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    mizu_bluesky

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    mizu_bluesky

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    応援団に参加したクァリアさんの魔法が、
    応援団に参加していたことを何も知らないうちの子たちに届いたらきっとこんな感じだったのではというIF話。

    こすずめ視点。

    推敲してないので読み直しつつ、
    ちょいちょい表現を変えたり改行を直したりしてます。

    あまりにもうちの子色が強いので運動会タグに関しては保留中。

    加筆修正(2022/05/28/14:00)

    ##クァリミズ

    『家族が応援団に参加する話を聞かないまま競技に参加していたらのIFの話』燦燦と降り注ぐ陽光の下、本日は絶好の運動会日和である。
    これでもかと準備した荷物を抱えて、はしゃいだミズと一緒に会場入りしたのは数刻前のことである。
    荷物を取り出して並べるうちに、これは持ってきすぎてしまったのでは…?と若干正気に戻ったミズが、持ち込んだ飲み物の一部を屋台に預けて一息ついたところだった。
    のんびりとした空気が流れる中、道行く星の子を眺めるのも楽しい時間である。
    この競技が気になりますね、あれなら参加できるんじゃない?と今日の予定を話していた時だった。
    とある競技のアナウンスを聞いて、ミズがそっと立ち上がる。

    「行ってまいりますね」
    「うん、いってらっしゃい」

    そっと送り出せば小さく手を振ってくれたので振り返した。
    彼女は少し困ったように、それでも楽しそうに笑って競技場まで駆けていく。
    ゆらゆらと揺れるマンタの尻尾は、彼女の心の内を表すように楽しげだった。
    運動はあまり得意ではないんですよと言う割に、
    彼女はこの運動会をとても楽しみにしていた。
    得意ではなくとも、身体を動かすこと自体は好きなひとだ。
    ミズが楽しそうにしている姿を見ていると自分も楽しい気持ちになるから、今回の運動会に参加できてよかったと心から思う。

    色々な星の子に出会った。
    競い合うのも楽しかったし、会話をするのも興味深かった。
    自分は家族以外との交流をあまり持たない方だから、
    この運動会ではほぼ初対面の相手との交流になった。
    色々な考え方や行動を見ることができたし、知らなかったことを教えて貰えたりもした。知らなかったことを知ることができる瞬間は、何よりも楽しい。
    それがこれから先の糧になるからだ。
    けれど、知っているからこそ心配になることもある。
    ついさっき出かけて行った家族のことを思うとどうにも落ち着かない気持ちになる。

    ミズが参加するために駆けていった先は、空のレースなのだ。
    飛ぶのが苦手と困った顔で笑う彼女がどうしてそれに参加するに至ったのかはなんとなく察するところはあるのだけれど。
    彼女は運動が下手だ。
    空を飛べば木に引っ掛かり、海を泳げば海流に流される。
    そのたびに家族に回収されているのは日常茶飯事である。

    ミズは確かに運動が下手だ、けれどそれは正しくない。
    彼女は誰かと一緒に飛ぶことは上手にできるのだ。

    (ミズが上手に飛べないのは、だいたいぼくのせいなんだけど)

    理由を知っていても伝える気はない。
    ただでさえ逃亡癖があるというのに、これ以上逃げ方を工夫されてはたまらない。
    焦って穴にはまってべそをかいて、クァリアさんに助けられているくらいが丁度いい。
    これからも上手に飛べない理由には気付かないままでいて欲しいものである。

    ミズの運動下手の原因は、飛ぶ時の重心がずれているのが理由だ。
    彼女は必ず片側を庇う様に飛ぶから、飛び方が安定しない。
    誰かの手を引いているときは問題ないから、
    一人で飛ばせなければいいだけの話なのだけれど。
    まさか運動会で空を駆けるレースに参加しようとするとは、驚きである。

    彼女は競い合うことを好む性格ではないからもっと静かな競技に参加するものと考えていたのだけれど『普段は心配をかけているから、家族にいいところを見せたい』という理由だけで飛行レースへの参加を申し込むとは思わなかった。
    今まさに心配なんだけどという気持ちを飲み込んでレースに送り出したものの大変に不安である。
    何も起こらなければ大丈夫なはずだ。
    きっとそれなりの順位に落ち着いて、がんばりましたよと照れた笑顔で帰ってきてくれるはずだ。
    ここは運動会の会場で、安全な場所だ。不安になることは何もないのだけれど。
    何も起こりませんようにと星に願った。
    願った先の星がミズなので本末転倒である。

    競技コースがよく見える場所に陣取って、ミズのレースの順番が来るのを待つことにした。
    こうして周りを見渡してみれば、色々な星の子が楽しそうに歩き回っているのが見える。
    仲良く手を繋いでいる星の子たちもいれば、闇のカニと戯れている星の子もいる。
    人気の屋台は繁盛しているようで、大勢の星の子たちがあれがいい、こっちも美味しそうだと品物を吟味していた。
    甘いものが好きな家族とその友人たちのためにも、ミズのレースが終わったら人数分を確保しておこうと心に決める。

