【翻訳】彼安汀・サブストーリー─────────────────────
ある大物の個人秘書のようで、いつも出張に出かけているが、交界都市については詳しい。手作りのデザートは甘い渦に落ちたかのように感じるほど美味しく、特別な人しか味わえないという噂がある。

寝坊してしまった！しかしヴィアティンの電話のおかげで起きれた。中央市街区で彼に会いに行こう！

寮が爆発するなんて、本当に運が悪い一日だ……しばらくヴィアティンの家に泊まることになった。奇妙な夢を見たようだが、夢の中身が思い出せない……

ヴィアティンの家はベイシティにあり、窓を開けると海が見える。今日は仕事がないので、家でゆっくり休もう。

また奇妙な夢を見た。夢の中で話した人はなぜあんなにも親しみ感じたのだろうか？もし次に会うことがあれば、彼を覚えておきたい。

港湾地区に人気の飲食店ができたと聞いたが、ヴィアティンは気に入ってくれるだろうか？彼は出張中なので、ちょっと買って帰ろうかな。彼にはいつもお世話になっているしお礼を言わないと。

夢の中のヴィアティン……いや、夢と現実は正反対なものだ……彼が帰ってきたら、安全に注意するよう伝えなければ。

ヴィアティンの安否は確認できたが、いまだに不安な気持ちが残っている。今日は早めにベイサイドシティに戻ろう。

夢の内容を思い出せてはいないが、あの安らぎと平穏、懐かしい感覚……きっと悪夢ではなかったはずだ。

寮の修理が終わり、ヴィアティンとの共同生活ももうすぐ終わりだ。別れるのは寂しいが……今日は荷物を整理して、彼にしっかりと別れを告げよう。今度は、彼を自分の寮に招待して遊ぶとしよう。

明日、また会える。
─────────────────────

『赤の印と銀色の贈り物』

事態はヴィアティンとのパトロールが終わった後に起こった。
家に帰っていた時のこと───

ヴィアティン】
あっという間に終わったね、パトロール。中央庭に戻ったらお別れだ。新しい派遣任務がもう端末に送られてきていてね。

ヴィアティンはある重要人物の個人秘書をしているらしく、行方をくらますことが多い。

ヴィアティン】
面倒な上司がいるから、仕方ないことさ。

ヴィアティン】
…あ、君の端末も震えてるよ。

戦術端末を取り出すと、画面にメッセージが表示された。

管理者】
申し訳ありません、指揮使い。とても残念なお知らせなのですが。

管理者】
たった今寮で原因不明の爆発事故が起きました。総務課のスタッフ達が修復を行うと同時に犯人の特定を急いでいますが、安全面を考慮して調査が終了するまで寮には戻らないようお願いします。

(なんだって！)
(早く部屋代わりの部屋を！)

