その日、空はやけに鮮やかな青色をしていた先程授業をしていた教室に自身のペンケースを取りに行った帰り、廊下を歩いていた霊幻は階段の隅でうずくまっている人影を見つけた。
「お前……一組の影山だよな。こんなところで何やってるんだ?」
小柄な体格、そして男子中学生にしては白い肌と地味な髪型。顔は見えないがおそらく二年一組の影山茂夫で間違いないだろう。
彼について、週に二回ほど授業を受け持っている霊幻が知っていることはあまり多くない。自分が今年赴任して来たばかりというのもあるが、とにかく大人しい生徒なのだ。
授業中に発言することはほとんどなく、真面目にノートを取っているか、たまに窓の外を眺めているかのどちらか。
そう言えば授業中に寝ているところを見たことがないような気がするが、とにかくどこにでもいるような、大人しくて真面目な普通の中学生そのもの。
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