ロマンチック 誰にも言えやしない、こんな醜い気持ちなんて。
涼しさの塊みたいな電車の中で、僕は端の席に座っていた。端を好むのは日本人特有らしい、海外ではどっかりと真ん中に座ることが多い……何かの番組でそんな内容のものを見たことがある。別に、窓の外なら向かい側に見える。わざわざ真ん中に座る理由はなかった。
目の前に、しゃんと背筋を伸ばした女性が立っていた。椅子の横にある壁に背をつけて、進行方向とは反対側を向いて。山吹色のワンピースが鮮やかで、凛とした表情によく似合っていると思った。
いけない、あまりじろじろ見ては失礼だ。ドアの上の表示を見たかっただけなんです、行き先を確認したかったんです、と求められてもいないのに理由をつけて、ボクはその人から視線を逸らした。
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