ヴィアティン】
指揮使い、何かあったのかい？…え、寮で原因不明の…爆発？ビルが半壊だって？

ヴィアティン】
…まさに思わぬ災難…だね。

ヴィアティン】
あの、仮住まいがないなら家に泊まらないか？俺が借りてる家は中央庭に近いし、客間もあるから。

○
1（本当にいいの？）
ヴィアティン】
気が引けるっていうなら、今度ご飯でも奢ってよ！

2（じゃあお言葉に甘えて。ありがとう！）
ヴィアティン】
滅相もない。むしろ役に立てて嬉しいよ。
○

管理者に簡潔に報告を済ませると、ヴィアティンは笑みを浮かべながら銀色の鍵を手渡した。

ヴィアティン】
借りた家が広すぎて、一人だと何だか落ち着かないから、これまではあんまり帰ってなかったんだ。

ヴィアティン】
もし君と一緒にいられる時間が増えるなら…頑張って仕事を早く片付けて帰ってくるよ。

ヴィアティンは少し近づいてきた。

ヴィアティン】
君ともっと話がしたかったんだ……。

ヴィアティン】
それじゃあお先に。何かあったら必ず端末に連絡してくれよ。

ヴィアティンの家は……どんな感じだろう？


とても整頓されているが、同時に空っぽなようにも感じる。

ところどころに薄っすらと埃が積もっているが、キッチンだけは頻繁に使用されているようで、様々な茶葉や食材が収納されている。

その日の夜、トイレに行く途中だった。

あれ？

鏡に映る自分がいつもとは異なっていた。

左耳にはイヤリングが付けられており、奇妙で美しい赤い宝石が輝いていた。

頭を振ってもう一回見てみると、そこには何もなかなった。

指揮使い】
見間違えかな……？

ぼんやりしながらベッドに戻ると、疲れれているせいか眠気が酷く、さっき疑問は消え去ってしまっていた。意識が徐々に沈んでいく…


苦痛。

苦痛、悲しみ、後悔、怒り、憎しみ。

循環が延々と繰り返される。　

強い負の感情が流れ込み、段々と手足の感覚は失われていく……
感覚が麻痺しているのにも関わらず、激痛が襲いかかる。

指揮使い】
誰かいないの…

指揮使い】
助けて————

意識はどんどんぼやけていく。

その時、暗闇の中で声が響いた。

？？？】
それが君のの望みなら……

指揮使い】
……！！

悪夢から目を覚ますと、冷や汗が服に染み込んでいた。

具体的な内容はすぐに薄れ、思い出すことができない……

いったい今、どんな夢を見ていたのだろう？


『契約』

暗闇の中、巨獣が静かにこちらを見つめている。

指揮使い】
ごめんなさい、また私が……

？？？】
君のせいじゃない。

？？？】
輪廻は常に繰り返し、君はその中に陥っただけだ……
なんとかして助けてみせる。

？？？】
どんな手段を使ったとしても……

（あまり恐ろし手段は使わないで。）
（この世界には大切な人がたくさんいる。）

？？？】
……

？？？】
全く、こういうときだけ鋭いね。


（長い付き合いだからね。）
（あなたの考え方は知っているから。）

？？？】
わかるなら、こっちの答えも想像できるはずだ——それはできない。

？？？】
契約などの束縛がない限り、俺が君に従う必要はない。

指揮使い】
でももう、あなたに支払えるものがない……

？？？）
君は……それほど大事に思っているのか？

指揮使い】
うん。

？？？】
……いいだろう。どうしてもそうしたいのなら、対価を支払えるものに変えても構わない。

？？？】
俺と再開した時、笑ってくれ。

その後の言葉は聞き取れず、ただ「私」と闇の存在と断続的な対話が続いた。

ここがどこかかは考えず、ただとても親しみを感じていた…

しばらくして、「私」は次第に眠りに落ち、闇の中で黒いブロックとなって砕け散った。

白い巨獣が立ち上がり、暗闇の中を静かに歩き、ある場所で立ち止まった。

七つの頭が一斉に前を見た。

？？？】
なぜずっとこんな場所のために頑張っていたんだ。俺には理解できない。

獣が低く唸りると、心地よくも時には異様な音色を帯びた、悪意と冷たさを微かに漂った声をこぼした。

？？？】
俺だけ見つめてくれるのなら、どれだけの愉悦に浸れるだろう。　


ヴィアティン】
〈指揮使い〉？大丈夫か？

（どうしてここに？）
（どうして戻ってきたの？）
　
ヴィアティン】
ふふ、君がここにいると思うと落ち着いて仕事ができなかったら、上司に休みを申請して早退させてもらったよ。

