Elep_zousanREHABILIうーーーん重い!2.西園寺羽京の慕情夢だろうか。それか、幻覚か。掴まれた手首が熱い。離さない、と言われているようで。七海龍水に告白された僕から出た言葉は、「ありがとう」だった。龍水は優しく微笑んで僕の頬を撫で、それから泊まっていくか?と聞いた。さすがに頷けず、僕は忘れ物をしたと言ったことも忘れて背中を向けた。先程までしっかり掴んでいたはずの大きな手はあっさり解かれ、「おやすみ、気をつけて帰れよ」なんて、いつもの声より柔らかく、押し寄せる漣ように響いた気がしたのは、僕の気のせいだったかもしれない。足取りは、一定の拍子で。遅くもなく、早くもなく。いつも体の中心で刻む拍子に合わせている。けれど、明らかに、僕の歩調は徐々に早くなってしまっていた。どうか、無様な僕の後ろ姿を見られていませんように。ちらりと振り返ると、部屋の中から伸びる明かりの中に、同じように伸びる影。黒いそれを近くから辿って、逆光でよく見えない人の形はヒラリと手を振った。胸が締め付けられて、僕は息を呑んだ。本当に、好きだって言われたんだ。その事実に打ちのめされて、頭の中が真っ白になる。気付けば、煌々と月が照る夜道を走 6578 Elep_zousanREHABILIちょっと長めの連載になります。1.七海龍水の独白俺は、自前の勘の良さについては自負しているところがあって、人生の役に立つ素晴らしいシックスセンスだと思っている。それから、手先の器用さや顔の造形だってそうだ。持って生まれてきたものが、恵まれていることを自覚して生きてきた。育ての親でもある叔父は口煩かったが、子ども扱いすることはなかった。子どもだからという理由で、適当にあしらわれたり、必要以上に手を貸すことはなく、あくまで一人の人間として扱ったということだ。物事にはルールがあること、自分でできることは自分でやること、できないことに挑戦し続けることを説き、常に自立と自律を求め厳しく育てた。幸いなことに、幼い頃から好奇心旺盛で非凡だった俺にはぴったりの教育方針で、すぐに手がかからなくなったと思えば、一人で何でもやってしまうあまりに逆に手がかかるようになるという、大人たちにとっては本末転倒になってしまったわけだ。文句や不満の声は無視し続けているが、俺の持つ資産、ステータス、俺自身ですら利用して欲しいものに手を伸ばすことの何が悪いのか、誰もまともに答えることなどできないだろうに、何を騒ぐのかさっぱりわからない。( 4946 1