今宵こそはと、サンタクロースなんて存在するはずがない。
そんなことを口にしたら良識ある大人は怒るのか、なんてことが気になって、気がついた時にはついと口から漏れていた。最も、数分前まで駅前に置かれている目が痛くなるほどの電灯装飾に彩られたツリーに目を奪われていた自分が口にするには説得力が欠けるのかもしれないけれど。それでもあんなものが子供騙しのまやかしだということを自分はうんと小さい時から、おそらくこの世の誰よりも良く知っている。
「欲しいものが分かるテレパシー。重い荷物を持って空を飛べる念動力。瞬間移動ができるテレポート。その全部の能力を持ってたって、それでも世界中の子供に一夜でプレゼントを届けるなんて出来やしないと思いませんか」
1759