ヴィアティン】
帰った途端、物が割れた音がしたんだけど……君が寝たとき湯呑を倒したみたいだ。

ヴィアティン】
まだ起きないで、床が破片だらけだから片付けるよ。

ヴィアティンはドアを開けダイニングルームの方へ歩いていった。深夜の静寂の中でも、彼の足音はほとんど聞こえなかった。

ヴィアティン】
ホットミルクを入れたから、少し飲むといい。

ヴィアティン】
指揮使い、かなり疲れてるみたいだね。中央庭の仕事でストレスが溜まって悪夢を見るのなら辞めたほうがいいんじゃないかな。


（そんなにひどくないから）
（辞めたいと思っても、そう簡単に辞められるわけじゃない）

ヴィアティン】
優しいのはいいけど優しすぎるとデメリットが生じるよ。

ヴィアティン】
本気でやめるなら、俺が……

（いや、大丈夫だから！）

ヴィアティン】
中央庭の皆は優しいとか、異世界の問題を解決するために頑張ってるとか。…そういう言い方はそろそろ飽きてきたな。

ヴィアティン】
少しは自分のことを考えたらどうだい？

彼の目は暗闇の中で赤く輝いていた。

ヴィアティン】
ま、とりあえず夢の件から解決するとしよう。根本的に解決できないかもしれないが……

ヴィアティンはベッドの横に座り、枕元のランプに手を置いて軽く2回叩いた。

ランプはとても淡く、柔らかい光を放っている。

ヴィアティン】
新しい常夜灯だ。暖色系の光は人を落ち着かせるって言うからね。

その光を見つめていると、いつの間にかまぶたが重くなっていた。

ぼんやりとした意識の中で誰かが小さな声で喋っているのが聞こえたが、それらの言葉もすぐに消えていってしまった。

ヴィアティン】
いつか、君が自らの願いのために動くときがきたら……

ヴィアティン】
いつでも俺を呼んでくれ……そんな日が来るのを楽しみにしてるよ。


『闇の前の鼓動』
ヴィアティンの家の日用品を買い足しにスーパーに行った。一緒に暮らしているせいか、生活感を出したくなった。

そう考えると、ヴィアティンは警戒心がなさすぎるのでは？わずか数回しか会ったことのない人に鍵を渡してしまうなんて。

指揮使い】
私がいい人でよかったね。
……ん？

鍵を取り出してドアを開けると、ドアが半分まで開いたときに浴室の方から水の音が聞こえてた。

ヴィアティンかな？変だな、今回は事前に連絡はなかったけど……

買ったものをテーブルに置き、座って休憩しようとしたそのとき、突然奇妙な匂いが漂ってきた。

……血の匂い！

部屋の中にかすかに錆びた腐敗臭が充満しており、濃厚で不吉な気配が漂っている。

慎重に匂いをたどっていくと、それは浴室から漏れ出ているようで、湿気の水蒸気が肌にまとわりついてくるように感じる。

浴室のドアノブに手が触れようとしていたそのとき、ドアが突然開いた。

ヴィアティン】
……！！

ヴィアティンは白いバスローブ姿で驚いたように立ち尽くしており、露出している白い首筋には血のように赤い模様がある……

ヴィアティン】
えっと、指揮使い、トイレかい？客間にもあるはずだけど。

ヴィアティン】
……それからジロジロ見ないでくれるかな、けっこう恥ずかしいから。

○
1（ごめん。）

ヴィアティン】
……だ、大丈夫だ。

2（男なのに小心者すぎる！）

ヴィアティン】
……！
○

ヴィアティン】
じゃ、じゃあ一旦部屋に戻ってもらえる、髪の毛を乾かしたら声をかけるから。

指揮使い】
うん……わかった……


ヴィアティンは浴室のドアを閉めた。

ヴィアティン】
……
まずは無関係の痕跡を片付けるとするか。


ヴィアティン】
ごめんね、事前に知らせるべきだったよ。

ヴィアティン】
ちょっと着替え用の服を取りに帰って、シャワーを浴びてからすぐ出かけるつもりだったんだ……

ヴィアティン】
