戯れ「悪いジジイじゃのう」
「悪い?」
アズマの言ってる意味がわからないのだろう、紫西は首をこてっと右に傾けた。あざとい。本人はあざといつもりなど毛頭ないのだろうが。
「若いもんを誑かして悪いジジイじゃ」
「誑かしたことなんてないよ」
祠でいつも通りうたた寝をしていた紫西に声をかけたのはアズマだった。アズマは夕餉の食材を探していたがちょうど休憩場所として紫西の祠に立ち寄ったのだ。
「北斗も紗南もお前さんに熱を上げてる」
アズマは煙管をふかした。煙を口から吐き出す。
「あんまり若いもんの道を踏み外させたら可哀想じゃ」
「よくわからないけれど、私のことを好きになったらよくないのかな?」
紫西は自分の唇をアズマの頬に寄せて口付けた。予想外の紫西の行動にアズマは目を瞠った。
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