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「珍しいな。」
「ストリートピアノの企画だって!」
大学が多く立ち並ぶ学生街、セリスは夏休み前には無かった白いアップライトピアノに気づく。今弾いているのは塾かばんを背負った女児ふたり。曲はかの教本の有名曲で、習いたてだろうかところどころつかえていた。
ピアノに近づくと隣にパネルがあり詳細が書かれていた。ストリートピアノの企画は企業のモニタリングのこと、また時期を見て街をまたいだ別の駅に移動させるとのことだそうだ。
「期間限定なんだね」
「だろうな。ただでさえピアノは調律大変なのに、外でその上白なんて数週間くらいしか置かんつもりなんだろうな」
とパネルの前で話をしているとふと曲が止み、と同時に「どうだった?!」と横から聞こえる。思わず声に目を向けると女児二人のキラキラとした4つの目がこちらを向いていた。思わずセリスとアレスは拍手をした。
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