大丈夫、気にしなくていいよ。じゃあ、今すぐすぐ出発するの？

ヴィアティン】
ああ、仕事はまだ終わっていないしね……でも今回は最終段階だし、すぐに終わるさ。

ヴィアティン】
君は安心してここに泊まってていいよ！お先に。

ヴィアティンはそそくさと去っていき、部屋は再び静けさを取り戻したが、心の中の不安は残ったままだった。

迷った末に私は浴室のドアの前までいき、そっと開けた。

指揮使い】
何もない……

さっきの湿気以外は、浴室はいつものように清潔で整頓されており、血の匂いは何処かに消えてしまっていた。


暗闇が沈み、夢はやってくる。

家は清潔で整然としているが、どこか空虚で、半開きの窓から優しい光が降り注ぎ、すべてが静寂に包まれている。

ヴィアティンと向き合って座っている。彼はバスローブを着ている。

指揮使い】
あなたは……

ヴィアティン】
俺は大丈夫だ。

その言葉を言い終える前に、真っ白だったバスローブに突然血が滲んできた。

鮮やかな赤い色は徐々に濃くなり、バスローブ全体を染め上げていくが止まる様子はなく、更に広がっていく。

彼の肌は裂け、血のような赤い筋が彼の身体の表面を蛇行していく。血が絶え間なく流れ続けている。

絶え間なく絶え間なく。まるで鮮やかな湖を作っていくように。

それでも彼は笑っていた。　


『ため息の獣、忘却の契約』　

スタッフ】
こんにちは、指揮使い。寮の修理進捗および調査レポートについて報告します。

スタッフ】
現在、寮の修理進捗は80％。現場分析の結果、今回の事件は人為的なものでなく……自然現象による事故ではないかと。つまり、雷が偶然にそのまま指揮使いの部屋に当たったということになります。

スタッフ】
指揮使い、避雷針になりそうなものに心当たりはありますか？

○
1（そんなものがあるわけない……）

スタッフ】
了解しました、で調査を続行します。　

2（あるよ。）

スタッフ】
なら今後は気をつけてくださいね、指揮使い！今回は運が良かったですが、危険物を部屋に置かないようにしてください。
○

スタッフ】
前回の通信によると、指揮使いは今ヴィアティンさんのお家に居候されているようですね、何か不便なことはありますか？

△
1（順調だ。）

スタッフ）
ならよかった。あの人は指揮使いのことをかなり大切にしているようですね、妙な真似をすることもないでしょう。

2（慣れない、家に帰りたい！）

スタッフ】
そんな、あの人は指揮使いのことをかなり大切にしているはずです。指揮使いが不便に感じることがあるならきっと改善してくれますよ。
△

スタッフ】
とにかくこちらも、一刻も早く部屋の修理を完了できるようにします。では今日のレポートは以上です。お疲れさまでした。

スタッフ】
そうそう、指揮使い、今日つけてるルビーのイヤリングすごくきれいですね。とても似合ってますよ。

イヤリング？　

無意識に耳に手を伸ばすと、左側の少し冷たいイヤリングに触れた。

不思議だ、これは何だろう？
いつつけたのだろう？

冷たい感触がイヤリングから伝わってきて、頭が重くなってきた……早く帰っても休まないと……


獣の声が耳に響びいた。

？？？】
...計画のあらましはこんな感じだ。一定の時間を確保したから、成功する可能性はあるだろう。

？？？】
永遠にここで待ったり見たりしてはいられないしな。

しばらく沈黙が続いた。

？？？】
俺は話し方も口調も、より人間らしくなっている、感情もな。

？？？】
再開したとき気に入ってもらえるといいんだが。異質すぎたら君でさえ怖がるだろうな。

指揮使い】
私たちは昔からの友人だから、私はあなたを怖がらない。それに、あなたは私を傷つけるようなことはしない。

？？？】
ここにいるときは、思い出せるのか......

