杜王グランドホテル324号室「明後日、っすか」
「ああ」
動揺に揺れた仗助の心情を表すかのように、ふたりの間を風が通り抜けた。梅雨のじっとりとした湿り気も、寝苦しい夜の生ぬるさもない、誰もが気持ちいいと感じる夏の渇いた風だった。承太郎はジャケットの襟をなびかせて、美しい所作でカップをソーサーに置いた。普段は気にならない、陶器と陶器がぶつかる小さな音がこの日の仗助の耳にはやけに響いて聞こえた。
明後日、この街を発つという。
吉良吉影を倒して、杜王町には平穏な日々が戻っていた。仗助の生活ももうほとんど元通りで、変わったことといえば、スタンド使いの友人ができたことと、放課後に茶をたかりに行く親族が増えたことぐらいだ。仗助はある日突然息子になり、そして叔父になった。
3747