赤みを帯びた細い弧が、じわりと溶けるように闇に消えた。よくよく目をこらさねば見えないような、朧気な赤黒い円だけが空に残っている。
息を詰めて見入っていたせいか、ため息がいくつか漏れ聞こえた。
「むっ? 千空、あれはないのか、何とかリングとかいう……」
静かな闇の中で、光のように明るく伸びやかな声が問いかける。
「そりゃ、日食の方だ。太陽の光ってのは半端なく強いせいで、月が太陽に重なっても周囲に光が漏れてリング状に見えるってやつな。月の光は太陽光の反射で、月自体が発光してるわけじゃねえ」
「ダイヤモンドリングというのだったかな」
世紀の天体ショーに気分があがっている科学者が滔々と答えると、隣に座る最強のナイトが柔らかく言葉を添えた。
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