？？？】
思い出せなければ、恐怖しか覚えないだろう。

指揮使い】
それなら、頑張って思い出すよ。

？？？】
ここで味わった苦痛まで思い出してしまうなら、忘れたほうがましだ。

でも、私たちは約束したんだ！

大きな声で答えたかったが、衰弱した体と次第にぼやけていく意識では不可能だった。

？？？】
それに、俺はもう決めたんだ。思い出せなくてもいい。

？？？】
君が覚えていられないなら、俺が覚えておくさ。

？？？】
君が近寄ってこないなら、俺が近寄ってやる。

？？？】
少々寂しい話だが、再開できるならそれでいい。

？？？】
もう眠くなってきたのか？

？？？】
なら、眠るといい。すぐ会える。

七つの頭部に体を預け、巨大な羽に身体に覆われながら、眠くなった目を閉じた。

暗闇の中、美しい赤色が魅惑的な輝きを放っている。どこかで見たことがあるような？

そうだ、イヤリングだ……それを見てからずっと夢を見ている……

冷たい海水に包まれるように、視界の中に徐々に沈んでいく感覚。少し怖いけれど、落ち着く……


『最後の質問』

中央庭から寮の修理がようやく終わったと通知を受けた。

ヴィアティンは新しい鍵を渡してくれたが、その目からは寂しげな気持ちが伝わってくる。

ヴィアティン】
そうか、これでまた君は引っ越しか……

ヴィアティン】
この部屋も寂しくなるな。君が住んでくれてせっかく暖かくなったところなのに。君さえ良ければ、これからも時々ここに居候してもらいたいな。

（機会があったら。）
（たくさん遊びに行くね。）

ヴィアティン】
ああ、そうだね、機会があれば……

ヴィアティン】
君と一緒に住めれば、きっと幸せになれる。

ヴィアティン】
俺は〈指揮官〉のこと、大好きだから。

ヴィアティン】
えっと……そんな目で見ないでくれ、俺だって恥ずかしいんだ。でもどうしても君に伝えたくて。

ヴィアティン】
君にこの想いを伝えるのに、随分時間がかかってしまった。

ヴィアティン】
だから何回でも言うよ、今は答えなくてもいい。でも、真面目に俺の告白を考えてほしい。

ヴィアティン】
性別は関係ない。女の子のほうがいいなら……

ヴィアティン】
か、変わっても……

ヴィアティンは顔を赤らめながら、皿で顔を隠した。

中央庭からの車はすでに玄関の外で待っていた。ヴィアティンは何も言わずに荷物を運ぶのを手伝った。

彼に手を振って出発しようとした時、私は突然振り返った。

ヴィアティン】
どうしたんだい？

指揮使い】
何でもない、ただ……

無意識に彼にその言葉を伝えたくてなっなが、なぜこんな気持ちになるのだろう……？

指揮使い】
また明日、ヴァアティン。

ヴィアティン】
……

暮れゆく空の下、ヴィアティンの顔は半分暗に包まれ、もう半分は微かな驚きの表情を浮かべていた。

すぐにその表情は微笑みに変わったが、言葉で説明しがたい複雑な感情が含まれているようだった。

ピアンティン】
...ああ。

ピアンティン】
また明日、〈指揮使い〉。

車は角を曲がり、赤い姿は消えてしまった。
しかし、何故か錯覚のように、彼の視線を感じることができた。

とても不思議でありながらも当然のようで、心地良い。まるで彼の視線に慣れていて、彼がそこにいると知っていたかのように。


暗闇と混沌が訪れ、その声が再び響き渡った。

？？？】
今回の輪廻から動き出す。

？？？】
舞台には役者が揃った。君もゲストとして登ってもらうとしよう。

？？？】
心配するな、君が何かする必要はない。自分の身を守っていればいい。

？？？】
その苦痛を克服したとき、君は己の力を取り戻し、強くなっていくだろう。

？？？】
