フォーチュンドール4章1話時は幸の入学から二年…いや、世界同時多発的気候変動から1年半ほどが経った頃…
日本の中で東日本ほどの広さを持つ貝森特区ができ、能力者や魔導士、魔女たちの生活も落ち着いてきたころ。さて、久しぶりに幸の登場です。人形達からもらった四つ葉のついたカチューシャをつけ、全身を緑ベースの服を着た幸は特区内に唯や雫、また先輩たちも来ている情報を得ると、まずは唯と雫に会おうと待ち合わせ場所を決めていた。それにしても特区内は広いため、幸のいる地域に唯たちがいるかもわからなかったが、各所にワープゲートがあり、それをくぐれば端から端に行くのも容易らしい、唯が道に迷わないといいのだが。
幸はスマホで、唯や雫と連絡を取りながら今どこにいるか確認し、ようやく東地区の学校らしき建物に集まることができた。赤いバンダナが特徴で服はサロペット、黄色いリュックサックには幸と雫からもらったティンダロスのぬいぐるみが入っている唯、全身紫ベースでワンピースとマントを身に着けた雫、久しぶりの三人の再会にみんな喜びながら、他愛ない話をしている。
「久しぶりね、雫はいろいろ大変だったかもしれないけど。無事で何よりね。」
「は、はい…どうやら私…魔女…みたいで…」
「魔女についてはよくわかんないけど、しずはしずなんだし、何も変わんないって!」
「うん…。」
「にしても、なんで魔女になってしまったのか、いまだに魔法は制御できないでいるんでしょう?」
「あ、はい…たまに魔法暴走しちゃって…」
「困ったものね。」
「あ、そういえば、魔女の件については幸運を呼ぶ黒猫に聞くといいって特区の魔女たちが言ってた!」
「幸運を呼ぶ黒猫?」
「なんたって影のように真っ黒で目の色の見えないくらいの猫らしいですけど、その猫も魔女でかなり長い間魔女やってるとか」
「その猫に会えば何かわかりそうだけど…手掛かりはあるの?」
「それはないです。かなり気まぐれみたいでどこにいるのかも。」
「なんか…私のために…ごめんね…」
「いいのよ。一番つらいのは雫なんだし、そんなに引っ込み思案にならないで、言ってね?」
「は…はい。」
「とりあえず、また魔法が暴走したりしても私たちじゃどうにもできないから、まずは、魔法を使えるように私が手本になろうと思うわ。」
「え…。」
「幸さん、魔法使えるんですか?」
「いいえ、使えないけど、使えるようになる心当たりはある。知ってるに人に魔法にそこそこ詳しい人がいるでしょ?その人に聞いてみるわ」
「わぁ!幸さんやる気満々ですね!俺も応援します!」
「無理しないでくださいね…」
こうして、幸は魔法が使えるように特訓をすることを決意した。数日後、幸達3人は魔法にそこそこ詳しい人、薄茶色の服装に緑のストールを身に着けた男、将信を誘い、魔法に使い方を教わろうとしていたが、魔法を使うためにはマナコアのマナゲートを開き、魔力を制御する必要がある。魔導士は生まれつきその素質があるのだが魔導士ではない人間はかなり努力と素質がいるという。そして、魔女もそれに値するのかは将信でも知り得ないことである。それでも幸は雫のためにも自分が手本になりたいというのだ。将信もその意志は飲もうとしているが、何から始めたらいいものか、そういえば、幸の人形達はみんな、マナゲートを開いていたはずだと思い、ひとまず、人形達からマナゲートを開いてもらうことをお勧めした。
あとは、魔法属性についてだ、魔導士であれば幼少期から一通りの魔法属性を試して自分に見合った属性を特化していくので全属性の魔法を軽く使うことは可能であるが、幸の場合、そこまで試したりすると魔法は強くならないだろうし、何より幸の負担になるだろうと将信は考える。そうこう考えているうちに幸は人形達からマナゲートの開き方を教わり、手のひらに軽い魔力の玉を出して将信に見せる。
