を済ませ、彼が仕事に戻ったタイミングで今日の夕食に頭を悩ませた。
クリスマスディナーは豪華にしようと思い、冷蔵庫に買っておいた食材を眺める。
思い付いたものの中からいくつか候補を上げて、早速夕食の準備に取り掛かった。
「ふぅ……、うん!上出来!今何時かな?三時半…。馬淵が仕事終わるまではあと二時間半か…。あ!プレゼント…!!」
彼に渡すプレゼントを寝室のクローゼットの奥にしまっていたのを思い出す。
物音を立てないようにして寝室から持ってきてラッピングを始めた。
今回選んだのは仕事用の万年筆。
今彼が使っているものは前の誕生日にプレゼントしたもので、かなり使い込んでインクの出が悪くなってしまったため、自宅用にすることにしたという。
「よし、ラッピングも出来た!ちょっと休憩しよっと…!!」
無事にプレゼントのラッピングを終えて、自分と彼のために紅茶を淹れ、彼の部屋に持っていく。
丁度会議を終えたところだったようで、お疲れ様という言葉と共にマグカップを渡した。
リビングへ戻って少し休憩をとった後に、仕事を終えた彼と共にクリスマスパーティーを始めた。
手料理一つ一つを美味しいと言って食べてくれて、それだけでも嬉しさで心も身体も満たされていく。
「美味かった。」
「ふふっ、良かった!じゃあ、ちょっと後片付けするから、先にソファに座ってて!」
「いや、俺も後片付け手伝う。」
「…!ありがとう…っ!」
彼と共に後片付けを済ませたあと、ローテーブルの方に手作りしたクリスマスケーキを運んだ。
彼のために少しだけ甘さを抑えて、自分の大好きなサンタの砂糖菓子を乗せたケーキ。
「作ったのか??」
「うんっ、今年は頑張っちゃった!」
「……ありがとな。」
そう言って優しく笑った彼に頭を撫でられて、つい嬉しくなって目を閉じて受け入れる。
少しだけそれに夢中になってしまって、彼がそれを見て笑ったことで我に返った。
「どうかしたか?」
「あっ!!!い、いやっ、な、なんでもない!!ほ、ほら!食べよっ!!紅茶も淹れたし…!」
「あぁ、……ん、美味い。」
「ほんとっ?良かった…!!去年食べたケーキに比べると、微妙かもしれないけど…!」
「いや、こっちのほうが美味い。」
「……うん、ありがとうっ…!あっ、そうだ!!…はい!これっ、メリークリスマス!」
今のうちに渡しておこうと思い、ラッピングした箱を彼に渡した。
すると彼の方からも紙袋が手渡され、毎年恒例のイベントだが嬉しい気持ちでいっぱいになる。
彼から貰ったのは彼がいつも使ってるものと同じ香りの香水。
「わぁ………!!ありがとうっ……嬉しい!!」
「俺もありがたく使わせてもらう。」
無事にプレゼント交換を終えて、ちらりと目線をずらすと、再び窓の外は真っ白な景色が広がっていた。
窓際の方に行ってみるとイルミネーションの点灯も始まっていて雪景色が更に綺麗に映っている。
「とっても綺麗だね…!また、来年も一緒にクリスマス過ごそうねっ…!」
「あぁ、そうだな。楽しみにしてる。」
そういえば去年も同じことを言ったなと思い出し、お互いに顔を見合わせて優しく笑い合う。
そしてもう一度「メリークリスマス」と呟くと、互いに唇を重ね合った。