ふたり渦中にいるとわからないものだが、少し離れてみるとその場の喧騒の大きさが身に染みる。宴会場と化している大広間から一つ部屋の角を曲がった縁側は、月に照らされた中庭の静けさがしっとりと満ちていた。だからこそだろう、時折ドッと湧き起こる波のような笑い声と、それに覆いかぶさるような囃し立てる声が遠い別世界のことのようだ。
部屋に籠った熱気と、さぁさぁ飲めや食えやで絶え間なく注がれた酒はこの身の血流をぐんぐんと早め、いつのまにか、冬の夜風を気持ちがいいと思えるほどに火照らせていたらしい。
いつもなら元より高い襟にさらに首を縮こませてしまいそうなキンッと冷えた空気が心地よくて。きっちりと閉め上げていた内番着のファスナーを寛がせて、ふぅと息をついた。幸いこの場には、自身を連れ出してきた清麿という気の置けない相手しかいないので。
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