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    せなん

    地雷原(成人済) 誤字魔

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    せなん

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    アレセリで企画②お題4!推敲ほとんどせず勢いで書いたからミスあるかもごめんね。

    ##小説

    お題
    ――
    祭りというのは根付いた文化、土地、人種信条、他諸々地方によって個性が出る。この地方では鎮魂祭を夏に行い、灯籠を街に灯し花火で死者を送り出す文化があるらしい。
    祭りは花火と灯篭街の本祭が2日、残りの5日間は昼に出店が軒を連ねていた。死者を最期にもてなすという意味で毎年賑やかなものとなっているらしい。
    「ちょうど参加出来てよかった」
    5日目の昼、祭りに参加したいとフードを被ったセリスは護衛を兼ねたシンプルな普段着のアレスと共に出店を回っていた。
    セリスには断りを入れ一村人とその彼女という体で動いていた。しかし時々アレスが肩を引き寄せたり、人混みで手を引いたり、フードを目深に被っているため顔色を伺うよう下からアレスが覗き込んだり。セリスはひとつひとつの仕草にときめいた。
    セリスは、アレスに片想いをしている。他の誰とも違う、解放軍の騎手ではなく一個人として付き合ってくれるアレスに、セリスは信頼や友情…そしてそれ以上の感情をいつにか持つようになった。
    「ぼーっとして大丈夫か?」
    「…!ううん、大丈夫。ちょっと考え事してて。」
    「心労溜めすぎるなよ。」
    まさかアレスのことを考えてぼーっとしたなんて言えるわけが無い。あくまで体として手を繋ぎながらアレスは次にどこへ行きたいと周りを見ながら行った。
    「…アレスはどこか回りたいところないの?ぼく…、いや私が付き合わせちゃってるから」
    「いやそうでもないから大丈夫だ」
    アレスは手を繋いでいない方の手を見せた。
    「今までになく1番快適に買い物が出来てる。俺だって嗜好品やら装飾品の石やら色々買ってるぞ。」
    「ほんとに?」
    「ああ。普段男一人だと女には色目使われたり、あと装飾品を買おうとすれば貴族でもない男がそんなもの買ってって顔をされるからな。」
    こちらとしても助かっている。あくまで利害の一致としてアレスに感謝された。
    「じゃあ、せっかくだから一旦戻って荷物置いて、夜まで回れるだけ回ってもいい?市街の様子を見れるのはあまりないから。」
    「わかった」
    ほんの少し羽を伸ばし、一人の青年として外を歩きたい。本音は言わなかったがアレスにはうっすらと伝わったようで、二人は5日間かけて回るような市街をぐるりと歩き回った。