「先輩、こうですか?」
「よくできてるじゃないか、覚えは早いな。」
「ありがとうございます、ここからどうすればいいでしょう。」
将信は自分の手のひらで各属性の魔法を少しずつ出して幸に見せる。どの属性の魔法を使いたいか、幸に問うが幸は迷ってしまっているようだ。これから人形達と連携をとりなが
ら戦うのであれば炎はやめといたほうがいいだろうし、雫の手本になるなら風だろうか?いろいろ考えたが将信にも考えはまとまらず、幸の顔色を伺おうとしたとき、カチューシャの四つ葉が見えた。樹属性の魔法はどうだろうか?幸に確認をしたらそれでいいと返事きた。そのころ、唯は人形達からマナゲートを開いてもらおうとしてたが、これがまたうまくいかないようで、雫も応援しているが、どうやら唯に適性はないようだ。将信はそういえばと雫に話しかける。
「譲葉、兄さんは今なにしてるんだ?」
「お兄ちゃんは…私を…守るためにって…道場に…修行を…」
「そうか。俺たちも魔法の修行、頑張ろうな。」
「は…はい…」
「俺だけ仲間外れか~、まぁ、3人で頑張ってくれよ~」
唯は自分がいても邪魔になるかと思い、先に帰っていくのだった。幸は道に迷わないといいんだがと思いつつ、将信のほうに向きなおった。
「では先輩、よろしくお願いします。」
「俺でよければって感じだけど。いくらか人形達にも協力してもらうぞ。」
幸と雫、将信とまた人形達で魔法特訓の日々が始まったのである。
一方そのころ、貝森特区の別の地域にて、何人か魔力を失った人の報告がされていた。魔女の間では数年前にマナイーターの魔導書を盗んだ何者かによる犯行とみて、その何者かが貝森特区に侵入したのだというのだ。
3章を見ていたならばもちろんこれが凛太郎の仕業であることは容易にわかる。緑の眼鏡、紫色のフード付きの服を身に着けた凛太郎は、貝森特区内をさまよっていたところ、ゴシックと学生風の服を合わせたような衣装をまとった黒い帽子の女の子と再会する。学校での事件の後、実家に帰っていたがこの日はこの貝森特区の下見に来ていた鶴花である。
「あら、凛太郎くん、こんなところで会うなんて。」
「あ、鶴花ちゃん久しぶり、元気してた?」
「そうね。お兄様が大けがして大変だったわ。ところでこんなところで何してるの?」
「食z…ちょっとお散歩、元々貝森系列の高校とか通ってるとこの辺地域に住むのラクでいいんだって。」
「そうなんだ~。これはいい情報ありがとうね。」
「うん、じゃあ僕はこれで。」
「さようなら~。」
何か急いでいるのか鶴花には凛太郎少し焦っているようにも見えた。にしても、チームを組んでいたころに、誉の相棒の蛇であるロイが、凛太郎に警戒して、疑似的なマナコアであり且つ食べると中毒性のある蛇イチゴを用意してくれた時に、いくつか減っていたので、中毒になってないか心配していたが大丈夫そうだと思った矢先、鶴花のところに魔女たちがやってきた。
見かけない顔だからと、怪しまれたが元貝森第二高校の生徒だというと警戒は解けた。さらにこの辺で魔力を食うマナイーターの能力を持った奴も見なかったかと聞かれた。蛇イチゴの件から凛太郎ではないかと確信した。鶴花は凛太郎の事をあっさり魔女に教えた。
凛太郎のその後は鶴花が知る由もない。ある程度の下見を終えて、村に帰ろうと思った鶴花はたまたま道場の近くを通り、目をやると、この地区におそらく来てるであろう嫌いな彼、夜の姿が見えたのですぐに目をそらし、村に戻っていくのだった。
つづく