    そんなことをつらつらと考えていた時だった。
    ミズが待機場所から移動するのを感じたのでそちらに目を向ける。
    色とりどりのケープの中に混ざって、薄白いケープが揺れる。
    空を飛ぶのが大好きですと言わんばかりの元気な星の子たちの間に、
    少し困った顔をしたミズが立っているのが見えた。
    家族である自分から見てもだいぶ場違いな感じがあって、
    連れ戻した方がいいのではという気持ちがじわりと湧いて出てくる。
    湧いて出てきた、けれど。
    そんな気持ちもすぐに霧散した。

    隣に立っている星の子に話しかけられた後、ミズの困り顔がやわっとした笑顔に変わる。
    両手を握りしめてがんばります!というかのようにケープの尻尾を揺らしているところを見ると、緊張を解そうと声をかけてくれたのかもしれない。
    話しかけてくれた相手は、快活に笑う優しそうな星の子だった。
    ミズが見上げているところをみると、背の高い星の子なのだろう。
    自分たちよりも大きい星の子はあまり見ないから今回の運動会はちょっと新鮮である。
    あとでお礼に行かないといけないなと、そのやり取りを見守りながらそう思った。

    そういえば、もう一人の家族はどうしたのだろうか。
    自他ともに認める我が家の魔法使いなら、言葉一つで緊張しない魔法をかけてしまいそうなものだけれど。
    見知った小さな星の子に手を引かれながら出かけて行ったのはだいぶ前のことだ。
    この感じだとミズのレースの開始時間には戻ってこないだろうなとなんとなく思う。
    自分とミズとは違い、彼は自分たちの居場所を知る術を持たない。
    空のレースの競技場にミズがいると知ったら、きっと驚くだろう。
    驚いた後に慌てたようにするのだろうか、ミズさんなら大丈夫ですと安心した顔で笑うのだろうか。
    その反応を見るのも楽しみで、見たものを録画する魔法をそっと起動した。
    ミズとしても家族には見て欲しいだろうから、しっかりと残しておこうと心に決めて前を見る。

    ぱぁんと、音がした。

    空の中に色を敷くように、優しい色の虹の橋が架かる。
    虹の橋だけでは終わらない。
    青空に負けないくらい鮮明に、虹色に染まる花火が何度も咲いては散っていく。
    心を奮わせるような、誰かの背を押すようなそんな優しい魔法だった。

    クァリアさんの魔法だと、すぐにわかった。

    空色と白色の旗がいくつもはためいて、綿毛のような何かが楽し気に振られていた。
    その場に居る全員を元気づける様な暖かな応援が聞こえる。
    募集していた応援団の応援だろうかと考えて、気付く。
    あの優しい魔法使いが、誰かを元気づけるためのイベントを逃すはずがない。
    あの応援はきっとこの運動会に参加していた星の子すべてに届いただろう。
    それはもちろん、これから競技に参加しようとしていたミズにも当てはまるわけで。

    「あー……」

    春の陽気が、冬の色に染まっているのを見て頭を抱える。
    今すぐに止めに行ったほうがいいか、否か。
    絶対に、なにかやらかす。

    先ほど話していた星の子に対して、ミズが一礼している姿が見える。
    一礼された相手の戸惑った様子が伝わってきて申し訳ない気持ちになる。
    それはそうだろう、さっきまでのふわふわした空気が綺麗さっぱりなくなっているのだから。
    別な星の子と言っても信じられてしまいそうだけれど、残念ながらそこに立っているのは我が家のミズである。
    隣にいた星の子が戸惑った様子を見せたのは一瞬だけで、
    心底楽しそうに準備運動を始めているところを見ると心の強いひとなのかもしれない。

    ミズの困ったように笑っていた姿はどこにもなくて、
    すっと細められた瞳の先にはきっとゴールしか見えていない。
    いつだって、自分達の進む先を照らすのはあの魔法使いなのだけれど。

    「タイミング、悪かったなぁ…」

    ミズに関することならば、外さないと言うべきなのか否か。
    『心配されないために、いいところを見せたかった』レースは、負けられないものに変わってしまったのだろう。
    もう止めるにも間に合わないだろう自分にできることは、最後までレースを見守ることだけだ。

    ミズは運動が下手で、その理由は片側を庇って飛ぶからだ。
    それなら、片側を庇う余裕もないくらい全力で飛べばどうなるか。
    答えは言わなくてもわかる。

    よーい、どん!の合図と一緒に音もなく羽ばたく姿は普段のふわふわとしたものではなかった。
    虹色に寄り添うように白色の軌跡が伸びていく。

    我が家の魔法使いの魔法は、本日も効果絶大である。
    勢いのあまりゴールを超えてはるか遠くに見えなくなっていくミズの姿は、録画魔法の中にきれいに残されたのだった。
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