    「みてアレス!花火上がってる!」
    「わかったわかった」
    一旦城に戻る際、オイフェに一言告げ外で花火を見てから帰ると伝えていた。
    「ここ、おすすめされてたんだ」
    少し会場から離れた郊外の丘だ。賑やかな場所で皆で騒ぎながら祭りを楽しむのも良いが、少し離れてぼんやり光る市街の灯篭と夜空全景が見えるのも相まって幻想的な風景だ。
    「それにしてもいつ聞いた?」
    「さっき地元の氷菓子買った時に内緒話してたでしょ?あのとき」
    言われてみれば、年老いた女店主にそう言えばと話をされていた気がする。幸いセリスには気付いていなかったらしいが、花火の見える場所を聞いていたようだった。
    「でね、えっと……」
    「どうした?」
    突然セリスが不自然にどもった。セリスは深呼吸し、その……と続ける。
    「実はここね……」
    「告白の聖地なんだろ」
    「うん……ってえっ!?知ってたの!」
    「お前、俺4日間何してたと思う?」
    セリスは驚きつつも思い出す。確かアレスは武器の調達と資材の調達を市場に金を落とす目的も兼ねて出かけていた。
    「ヨハンとレスターとで行ったとき男ばかりで寂しくないのかって言われて1日目から知ってたぞ」
    「ええ……」
    最近ラクチェからまた何度目かの玉砕を食らったヨハンと、「お母さんみたい」と振られ軍内に噂が広がりに広がったレスター。その図を考えるだけで面白いが、ふと気づく。
    「アレス、その、それを知ってここについてきたの?」
    セリスの顔が花火ではない色で赤くなる。
    「まあな。で、俺に何か言いたかったんじゃないのか?」
    「あ、アレスだって、今までそんな素振り一瞬も見せなかったじゃないか!」
    「見せたらお前が困るだろ」
    お前はずっと親友として付き合ってくれたじゃないか。
    「そんなの突然、俺が言ったらお前が困るんじゃないかって。お互い関係を崩したくないだろ?」
    「た、確かにそうだけど……」
    ただ、この丘の逸話を知って、そしてここにお互いに来たということは。
    「で、でもさ!えっと……その……」
    「締まらんな。お前は俺に、恋愛として気があってここに連れてきたんだな?」
    「う、うん」
    ぱっと顔を上げるとアレスの後ろに1つ大きな花火が上がった。深呼吸をして、勇気を出して。
    「アレス、僕は、君のことが好きだよ。「僕」を見てくれるところ、新しい世界を見せてくれるところ。君とどうかこの先も歩んでいきたい。」
    「ああ。俺もだ。俺もお前に告白をする為に来た。俺を前に進ませてくれて感謝しているし、これからもどうか道を照らす無二の友…いやそれ以上でいてほしい。」
    「くさっ」
    「はぁ!?お前だって似たようなもんだろ」
    ああもうとアレスは頭を掻く。
    「ほら、最後どうするか聞いただろ?」
    「うん」
    ほら、もうすぐ花火終わるぞ。セリスは最後と言わんばかりに上がる花火を背景にしてアレスへキスをした。この丘の言い伝え――鎮魂祭の花火の中で告白した者は結ばれ、花火が終わるまでに口付けを交わすと永遠に結ばれる。いつにか彼女から口付けると条件が追加されていたらしいが、前領主の夫婦が女性から口付けそのまま婚約に至ったからと50年程前勝手に伝統へ付け足されていたらしい。
    ありきたりな言い伝えに雑に足された伝統に。聞いたアレスは笑ってしまったが、悪くはないなとこの丘に来たのだ。
    「――帰るぞ」
    ぱらぱらと最後の花火が終わり、数秒合わせた唇を離した。
    「ほら、灯篭貰って帰るぞ」
    「うん」
    アレスとセリスは二人、恋人として手を繋いで丘を下って行った。

    ――

    おまけ

    「何か声聞こえる……えっこわ…」
    アレスは無言でセリスの手を引っ張って行った。アレスはこの声の正体を知っているのだ。
    (クソお前ら整備された道の近くでヤるんじゃねぇよ)
    実はこの丘、また色々尾ひれがついている。特にここ十年、花火大会の間に「契った」夫婦は、子供を授かることが出来るとよくわからない噂が立っていた。つまりは、まあ、そういう事だ。
    (早く自警団か何かに捕まりやがれ)
    「あっ」
    セリスはアレスの早足と大股の歩幅に追いつけず躓いた。幸い受身を取り怪我はなかったものの
    (いや今そういうことじゃないんだよなぁ!)
    いわゆるラッキースケベというやつか。変な体勢になってしまった。
    「……!!!まって!アレスごめん!!!」
    よく分からない、しかしいかがわしい体勢にセリスは急いで起き上がろうと手に力を加えると、アレスのボタンの合わせを引きちぎる形となってしまった。
    「……落ち着け。俺も落ち着いて帰るから。」
    「うん……うん…………ごめん……」
    ボタンどころか前立てまで破られたアレスと転んだ時についた土で汚れたセリス。城に戻った時オイフェとシャナン、夜警に居合わせたフィンとで大きく誤解されたのは別のはなしである。
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