変わる記憶 夏は、死の気配がするから嫌いだった。
フィンは道端に転がる蝉を見る。それはもう力尽きたのかそれともこれから尽きるのか分からないけれど、まるで天を睨むように仰向けになっている。
ジリジリと焦げ付くような日差しを避けるように、フィンはローブを被った。足元が何だかユラユラと歪んで見える。
両親が死んだのも、とても暑い日だった。湿気でジメジメと蒸し暑く、生き物の全てがその生気を吸い取られるような日。あれが両親から命を奪って行った。
当時の状況は、今もよく思い出せない。小さいフィンには両親が死んだことを理解できなかったし、兄はそんな弟に現実を見せないよう庇ってくれた。やけに真っ青な空の下で兄と手を繋ぎ、徐々に土に隠されていく棺をぼんやり見つめていたことだけ覚えている。
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