俺にできるのは君を扉の辺りまでエスコートすることくらいかもしれないけど、俺が扉の奥にある世界に進むのは許されないからな。

声が止まり、それから続ける。

？？？】
では、ここでさよならだ。最後に一つ、聞きたいことがある。

？？？】
君の目に映る俺は、どんな姿をしてるのかな？

○
1（モンスター）

ねっとりとした闇の中、白い巨獣が静か二佇んでいる。

その羽根、頭部、四肢、すべての周りに、沈黙した人形が無数に積み重なっている...…

それらは自分と同じ顔をした人形だった。

巨獣はまるでおもちゃを抱きしめる子供のように、人形たちの中心に横たわり愛情を込めて話しかけている。

最初の頭は、「なんて可哀想なんだ」と言った。
二番目の頭は、「なんて愛おしいんだ」と言った。
三番目の頭は、「俺が救ってあげる」と言った。
四番目の頭は、「ずっとここにいてくれ」と言った。
五番目の頭は、「俺にも微笑んでくれ」と言った。
六番目の頭は、「俺以外見ないで」と言った。

七番目の頭は、片方の目がなく、残りの一つは暗闇の中で鮮血のような赤い光を放っている。

？？？】
俺はずっと君を見つめている、ずっとね。

七番目の頭がそう囁く。

？？？】
……これからも、ずっと。
　

2（神）

目の前に徐々に現れる全てが異常に混沌としている。

崩壊寸前の世界で、空が徐々に砕け散り、海は遥か彼方まで高く上がり、世界全体を飲み込もうとしていた。

白いローブを纏った存在は世界の流れの中を静かに漂っている。

残骸の中には見覚えのあるの顔もあれば、知らない人の顔があった。しかし、彼らはもう話すことはできない。

苦痛が襲いかかり、立っているのがやっとだった。

白いローブの裾は血で汚れていたが、あまり気にしていないようで、未解決の獲物をひたすら探していた。

ユリエル】
...まだ生きているのか、タフだね。

何かを発見したのか廃墟の一角に向かって飛んでいき、無表情に見下ろした。

ユリエル】
シー。

修正者は低い声で囁き、手の中には血のような赤い光が集まっている。

ユリエル】
花園に眠っている人を起こさないでくれ。

カチャ。

…それは、枝葉が切られた音だろうか？


→3（人間）

薄明かりに照らされた部屋が、徐々にはっきりしてきた。食卓の上には、自分用意した晩ごはんが置かれている。

ヴィアティンはじっくり味わい、食べ終わると顔を上げた。

ヴィアティン】
ありがとう、〈指揮使い〉。

彼は微笑んだが、その微笑みは徐々に奇妙なものになっていく……

いや、表情や輪郭のせいではなく、顔そのものが。

その美しい顔はひび割れた彫像のように粉々に崩れ落ち、顔の特徴も徐々に剥がれ落ちていく。

硬直したまま椅子に座り、喉からは声が出ない

やがて、向かいに座っていた存在は、形もなく輪郭もない完璧な蒼白に変わっていた――

特徴を失った顔は、石膏のように白く、血のように赤い瞳だけが黙って自分を見つめている。

声を出す器官がないのに、どうしてその声が聞こえたのだろう？

ヴィアティン】
ありがとう、〈指揮使い〉、それから……

彼は笑いながら言う。

ヴィアティン】
また明日。

指揮使い】
……

○

目が覚めた...いや、本当に目が覚めたのだろうか？

ふらつく身体を支えて洗面所に行って顔を洗い、頭をすっきりさせる。

鏡の中の自分は、いつもとは何か違うようだ。

イヤリングだ。

美しい赤は徐々に精神を侵食していく。

何かおかしいと思うべきだし、気づくべきだ。こんな習慣はない。買った記憶もない。耳につけたこともない。

だが、それはとても自然で、とても愛おしくて。つけても大丈夫かな？

無意識に指先で宝石をそっと撫でていた。

指揮使い】
すごくきれいだな...

同時に、鏡の中のイヤリングをしている人物も微笑み返した。